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第七章 旧校舎の花子さん
48話
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「そ、そんなわけじゃっ!」
「じゃあなぜだ?」
「うぅ──き、綺麗な顔をしてるなぁって思って……」
「…………」
男の子はピタリと動きを止めた。
私、何か変なこと言っちゃった?
「そう、か。僕は綺麗な顔をしているのか。自分じゃわからない」
男の子はそう言って立ち上がり、私に手をのばす。
恐る恐る手をのせれば引っ張られた。
勢いがすごかったから、おもわず男の子に突進するような感じになってしまう。
でもふらつかずに、しっかりと私を支えてくれた。
「この場所は人間が長居していい場所ではない。はやく外に出るぞ」
「それはダメっ!」
「……なぜだ」
「烈央くんと星守くんっ──友達とはぐれちゃったんだ! それに二日前から行方不明の友達もいるし、今日はクラスの子たちも居なくて……私は旧校舎の花子さんが関係してるんじゃないかって思ってるの」
「だとしても、お前さんはここにいるべきではない。瘴気が充満しすぎている。そのせいであの少女も、凶暴化しているのだろう」
「あの少女って……、もしかして花子さんのこと?」
「そう呼ばれているのかもしれないな」
「花子さんを見たの!? どこで!?」
貴重な手がかりだと思い、前のめりに男の子へ近づく。
……でもそもそも距離が近かったのに、鼻の先が触れそうなほど近づいてしまい、あわてて離れる。
「ご、ごめんなさいっ」
「……花子さんかどうかはわからないが、凶暴化した少女は隠れているのだろう。僕たちの様子を見ているのか、さっきから嫌な視線を感じる。そもそもこの校舎はあの少女のテリトリーだ。行方不明の人を探すにしても、中々に骨が折れるぞ?」
「それでも、私は帰るわけにはいかないのっ。二人もそうだし、美琴ちゃん……私の大切な友達を絶対に見つけて、謝りたいことがあるから」
じぃっと男の子を見つめる。
すると、はぁとため息をついた男の子は首を横に振った。
……やっぱりダメなのかな。
「──僕は紅魔だ」
「へ? こう、ま……?」
漢字がピンとこなくて首を傾げると、男の子はフッと鼻で笑って黒板に赤いチョークで「紅魔」と書いた。
「仕方がないから、僕も付き合ってやろう」
「ほ、本当!?」
「この場で嘘を言ってどうする? 行く気がないのなら置いていくが」
「ままま待って! 行く! 私は結花っ、長月結花!」
教室を出て行こうすると男の子──紅魔くんをあわてて追いかける。
紅魔くんは私の顔を見ると、ニヤリと笑った。
「──さあ、魔物退治と行こうか。結花」
◆◆◆◆◆
教室を出ると、周りの空気がさっきよりもどんよりしているように思えた。
息が苦しい……、本当に嫌な感じだ。
いつどこから襲われるかわからないから、キョロキョロとしながら廊下を歩いていると紅魔くんが立ち止まる。
「──待て、結花」
紅魔くんが見ている視線の先には、何もない。
……いや、階段の方から足音がしてきた。
誰かが階段を上ってきてるんだっ。
紅魔くんは動かない。
ただじぃっと、前を見据えていた。
──ぬっ。
ガイコツが姿を現した!
下を向いてうつむいていたのに、ぐりんっと私たちの方を見ると、表情がないはずなのにニィィィと笑った気がした。
『みぃつけた。あーそーびーまーしょー』
──カタカタカタカタッ。
骨を鳴らしながら、ガイコツは私と紅魔くんに向かって走ってきた!
逃げようと足を一本ふみ出した時、パシッと紅魔くんに腕を掴まれる。
「ここ紅魔くんっ!? 逃げようよ!」
ガイコツはもう目の前だ。
紅魔くんはチラリと私に視線を向けてから、ガイコツに向き直って腕を前に突き出した。
「消えろ」
──ボフウッ!
──ギャァァァ!!
突然ガイコツが真っ黒な炎に包まれて燃えていく。
そして跡形も無く消えてしまった。
「……す、すごいね紅魔くん!」
「この程度で逃げていたら、この先が思いやられるな。行くぞ」
……もしかして、紅魔くんってすごく強い?
そもそも、なんで旧校舎に居たんだろうか。
紅魔くんはあやかし……なのかな。
聞こうとしたけど、次々に襲ってくるガイコツや恐ろしいナニカのせいで、タイミングを見失ってしまった。
『ギャァァァァア!』
さらっと簡単にガイコツを燃やした紅魔くんは、スタスタと歩みを進める。
はぐれないように、私はそのすぐ後ろをついていく。
途中、ガラガラとどこかの教室の扉が開いた。
またなにか出てくるんじゃないかと、私は身構える。
「──えっみこ、と……ちゃん?」
さらさらの長い髪をポニーテールにして、キリリと意思の強そうな瞳。
見間違えるはずがない、……あれは絶対に美琴ちゃんだ!
ゆらりゆらり、と体を左右に揺らしながら美琴ちゃんが教室から出てきた。
そしてガクンっと膝から崩れおちる。
「美琴ちゃん!?」
慌てて駆け寄って支えれば、うつろな目をしていた。はくはく、と口を動かしている。
「美琴ちゃんっ、どうしたの? 美琴ちゃっ!」
何度も呼びかけていると、一度ううっと苦しそうにしたあとだんだんと目に光が戻ってきた。
「うっ……ここは、……ゆ、か?」
「そうだよっ、結花だよ美琴ちゃん!」
私を見つめた美琴ちゃんの目が次第に潤んできて、ほろりと涙が頬を伝った。
「ゆか……結花、結花っ私、怖かった……!」
美琴ちゃんは、うわぁぁんと泣きながら私に抱きつていてくる。
私は美琴ちゃんの頭を撫でて、しばらくそのままでいた。
紅魔くんはそんな私たちを視界の端に入れながら、周りを警戒している。
美琴ちゃんは泣き止むと恥ずかしそうに私から離れた。
「あり、がとう……結花」
「ううんっ」
美琴ちゃんから名前で呼ばれるのは、いつぶりかな……。
すごく嬉しいし、なつかしい気持ちになってくる。
「美琴ちゃんが無事で本当によかった……。ねぇ美琴ちゃん、どうして旧校舎に? 二日前から美琴ちゃんが行方不明になったって、大騒ぎだったんだよ。私、すごく心配したの……!」
「……そう、よね。私、なんてことを」
美琴ちゃんはまたポロポロと泣きはじめた。
「じゃあなぜだ?」
「うぅ──き、綺麗な顔をしてるなぁって思って……」
「…………」
男の子はピタリと動きを止めた。
私、何か変なこと言っちゃった?
「そう、か。僕は綺麗な顔をしているのか。自分じゃわからない」
男の子はそう言って立ち上がり、私に手をのばす。
恐る恐る手をのせれば引っ張られた。
勢いがすごかったから、おもわず男の子に突進するような感じになってしまう。
でもふらつかずに、しっかりと私を支えてくれた。
「この場所は人間が長居していい場所ではない。はやく外に出るぞ」
「それはダメっ!」
「……なぜだ」
「烈央くんと星守くんっ──友達とはぐれちゃったんだ! それに二日前から行方不明の友達もいるし、今日はクラスの子たちも居なくて……私は旧校舎の花子さんが関係してるんじゃないかって思ってるの」
「だとしても、お前さんはここにいるべきではない。瘴気が充満しすぎている。そのせいであの少女も、凶暴化しているのだろう」
「あの少女って……、もしかして花子さんのこと?」
「そう呼ばれているのかもしれないな」
「花子さんを見たの!? どこで!?」
貴重な手がかりだと思い、前のめりに男の子へ近づく。
……でもそもそも距離が近かったのに、鼻の先が触れそうなほど近づいてしまい、あわてて離れる。
「ご、ごめんなさいっ」
「……花子さんかどうかはわからないが、凶暴化した少女は隠れているのだろう。僕たちの様子を見ているのか、さっきから嫌な視線を感じる。そもそもこの校舎はあの少女のテリトリーだ。行方不明の人を探すにしても、中々に骨が折れるぞ?」
「それでも、私は帰るわけにはいかないのっ。二人もそうだし、美琴ちゃん……私の大切な友達を絶対に見つけて、謝りたいことがあるから」
じぃっと男の子を見つめる。
すると、はぁとため息をついた男の子は首を横に振った。
……やっぱりダメなのかな。
「──僕は紅魔だ」
「へ? こう、ま……?」
漢字がピンとこなくて首を傾げると、男の子はフッと鼻で笑って黒板に赤いチョークで「紅魔」と書いた。
「仕方がないから、僕も付き合ってやろう」
「ほ、本当!?」
「この場で嘘を言ってどうする? 行く気がないのなら置いていくが」
「ままま待って! 行く! 私は結花っ、長月結花!」
教室を出て行こうすると男の子──紅魔くんをあわてて追いかける。
紅魔くんは私の顔を見ると、ニヤリと笑った。
「──さあ、魔物退治と行こうか。結花」
◆◆◆◆◆
教室を出ると、周りの空気がさっきよりもどんよりしているように思えた。
息が苦しい……、本当に嫌な感じだ。
いつどこから襲われるかわからないから、キョロキョロとしながら廊下を歩いていると紅魔くんが立ち止まる。
「──待て、結花」
紅魔くんが見ている視線の先には、何もない。
……いや、階段の方から足音がしてきた。
誰かが階段を上ってきてるんだっ。
紅魔くんは動かない。
ただじぃっと、前を見据えていた。
──ぬっ。
ガイコツが姿を現した!
下を向いてうつむいていたのに、ぐりんっと私たちの方を見ると、表情がないはずなのにニィィィと笑った気がした。
『みぃつけた。あーそーびーまーしょー』
──カタカタカタカタッ。
骨を鳴らしながら、ガイコツは私と紅魔くんに向かって走ってきた!
逃げようと足を一本ふみ出した時、パシッと紅魔くんに腕を掴まれる。
「ここ紅魔くんっ!? 逃げようよ!」
ガイコツはもう目の前だ。
紅魔くんはチラリと私に視線を向けてから、ガイコツに向き直って腕を前に突き出した。
「消えろ」
──ボフウッ!
──ギャァァァ!!
突然ガイコツが真っ黒な炎に包まれて燃えていく。
そして跡形も無く消えてしまった。
「……す、すごいね紅魔くん!」
「この程度で逃げていたら、この先が思いやられるな。行くぞ」
……もしかして、紅魔くんってすごく強い?
そもそも、なんで旧校舎に居たんだろうか。
紅魔くんはあやかし……なのかな。
聞こうとしたけど、次々に襲ってくるガイコツや恐ろしいナニカのせいで、タイミングを見失ってしまった。
『ギャァァァァア!』
さらっと簡単にガイコツを燃やした紅魔くんは、スタスタと歩みを進める。
はぐれないように、私はそのすぐ後ろをついていく。
途中、ガラガラとどこかの教室の扉が開いた。
またなにか出てくるんじゃないかと、私は身構える。
「──えっみこ、と……ちゃん?」
さらさらの長い髪をポニーテールにして、キリリと意思の強そうな瞳。
見間違えるはずがない、……あれは絶対に美琴ちゃんだ!
ゆらりゆらり、と体を左右に揺らしながら美琴ちゃんが教室から出てきた。
そしてガクンっと膝から崩れおちる。
「美琴ちゃん!?」
慌てて駆け寄って支えれば、うつろな目をしていた。はくはく、と口を動かしている。
「美琴ちゃんっ、どうしたの? 美琴ちゃっ!」
何度も呼びかけていると、一度ううっと苦しそうにしたあとだんだんと目に光が戻ってきた。
「うっ……ここは、……ゆ、か?」
「そうだよっ、結花だよ美琴ちゃん!」
私を見つめた美琴ちゃんの目が次第に潤んできて、ほろりと涙が頬を伝った。
「ゆか……結花、結花っ私、怖かった……!」
美琴ちゃんは、うわぁぁんと泣きながら私に抱きつていてくる。
私は美琴ちゃんの頭を撫でて、しばらくそのままでいた。
紅魔くんはそんな私たちを視界の端に入れながら、周りを警戒している。
美琴ちゃんは泣き止むと恥ずかしそうに私から離れた。
「あり、がとう……結花」
「ううんっ」
美琴ちゃんから名前で呼ばれるのは、いつぶりかな……。
すごく嬉しいし、なつかしい気持ちになってくる。
「美琴ちゃんが無事で本当によかった……。ねぇ美琴ちゃん、どうして旧校舎に? 二日前から美琴ちゃんが行方不明になったって、大騒ぎだったんだよ。私、すごく心配したの……!」
「……そう、よね。私、なんてことを」
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