殿方逢瀬(短編集)

九条 いち

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篠宮さん~飄々とした年上男性~

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「…篠宮さんの迷惑かなと思って。」

観念して正直に話すことにした。

「どうして?」

「ご飯も気を遣わせてしまっていますし、私は地味みたいですし…。
篠宮さんにはもっと華やかな方がお似合いなのに…。」

「悠衣ちゃんは地味じゃないよ。ご飯も俺が行きたくて誘ってるのに。
なんでそう思ったの?もしかして、お店の女の子に言われた?」

「…。」

「ごめんね。つらい思いさせちゃったね。」

篠宮さんがうつむく私の手をやさしく握る。
かたくて骨ばった大きな手。

「篠宮さんの迷惑なんだと思います。だから、少し会わない期間を」
「悠衣ちゃん」

篠宮さんの声が低くなる。怒っているみたいだった。

「ねえ、悠衣ちゃんはどうして俺の言葉を信じれないの。ほかの人が行ったことを信じるの?」

「そんな、だって篠宮さん、いつも考えてることがわからないし、本心かどうかも、」

篠宮さんが握っていた私の手を引っ張る。
篠宮さんのほうに引き寄せられ、気づいた時にはお互いの唇が触れていた。

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