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篠宮
ひどい顔
しおりを挟む篠宮さんがそんなことを思っていたなんて想像もしていなかった。
ただ、彼の気持ちを知って、くちびるを奪われて……もっとしてほしいと思った。
彼に会えなくなると思うと胸が締め付けられ、一緒にいたいって言われて心の底から嬉しい。
私は篠宮さんがとっくの前から好きになってたんだ。
「ごめんね。キスしちゃったから前みたいには戻れなくなっちゃったね」
「……」
うまく言葉が見つからない。
「しばらく、会わないでいようか。ごめんね」
篠宮さんはつらそうなのに、無理やり笑っているようだった。
私はいつの間にか、篠宮さんに引き込まれるように近づき、キスをしていた。
「そんな顔、しないでください」
「ごめんね、そんなひどい顔してた?」
彼はまた、つらそうに歪んだ顔で無理やり笑う。
「すごくつらそうな顔してます。私も同じ気持ちです。篠宮さんと会えなくなると思うと……ここで少し泣いていました。だから、そんな顔しないでください」
「……こんなおじさんに気を遣わなくていいんだよ」
「遣ってないです。私も篠宮さんとキスがしたいです」
彼はほっとしたのか、表情が段々綻んでいく。
「よかった。うれしいよ」
彼が再び近づいてきて、私のくちびるに優しいキスを落とす。
何度もついばみ、舌を絡め取られる。
篠宮さんに触れているところから、とろけるような、あたたかくて甘い気持ちになっていく。
すべて篠宮さんに預けてしまいたくなる。
彼がくちびるが離し、目尻に溜まっている涙を指で優しく拭ってくれる。
「行こっか、凪ちゃん」
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