37 / 49
瀬崎
立ち往生
しおりを挟むーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
――「じゃあな」――
――「じゃあな」――
――「じゃあな」――
――「じゃあな」――
あれから何度も一緒にご飯を食べて送ってもらっても、いつも最後は同じ。
本当に飲み仲間なのかと疑問に思い始めた。
ちょっといい感じだと思っていたのは私だけなのかもしれない。
最初はあんなに喜んでいた関係でも、欲が出てきてしまう。
もっと先に進みたい。
「じゃあな」
いつもと同じ台詞。
これがずっと続くのかと思うと居た堪れない気持ちになる。
私は帰ろうとする瀬崎さんの腕を掴み、決心する。
「瀬崎さん」
彼は振り向いて私の顔を見る。
「なんや?」
「瀬崎さんと私は飲み仲間ですか?」
私の真剣な顔に彼の眉間の皺がさらに深くなる。
「……」
彼の返答が待ちきれなくて、精一杯の背伸びしながら彼の顔を両手で包み、こちらに引き寄せる。
突然のことに強張る彼の身体を無視して、唇と唇を触れさせ、ゆっくりと離す。
「……嫌、ですか?」
「本気か?」
「はい」
「……」
「瀬崎さん……?」
彼は目を閉じると、深く息を吐く。
その音は、ため息のようにも聞こえて、顔が青ざめていく。
やっぱり瀬崎さんは私のこと、飲み仲間としか思っていなくて、めんどくさい女だと思われているのかな。
「酔っていたから」っていう理由にしても、キスしちゃったらもう元には戻れないよね……。
どうしてジャブを打たなかったんだ。
もっと酔った時に、それとなく聞き出す方法はいくらでもあったのに。
自分の馬鹿さ加減に呆れてしまう。
無言になっていた瀬崎さんはゆっくり私の顔に両手を添えてキスをしてきた。
くちびるが離れて、おそるおそる目を開けると、彼と目が合う。
彼の切れ長の目には私が映っていて、その中の私はとても潤んだ瞳をしていた。
再び彼の顔が近づいてきてゆっくり、優しく、ついばむようにくちびるを奪われる。
舌が歯列をよけて口内に入ってくる。
彼の舌は身体と同じで大きく、弾力があった。
私の口内はとても狭いというように隅から隅まで蹂躙されて、顎の奥がじんと痺れる。
「んっ……」
彼の舌に上の歯の裏筋を舐めるように刺激され、体がゾクゾクする。
包まれた彼の手は熱く、私の体も熱くなっていく。
私が何もできずに、ただ口内を犯されるままになっていると、彼は私の舌を器用に取り出し、吸いあげる。
「んっ……あぅっ……」
薄く目を開けると、瀬崎さんは眉間にしわを寄せ、いつもより険しい顔をしていた。
険しいというよりは、むしろ苦しそうな――
「……っ、瀬崎、さ、ん」
「んっ……凪……」
彼が大きな手で、私の黒のタイトスカートの上からお尻をさする。
いつも消防署で凛々しく勤務している彼が、私の体を撫で回していると思うと、興奮してしまう自分がいた。
彼の唇が私の耳元で動く。
「……凪」
低く少しかすれた声が私の耳から体中に響き、頭が溶けそうになる。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
御曹司はまだ恋を知らない
椿蛍
恋愛
家政婦紹介所に登録している桑江夏乃子(くわえかのこ)は高辻財閥の高辻家に派遣されることになった。
派遣された当日、高辻グループの御曹司であり、跡取り息子の高辻恭士(たかつじきょうじ)が婚約者らしき女性とキスをしている現場を目撃するが、その場で別れてしまう。
恭士はその冷たい態度と毒のある性格で婚約者が決まっても別れてしまうらしい。
夏乃子には恭士がそんな冷たい人間には思えず、接しているうちに二人は親しくなるが、心配した高辻の両親は恭士に新しい婚約者を探す。
そして、恭士は告げられる。
『愛がなくても高辻に相応しい人間と結婚しろ』と。
※R-18には『R-18』マークをつけます。
※とばして読むことも可能です。
★私の婚約者には好きな人がいる スピンオフ作品。兄の恭士編です。
十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
和泉杏咲
恋愛
私は、もうすぐ結婚をする。
職場で知り合った上司とのスピード婚。
ワケアリなので結婚式はナシ。
けれど、指輪だけは買おうと2人で決めた。
物が手に入りさえすれば、どこでもよかったのに。
どうして私達は、あの店に入ってしまったのだろう。
その店の名前は「Bella stella(ベラ ステラ)」
春の空色の壁の小さなお店にいたのは、私がずっと忘れられない人だった。
「君が、そんな結婚をするなんて、俺がこのまま許せると思う?」
お願い。
今、そんなことを言わないで。
決心が鈍ってしまうから。
私の人生は、あの人に捧げると決めてしまったのだから。
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
東雲美空(28) 会社員 × 如月理玖(28) 有名ジュエリー作家
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
新米社長の蕩けるような愛~もう貴方しか見えない~
一ノ瀬 彩音
恋愛
地方都市にある小さな印刷会社。
そこで働く入社三年目の谷垣咲良はある日、社長に呼び出される。
そこには、まだ二十代前半の若々しい社長の姿があって……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!
めーぷる
恋愛
見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。
秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。
呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――
地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。
ちょっとだけ三角関係もあるかも?
・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。
・毎日11時に投稿予定です。
・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。
・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。
一夜限りのお相手は
栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月
二度目の恋もあなたと
雪本 風香
恋愛
兄の結婚式で再会した初恋の安村。
美咲の幼い頃の淡い恋は憧れに、そしていい思い出に変わっていたはずなのに。
「またあなたを好きになりました」
8歳の年の差ラブストーリーです。
不定期更新です。
R18は★つき。
他サイトにも掲載しています。
(3/14追記)
※初恋から二度目の恋までの期間は15年です。誤って10年と記載しておりました。混乱させてしまい、大変申し訳ございません。随時修正させていただきます。また、ご指摘いただきありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる