殿方逢瀬(短編集)

九条 いち

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店員さん~?~

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 彼が噛みつくようにキスをしてきた。そのまま後ろに倒れ込み、机に仰向けになる。彼は私の顔の横に腕を置き、口内を貪る。

「んっ……店員さ……」

 荒いキスの合間に彼が息を切らしながら話す。

「拓己《たくみ》です。拓己って呼んで……」

「たくみ、さ、ダメです」

「ん……はぁ……どうして? 嫌?」

 縋る子犬のような目で見つめられると断れなくなる。

「ずるい……」

「それはいいってことですよね。ありがとうございます」

「んっ……ああ!」

 拓己さんはどうやったのか、中のディルドから電動音がして、ピストン運動をしだした。

「ああんっ、これ、どうやって」

「あとで教えます。……ねえ、もっとキスしたい」

 彼がディルドを中に押し込みながら舌をねじ込んでくる。彼の唾液と私の唾液とが絡み合い、口内を満たしていく。彼の舌が私の歯の羅列に沿って動く。こそばゆいようなしびれに、何もできず、受け入れることしかできない。

「はぁ……名前なんて言うんですか?」

「……悠衣……」

「悠衣、綺麗な名前だね。呼びやすいし……んっ」

「んっ……ふぁ……」

「ねえ、悠衣、挿れていい?」

 彼は私の手を取って自分のモノに触れさせる。私はなけなしの理性をどうにか保とうとする。

「ダメです。私、好きな人がいます……それに、いろんな人としてる人とは……」

 彼は眉間に皺を寄せて険しい顔になる。

「いろんな人って、してないですよ」

「でも、私にもすぐに」

「それは……すいません。でも本当に違います。なんなら今日来る客全員に聞いてください。誰ともしていませんから」

 彼は私の目を見て真っ直ぐに話す。嘘をついてはいなさそうだけど……。

「だったらどうして」

「あなたの反応がかわいくて……」

「……」

「……あなたのその澄ました顔が赤くなって、息を切らしながら私に縋りついてくるのがたまらないんです。」

 自分の手元を見ると彼のニットをぐしゃぐしゃになるくらい掴んでいた。彼は目を細めて私の顎を持ち上げる。舐めるように顔を眺められる。
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