殿方逢瀬(短編集)

九条 いち

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店員さん~?~

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「大丈夫です。責任取りますよ、一生」

 拓己さんは私を横から抱きしめる。彼の体温が伝わってきて温かい。ボディソープの香りがふわっと香る彼がさっきの表情をしていたとは思えなかった。

 彼がバッと体を離し、私の両肩に手を置く。

「ってことで、僕の彼女になってくれますよね。離れられないんだし、いっそ結婚します?」

「結婚!? 変な冗談はやめてください」

 拓己さんはキョトンとした小動物のような顔をする。なんでダメなのかわからないといった顔で見つめられて、思わず目を逸らす。彼はおおげさに溜息を吐く。

「はぁ~あ。わかりました。結婚はもう少し待ちますよ」

「……ありがとうございます」

……ん? ありがとうございます?

今の私の返答はおかしいよね。
待ってもらうって、もう結婚する前提みたいに――。



「それで、その男とどこまでしたんですか」

「途中までしました」

「具体的に」

「……指を、その、私の中にいれて、動かすといいますか……」

 彼は目を閉じて、また大きなため息をつく。目をゆっくり開くと、私の肩をそっと押し、ソファの背もたれにもたれかけさせる。

「……わかってはいたんですけどね。すいません。今日はちょっと優しくできないかもしれないです」

 彼が私に馬乗りになり、キスをする。
下唇を何度か食まれて持っていかれる。開いたくちびるに熱い舌が入ってきて私の口内を余すところなく舐めとる。

「上書きしないと」

「え?」

「心配しないで、気持ちよくさせるから、ね」
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