61 / 86
瀬崎さん~口下手な彼~
23
しおりを挟む瀬崎さんをこんな風に思いつめさせてしまったのは自分のせいだ。
自分が不器用なせいで彼に余計な心配をかけてしまった。
己の不甲斐なさと彼への罪悪感で胸が締め付けられる。
――ゴトッ――
何かが落ちる音が聞こえた。
音の根源はベッドから何かが落ちた後だった。
私は急いで音のなった方向に急ぐ。落ちたものが何かを彼に見られないように。
「ちょっと、拾いますね。お茶飲んでいてください」
「拾うわ」
ベッドとテーブルの間に座っている瀬崎さんの方が距離は近かったから彼の提案は当然のことだった。
「いいです!」
私は彼のいる方の反対側に落ちたであろうモノを拾い、掛布団の中の中央付近に入れる。絶対に落ちないように。
目的を達成して瀬崎さんの方を見ると麦茶を……
飲んでいなかった。
ばっちりこちらを見ていた。
「もーお茶飲んでないじゃないですかー」
「悠衣、ベッドの中に何いれた」
寝具のちょうど死角になっていたようで何を入れたかは見えなかったようだ。
言い訳を述べようと頭をフル回転させる。
「電気あんかですよ。最近寒くなってきたし」
「ほうか。電気あんか俺も欲しいと思ってたんでな。参考のために見せてくれ」
「うっ……」
瀬崎さんは多分電気あんかはいらない。むしろ寝ている時は熱いぐらい発熱する人だ。
でもそう言われたら見せない方がおかしくなる。
でも諦めの悪い私は何とか逃れようとする。
「またまたー。瀬崎さん暑がりじゃないですか」
私は口角を無理やり挙げて笑って見せる。
「悠衣」
瀬崎さんは眉間に皺を寄せ、厳しい顔で私の目を真っ直ぐに見ていた。
嘘は許さない。返答によっては何をするのも厭わない。
そう言われているような気がして、何も言えなくなった。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる