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序章:鬼虐人尊国家 日の国
陸話:アスと呼ばれたい人間とアスと呼びたい鬼
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1
剣士同士の闘いはすぐに決着がつく。
余程の武力の差がなければ無傷で勝てることはない。
私が連れてこられた街のひとつに男の鬼同士で殺して合わせるという娯楽があった。
二鬼共に刀を渡し、最後に生き残っていた方が勝ちとする。
その街は山を切り開きできた街で、ずっと鉄を作っていた。そしてその街では14日のうち1日だけ休日が用意される。
その休日を使って人間の男共がよく来て、どちらが勝つか賭けていた。
私はその闘技場の掃除を任せられていた。
結局勝った鬼の方も出血で最終的に死んでしまうのだ。
3回以上出れた鬼を私は知らない。
男の鬼ばかりやらせていると、当たり前だか数が減っていくから、女の鬼同士で殺し合わせたりもしていた。
私はそこに立つこともなく、次の街に移動となった。
2
そしてこの闘いもすぐに決着がつく。
柳生と名乗った侍の剣はとても綺麗。
それに比べてアスラの方は力強いが乱暴だ。
「この刀は十二神器の力を分け与えられた立派な眷属刀だよ。低俗な侍の持つ刀と同じにするなよ!」
柳生がいっきに間合いを詰める。
「ふんっ!」
「■■‼」
アスラが大きく振りかぶった剣を受け流す柳生。
アスラの黒くて歪な剣は瓦を叩きつけ、すごい音がする。
「力だけの剣士など取るに足らんよ。こうやって力を受け流してやればいいのだからね」
柳生はアスラの剣を受け流すと共に刀剣を振り上げていた。
「さらばだ愚か者」
柳生は剣を振り降ろす。刀剣の姿なんて見える筈もなくアスラの頭全てを覆う兜を叩き切る。
小さい音がした。ピキっという小さな音。鬼の私でも聴き逃してしまうような音。
「なっ・・・」
柳生は目を見開き、自分の刀の刀身が綺麗に割れたのを認識する。
「わざと硬い頭を狙わ■た。・・・その程度の眷属刀なら避■るまでも■い」
「くっ・・・」
と焦って間合いをとる柳生
それを見逃すアスラではない。
「勝敗を急□過ぎた■な・・・」
アスラは柳生の頭を鉄の拳で叩きつけた。
とても鈍い音がして柳生の姿が見えなくなる。砂塵が屋根を舞う。古そうな屋根だったから砂埃が溜まっていたんだろう。
「柳生様っ!!!」
見守ってた侍達が急いで柳生の身を案じて走る。
そんなことを気にかけず。アスラは屋根から飛び降りる。なんであの高さを軽々と飛び降れるのか、私には解らない。
「■■■■ー■■■□~」
私の方に向けて歩いてくるアスラ。
その瞬間私の視界は動き、髪の付け根が痛くなる。
「来るな化け物が!来ればお前の欲しがっている鬼を殺すぞ!」
私は大きな手で髪を引っ張られる。この声は領主だ。
ピタリとアスラはその場で止まる。
「まずは顔をっ・・・・・・いや!剣を捨てろ!さもなければこの鬼の首を切るぞ!!」
領主は震える手で私の首に刀を刀身を突きつける。
鬼殺しの刀は通常の刀より尚切れ味があり、私の血が刀身を滴る。
「・・・・・・」黙り込むアスラだが、剣を前に突き出し。
手を離した。
それを見て領主の緊張が一瞬とけたのがもっとも近くに居た私には感じられた。
アスラの黒い剣が地面に着く前に
アスラは剣の柄頭(持つところの先端)を思いっきり蹴る。
剣は直線で風を切って
刀身が領主の頭を貫通する。
「あえ・・・ぇ・・・」
領主は後ろに倒れ込み、私は解放される。
なんて器用な奴なのだ。この獣は。
あんなこと思いつきもしないし、思いついてもできる筈がない。
恐い。あの人間がこれまで会ってきた人間のなかで最も恐い。
私を助けてくれたのにも関わらず。
アスラはその位置から、私のいる処刑台にまで跳んで来る。処刑台は大きく揺れ、私の傷口に響く。
「■う■丈□~」
侍は逃げもせず、ただこちらを睨むだけ。
だか、その目には明らかに恐怖が宿っている。
「もう逃げよ■これ以上は闘えない」
そう言ってアスラは私を背負い、今度は道を走って街の外へ逃げていった。
2
ここからは私はもうそこにいないので、私には知りえない場面。
先程の処刑台が見える建物の屋根。
「ふふん♪あのクロ面白いなぁ・・・獣の様な獰猛さに加えてあの様な器用な事ができようとはな」
男は嗤う。
「ですが、真蒼様には到底叶わぬでしょう」
後ろでひかえていた女が男の機嫌を取る。
「当たり前だ愚か者めが、この世界に俺様にかなう者などおる訳無かろうが」
「申し訳ありまけん」
男は気分を害した風もなく
「よい、許すぞ。ふふん♪あのクロを追うぞ。久々に俺様の目に叶った者が現れた」
3
とても早くアスラは走る。20分ぐらいでもう街の外壁が見えてきた。すごいな馬ぐらいの早さがあるのではないかと思ってしまう。
「ごめん。揺らすよ」とアスラが私に言う。
もう普通のアスラの声になっている。この世の雑音を濃縮したかのような声ではない。
大きく跳ね、外壁を駆け上る。
壁を何故こいつは走れるんだ。
「うっ・・・」
確かに私の傷にとても響く。
壁を超えて、飛び降りる時が一番響いた。
「ごめんな」
それでとアスラはスピードを緩めずそのまま走る。痛くて痛くてこの痛みを誤魔化したかった。
「おい・・・お前」
「どうかした?」
「名前をもう一度教えろ」
本当は知っているが、いきなり名前で呼ぶのは恥ずかしかったので、もう一度聞く。
「アスラ・クレイモア。みんな俺のことをアスって呼ぶ。・・・君の名前は?」
「私の名前は・・・真心」
「そっか!いい名前だね」
「その。なんだ・・・・・・」
私は
「逃げて悪かった。言いつけを破ってすまなかった」
「はは。俺の言いつけなんて聞かなくていいよ。そりゃ聞いてくれたら嬉しいけど。そんなに言いつけられる程、俺は偉くないからさ」
「悪かった・・・」
こいつは私を責めなかった。それに胸の奥が熱くなる。
結局感謝の言葉はこいつに伝えられなかった。
けど、いつかこいつに伝えたいと思う。
ありがとう。助けてくれて本当に嬉しかった。
いつかこいつに、この人間にそう伝えよう。
あとがき
(初めて闘いのシーンを書きました。解りにくい所が沢山あると思います。教えてくれたらめちゃめちゃ嬉しいです。)
剣士同士の闘いはすぐに決着がつく。
余程の武力の差がなければ無傷で勝てることはない。
私が連れてこられた街のひとつに男の鬼同士で殺して合わせるという娯楽があった。
二鬼共に刀を渡し、最後に生き残っていた方が勝ちとする。
その街は山を切り開きできた街で、ずっと鉄を作っていた。そしてその街では14日のうち1日だけ休日が用意される。
その休日を使って人間の男共がよく来て、どちらが勝つか賭けていた。
私はその闘技場の掃除を任せられていた。
結局勝った鬼の方も出血で最終的に死んでしまうのだ。
3回以上出れた鬼を私は知らない。
男の鬼ばかりやらせていると、当たり前だか数が減っていくから、女の鬼同士で殺し合わせたりもしていた。
私はそこに立つこともなく、次の街に移動となった。
2
そしてこの闘いもすぐに決着がつく。
柳生と名乗った侍の剣はとても綺麗。
それに比べてアスラの方は力強いが乱暴だ。
「この刀は十二神器の力を分け与えられた立派な眷属刀だよ。低俗な侍の持つ刀と同じにするなよ!」
柳生がいっきに間合いを詰める。
「ふんっ!」
「■■‼」
アスラが大きく振りかぶった剣を受け流す柳生。
アスラの黒くて歪な剣は瓦を叩きつけ、すごい音がする。
「力だけの剣士など取るに足らんよ。こうやって力を受け流してやればいいのだからね」
柳生はアスラの剣を受け流すと共に刀剣を振り上げていた。
「さらばだ愚か者」
柳生は剣を振り降ろす。刀剣の姿なんて見える筈もなくアスラの頭全てを覆う兜を叩き切る。
小さい音がした。ピキっという小さな音。鬼の私でも聴き逃してしまうような音。
「なっ・・・」
柳生は目を見開き、自分の刀の刀身が綺麗に割れたのを認識する。
「わざと硬い頭を狙わ■た。・・・その程度の眷属刀なら避■るまでも■い」
「くっ・・・」
と焦って間合いをとる柳生
それを見逃すアスラではない。
「勝敗を急□過ぎた■な・・・」
アスラは柳生の頭を鉄の拳で叩きつけた。
とても鈍い音がして柳生の姿が見えなくなる。砂塵が屋根を舞う。古そうな屋根だったから砂埃が溜まっていたんだろう。
「柳生様っ!!!」
見守ってた侍達が急いで柳生の身を案じて走る。
そんなことを気にかけず。アスラは屋根から飛び降りる。なんであの高さを軽々と飛び降れるのか、私には解らない。
「■■■■ー■■■□~」
私の方に向けて歩いてくるアスラ。
その瞬間私の視界は動き、髪の付け根が痛くなる。
「来るな化け物が!来ればお前の欲しがっている鬼を殺すぞ!」
私は大きな手で髪を引っ張られる。この声は領主だ。
ピタリとアスラはその場で止まる。
「まずは顔をっ・・・・・・いや!剣を捨てろ!さもなければこの鬼の首を切るぞ!!」
領主は震える手で私の首に刀を刀身を突きつける。
鬼殺しの刀は通常の刀より尚切れ味があり、私の血が刀身を滴る。
「・・・・・・」黙り込むアスラだが、剣を前に突き出し。
手を離した。
それを見て領主の緊張が一瞬とけたのがもっとも近くに居た私には感じられた。
アスラの黒い剣が地面に着く前に
アスラは剣の柄頭(持つところの先端)を思いっきり蹴る。
剣は直線で風を切って
刀身が領主の頭を貫通する。
「あえ・・・ぇ・・・」
領主は後ろに倒れ込み、私は解放される。
なんて器用な奴なのだ。この獣は。
あんなこと思いつきもしないし、思いついてもできる筈がない。
恐い。あの人間がこれまで会ってきた人間のなかで最も恐い。
私を助けてくれたのにも関わらず。
アスラはその位置から、私のいる処刑台にまで跳んで来る。処刑台は大きく揺れ、私の傷口に響く。
「■う■丈□~」
侍は逃げもせず、ただこちらを睨むだけ。
だか、その目には明らかに恐怖が宿っている。
「もう逃げよ■これ以上は闘えない」
そう言ってアスラは私を背負い、今度は道を走って街の外へ逃げていった。
2
ここからは私はもうそこにいないので、私には知りえない場面。
先程の処刑台が見える建物の屋根。
「ふふん♪あのクロ面白いなぁ・・・獣の様な獰猛さに加えてあの様な器用な事ができようとはな」
男は嗤う。
「ですが、真蒼様には到底叶わぬでしょう」
後ろでひかえていた女が男の機嫌を取る。
「当たり前だ愚か者めが、この世界に俺様にかなう者などおる訳無かろうが」
「申し訳ありまけん」
男は気分を害した風もなく
「よい、許すぞ。ふふん♪あのクロを追うぞ。久々に俺様の目に叶った者が現れた」
3
とても早くアスラは走る。20分ぐらいでもう街の外壁が見えてきた。すごいな馬ぐらいの早さがあるのではないかと思ってしまう。
「ごめん。揺らすよ」とアスラが私に言う。
もう普通のアスラの声になっている。この世の雑音を濃縮したかのような声ではない。
大きく跳ね、外壁を駆け上る。
壁を何故こいつは走れるんだ。
「うっ・・・」
確かに私の傷にとても響く。
壁を超えて、飛び降りる時が一番響いた。
「ごめんな」
それでとアスラはスピードを緩めずそのまま走る。痛くて痛くてこの痛みを誤魔化したかった。
「おい・・・お前」
「どうかした?」
「名前をもう一度教えろ」
本当は知っているが、いきなり名前で呼ぶのは恥ずかしかったので、もう一度聞く。
「アスラ・クレイモア。みんな俺のことをアスって呼ぶ。・・・君の名前は?」
「私の名前は・・・真心」
「そっか!いい名前だね」
「その。なんだ・・・・・・」
私は
「逃げて悪かった。言いつけを破ってすまなかった」
「はは。俺の言いつけなんて聞かなくていいよ。そりゃ聞いてくれたら嬉しいけど。そんなに言いつけられる程、俺は偉くないからさ」
「悪かった・・・」
こいつは私を責めなかった。それに胸の奥が熱くなる。
結局感謝の言葉はこいつに伝えられなかった。
けど、いつかこいつに伝えたいと思う。
ありがとう。助けてくれて本当に嬉しかった。
いつかこいつに、この人間にそう伝えよう。
あとがき
(初めて闘いのシーンを書きました。解りにくい所が沢山あると思います。教えてくれたらめちゃめちゃ嬉しいです。)
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