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瀬崎さん~口下手な彼~
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しおりを挟む「いや、そうやない。」
「そうですか……」
怒っている相手に怒りを否定されたらこちらからはもう何もできない。
私はテーブル越しに瀬崎さんの前に正座し、うつむいていた。
「なぁ悠衣。最近忙しいんか」
「はい……」
「ほんまにそれだけか?」
瀬崎さんは真っ直ぐに私を見る。
「どういうことですか?」
「最近、俺と会うの避けとるやろ」
「そんなことは……」
彼の目は真っ直ぐで、思わず目を逸らしてしまいたくなる。
避けている訳ではなかった。
ただ、他にやることがあって、それが終わってから会おうと思っていた。
それを言うべきかはわかってる、言わない方がいい。
黙っている私に瀬崎さんはしびれを切らしているようだった。
彼は静かな部屋中に響く、深いため息を吐いた。
「俺と別れたいんか?」
彼の突然の言葉に反応が一瞬遅れる。
「えっ、そんなわけないです」
「遠慮せんでええ」
彼は立ち上がろうとする。
私は引き留めるように声をあげる。
「遠慮してないです! 別れ、たく、ないです……」
自分の声の音量に驚いて尻すぼみしてしまった。
瀬崎さんは私の声の大きさに驚いたようで動きが止まる。
私は瀬崎さんの顔が見れなくて俯いたまま何もできずにいた。
「瀬崎さんは……別れたいんでしょうか」
「いや、そんなことは」
「なら、別れたくないです」
「そしたら、なんで避けてるんや。たまに飲みに行ってもはよ帰りたがるし、
嫌なことがあるなら言うてくれ。俺は察しがいい方やないからわからんのや」
瀬崎さんは顔をゆがめて早口に言う。
いつもゆっくり、はっきりと的確な言葉を話す彼の焦燥に駆られている様は私をひどく困惑させた。
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