殿方逢瀬(短編集)

九条 いち

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篠宮さん~飄々とした年上男性~

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とりあえずあの場から離れたい一心で歩いていると公園に着いた。
誰もいないみたい。
公園のベンチに腰を下ろす。
足首に痛みが走る。
ヒールを脱ぐと足首がヒールと擦れて真っ赤になっていた。

はぁ。今日はほんとについてない。

スマホを見ると篠宮さんからの電話が5件来ていた。

忘れてた。
とりあえず謝ろう。
そして、しばらく会えないことにしよう。それで自然消滅。
それが一番角が立たない。

考えていると篠宮さんから着信が来た。
深呼吸して応答ボタンを押す。

『もしもし。』

『悠衣ちゃん!よかったあ。今どこ?変な人に絡まれてない?』

こんな時まで篠宮さんは私の心配をしてくれる。本当に優しい人。

『はい、大丈夫です。急用ができちゃって。何も言わずに出てきちゃってすいません。』

『そうなの?それなら、まぁ残念だけど何もなくてよかった。』

『はい、すいません。』

『それじゃあ、また誘うね。』

『あの!』

『ん?』

『しばらく忙しくなりそうなので、会うことはできないと思います。』

『そっか、残念だね。どれくらい忙しいのが続くの?』

篠宮さんと会えなくなるんだと思うと涙が出てきた。
バレないように、早く電話を切らないと。

『…わかりません。でもしばらくは会えないので。すいません。失礼します。』

『ちょっと待って!』

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