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進章: 崩壊造鉄都市 アマノマ
肆話:神器の使い手
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1
神器というのはこの国の者では誰でも知ってる。
五百年前に突如人間が手にした、この世の理を無視した武器。
十二あることから、それは十二神器と一般的に呼ばれる。
そんな神器の近くにある無機物は神器の恩恵を授かる。
授かった武器は眷属器と呼ぶ。
刀が授かれば眷属刀
石っころが授かれば眷属石
糸が授かれば眷属糸
眷属器は神器に比べればかなり劣るが強力な武器として、この五百年間で産み出されつづける。
そして私も眷属器を持っている。
真蒼様の神器から与えられた力なのだから真蒼様の為だけに使おうと決めている。
真蒼様も神器をお持ちである。
真蒼様はご自分の為だけに使われる。
その神器の名は
万物貫通
まさに神槍
絶殺鑓
槍といっても、あの木の棒の先端に着いている穂だけが神器なのだが。
あの柄(持つところ)の部分木は私が山で見つけた強度のある木である。
その木に穂を括りつけただけなので、すぐに潰れてしまう。
あんな武器で真蒼様は果たしてご無事で済むのか。そんな心配は真蒼様には不要と知りながら、私は真蒼様の身を案じてしまうのだった。
2
散らばる侍の肉片。
石造りの白い道を赤くしていく。
「神器・・・!行方の解らないみっつの内のひとつか」
良銅は驚いた顔から笑を浮かべる。
「うんいいね。ここで君を殺して将軍様にその神器を献上すれば、うん。僕は誰からも認められる立派な大名になれそうだよ」
「殺す?ふふん♪確実に不可能だ。将軍の犬風情は特にな」
真蒼様がお眼を輝かせられる。
良銅の眼は歪むばかり。
「まぁそう落ち込むな。この世にこの俺様に勝てる者など居はせぬよ。」
「ほんと不愉快だよ」
真蒼様はぼろ槍を構えられる。
良銅の後ろにいる侍女達はどうすればいいの慌てるばかり。
「真の青い蒼の下に生まれた。故に真蒼!」
「・・・僕がキミみたいな奴に名乗ると思うなよ・・・うん。さっさと死ね。キミの声は耳障りだよ」
良銅は真蒼様のお声を侮辱するとともに、右腕を前につきだす。
すると地面から無数の刀身が行き良いよく突き出してくる。
「!」
「下がっておれ。俺様の邪魔をすれば許さぬぞ」
私は身体の力を抜いて大きく飛翔する。
近くの木の幹に着地する。
私と違い真蒼様は逃げるなど愚かな真似はせず、槍を構えたまま、良銅の元へ走る。
「馬鹿か?君は!」
「馬鹿は貴様の方だ、このうつけめ。自分で自分の逃げる場所を無くしてどうする」
幾本もの刃を真蒼様は道を作るように槍で砕いていく。
「くっ!」
今度は良銅の前の空中から太い大太刀の刀身が真蒼様めがけて飛んでくる。
真蒼様は股を開き、低い姿勢で刃を回避する。
大太刀が死角となってしまい、馬に乗った良銅からは真蒼様のお姿は見えない。
真蒼様は馬の左脚に大きな孔を開けた。
馬はなんと言っているか聞き取れない掠れた悲鳴をあげながら、倒れ込み良銅を地面に叩きつける。
真蒼様は落馬した良銅に追い打ちをかける様なことはなく距離を取る。
「良銅様っ!」
後にいた十名程の侍女が叫ぶ。
そんなのをやはり真蒼様はご無視なされて、
「なんだ貴様。俺様と同じ神器を使う者だと聞いて、少しばかり楽しみで来てみればとんだ肩透かしを食ろうたわ」
良銅は真蒼様を先程より歪んだ眼で睨みつけるが、そんなもの、やはり真蒼様はご無視なされる。
「貴様を先に倒しておいてよかったわ。あのまま貴様を後にしておったら、せっかくの黒い剣士との戦いで得た幸福感を台無しにするところであった。帰るぞ。」
そう言って真蒼様は良銅に背を向けられる。
私には真蒼様のお顔が見られた。真蒼様のお顔は本当にあの男に興味を失った様である。
「待てよ・・・!何処に行くんだ?」
真蒼様はご無視。
「馬鹿に・・・しやがって!」
「真蒼様っ!」
良銅は右手を大きく天に掲げる。
空には何かが見える。光っている。降ってきている。
無数の一万近い刀そのものだ!
「自分の身を守ることだけ考えよ。愚か者め」
真蒼様は天に槍を向けられ、槍の穂が見えない程早く、連続して上に槍を突き上げられる。
私はどうすれば!
あの落下する刀からどうすればーーーその途端右太ももに痛みが走る。
太ももに刀身の欠片が刺さっていた。
真蒼様の弾かれた刀が折れ、その刀身の欠片が飛び跳ねたのだろう。
私はバランスを崩してしまい木から落ちる。
「あっ・・・」
後に向きに落ちたのがいけなかった。この木は高く、柵をも超えている。
私は街に続く、急ではない崖に落ちてしまう。
「ぐっ・・・」歯を食いしばる
半開きにした眼から見えるのは、回る世界。
私は今崖を転げ落ちでいるのだ。
急な崖でない事が幸いした。急な崖だったら行き良いよく地面に打ち付けられ、身体が粉々になっていただろう。
全身をつよく打つ。この行き良いを止めなければ!
一瞬緑のその長いのが見えた。それを掴む。木の蔓だ。
行き良いは治まったが重力には逆らえず、私は下のタタラ場に向けてただ、落ちていった。
役に立てないでごめんなさい。
真蒼様。
このまま死ぬのだとしたら、せめてあの主の顔を思い浮かべながら死のうと思った。
神器というのはこの国の者では誰でも知ってる。
五百年前に突如人間が手にした、この世の理を無視した武器。
十二あることから、それは十二神器と一般的に呼ばれる。
そんな神器の近くにある無機物は神器の恩恵を授かる。
授かった武器は眷属器と呼ぶ。
刀が授かれば眷属刀
石っころが授かれば眷属石
糸が授かれば眷属糸
眷属器は神器に比べればかなり劣るが強力な武器として、この五百年間で産み出されつづける。
そして私も眷属器を持っている。
真蒼様の神器から与えられた力なのだから真蒼様の為だけに使おうと決めている。
真蒼様も神器をお持ちである。
真蒼様はご自分の為だけに使われる。
その神器の名は
万物貫通
まさに神槍
絶殺鑓
槍といっても、あの木の棒の先端に着いている穂だけが神器なのだが。
あの柄(持つところ)の部分木は私が山で見つけた強度のある木である。
その木に穂を括りつけただけなので、すぐに潰れてしまう。
あんな武器で真蒼様は果たしてご無事で済むのか。そんな心配は真蒼様には不要と知りながら、私は真蒼様の身を案じてしまうのだった。
2
散らばる侍の肉片。
石造りの白い道を赤くしていく。
「神器・・・!行方の解らないみっつの内のひとつか」
良銅は驚いた顔から笑を浮かべる。
「うんいいね。ここで君を殺して将軍様にその神器を献上すれば、うん。僕は誰からも認められる立派な大名になれそうだよ」
「殺す?ふふん♪確実に不可能だ。将軍の犬風情は特にな」
真蒼様がお眼を輝かせられる。
良銅の眼は歪むばかり。
「まぁそう落ち込むな。この世にこの俺様に勝てる者など居はせぬよ。」
「ほんと不愉快だよ」
真蒼様はぼろ槍を構えられる。
良銅の後ろにいる侍女達はどうすればいいの慌てるばかり。
「真の青い蒼の下に生まれた。故に真蒼!」
「・・・僕がキミみたいな奴に名乗ると思うなよ・・・うん。さっさと死ね。キミの声は耳障りだよ」
良銅は真蒼様のお声を侮辱するとともに、右腕を前につきだす。
すると地面から無数の刀身が行き良いよく突き出してくる。
「!」
「下がっておれ。俺様の邪魔をすれば許さぬぞ」
私は身体の力を抜いて大きく飛翔する。
近くの木の幹に着地する。
私と違い真蒼様は逃げるなど愚かな真似はせず、槍を構えたまま、良銅の元へ走る。
「馬鹿か?君は!」
「馬鹿は貴様の方だ、このうつけめ。自分で自分の逃げる場所を無くしてどうする」
幾本もの刃を真蒼様は道を作るように槍で砕いていく。
「くっ!」
今度は良銅の前の空中から太い大太刀の刀身が真蒼様めがけて飛んでくる。
真蒼様は股を開き、低い姿勢で刃を回避する。
大太刀が死角となってしまい、馬に乗った良銅からは真蒼様のお姿は見えない。
真蒼様は馬の左脚に大きな孔を開けた。
馬はなんと言っているか聞き取れない掠れた悲鳴をあげながら、倒れ込み良銅を地面に叩きつける。
真蒼様は落馬した良銅に追い打ちをかける様なことはなく距離を取る。
「良銅様っ!」
後にいた十名程の侍女が叫ぶ。
そんなのをやはり真蒼様はご無視なされて、
「なんだ貴様。俺様と同じ神器を使う者だと聞いて、少しばかり楽しみで来てみればとんだ肩透かしを食ろうたわ」
良銅は真蒼様を先程より歪んだ眼で睨みつけるが、そんなもの、やはり真蒼様はご無視なされる。
「貴様を先に倒しておいてよかったわ。あのまま貴様を後にしておったら、せっかくの黒い剣士との戦いで得た幸福感を台無しにするところであった。帰るぞ。」
そう言って真蒼様は良銅に背を向けられる。
私には真蒼様のお顔が見られた。真蒼様のお顔は本当にあの男に興味を失った様である。
「待てよ・・・!何処に行くんだ?」
真蒼様はご無視。
「馬鹿に・・・しやがって!」
「真蒼様っ!」
良銅は右手を大きく天に掲げる。
空には何かが見える。光っている。降ってきている。
無数の一万近い刀そのものだ!
「自分の身を守ることだけ考えよ。愚か者め」
真蒼様は天に槍を向けられ、槍の穂が見えない程早く、連続して上に槍を突き上げられる。
私はどうすれば!
あの落下する刀からどうすればーーーその途端右太ももに痛みが走る。
太ももに刀身の欠片が刺さっていた。
真蒼様の弾かれた刀が折れ、その刀身の欠片が飛び跳ねたのだろう。
私はバランスを崩してしまい木から落ちる。
「あっ・・・」
後に向きに落ちたのがいけなかった。この木は高く、柵をも超えている。
私は街に続く、急ではない崖に落ちてしまう。
「ぐっ・・・」歯を食いしばる
半開きにした眼から見えるのは、回る世界。
私は今崖を転げ落ちでいるのだ。
急な崖でない事が幸いした。急な崖だったら行き良いよく地面に打ち付けられ、身体が粉々になっていただろう。
全身をつよく打つ。この行き良いを止めなければ!
一瞬緑のその長いのが見えた。それを掴む。木の蔓だ。
行き良いは治まったが重力には逆らえず、私は下のタタラ場に向けてただ、落ちていった。
役に立てないでごめんなさい。
真蒼様。
このまま死ぬのだとしたら、せめてあの主の顔を思い浮かべながら死のうと思った。
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