殿方逢瀬(短編集)

九条 いち

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篠宮さん~飄々とした年上男性~

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悠衣ゆいちゃん!」

橘さんとビルから出ていくと篠宮さんが手を振りながら歩いてきていたが、
すぐに私の横にいた橘さんにも気づいたみたいで少し離れた場所で足を止めて待ってくれている。

私は橘さんと別れた後、篠宮さんの元へ小走りで向かった。

篠宮さんは地毛だが少し明るい黒髪を自然に後ろに流していて、
ラフに髪のセットをしている。
たまに少し落ちてくる前髪の色気がすごい。
鍛えられた身体と少しだるそげなふるまいがまたミスマッチで、色気がすごい。
何考えてるかわからない、ちょっと不思議な人だ。

「ごめんね、待たせちゃって。」

「本当ですよー。変な人に絡まれちゃって。それでさっきの男性が助けてくれたんです。」

「そうだったの?ほんとごめんね。今度から俺のオフィスにおいで。そこで待ってくれてたらいいから。」

「そんなオフィスに部外者が行くのも社員さんに悪いですよ。」

「悠衣ちゃんのオフィスに俺が迎えに行くのはダメなんでしょ?」

「はい、ダメです。」

「わー、そんなに冷たく言わないでよー。おじさん泣いちゃうよ?」

「泣かないでしょー。」

「ほんとに泣いちゃうかもよ?」
突然低くなった声。

「え?」

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