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第六章 おじいさんは神出鬼没?
41話
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ベッドに寝転んでいた星守くんが、むくりと起き上がる。
「その誰かって誰? 人を探してるってわかっても、肝心の誰なのかがわかんないと意味ないじゃん~」
「うっ、そうだけどさぁ……!」
「──ほっほっほっ。ご名答じゃの、人間の子よ」
「ほら星守くん、おじいさんも合ってるって言──へ?」
──ズズズ。
私の隣でお茶を一口飲んで、ゆったりとくつろいでいる……おじいさんがいた。
パクリ、とお茶うけに出されているお菓子を一つ頬張る。
「……ぎゃあああ!?」
「いつからそこにっ?」
「今度こそ、このボクがとっ捕まえてやる!」
まったく気づかなかった!
いつからおじいさんは、この部屋にいたの!?
烈央くんと星守くんが臨戦態勢に入る。
おじいさんは、もう一口お菓子を食べてから立ち上がった。
「ああああ!! それボクがあとで食べようと思ってたお菓子だったのに!」
「ほっほっ。ワシはまだ捕まるわけにはいかんのじゃ。ではの~」
──ガラガラ。
おじいさんは部屋の窓を開けて、窓枠にひょいと足をかけた。
「お菓子、美味しかったぞ。またちょうだいね~」
ウィンクをしてから、そのまま窓から外に出た。
──私の部屋は二階だよ!? 危ないっ!
星守くんと二人で窓の外を覗きこむと、ぴょーんぴょーんと家の屋根伝いに逃げていく後ろ姿が見えた。
そう言えばおじいさん、あやかしだった。
だから二階から飛び降りたくらいじゃ怪我をしないことに気づき、ほっとする。
「もう、また逃げられた! なにがしたいのさっあのおじいさんは!」
「わわ、危ないよっ星守くん」
ふがー! と鼻息を荒くして、窓から身を乗り出す星守くんを引っ張りどうにか座らせる。
「……とにかく誰を探しているのか、どうにかしておじいさんから聞き出そう。俺たちだって別におじいさんのやりたいことを全部否定して、はやく隠世に帰れって言いたいわけじゃないんだ。手伝えることがあるのなら、手伝いたいと思う」
「烈央くん……。うん、私もそう思う」
おじいさんはそもそも、不法滞在中の身。
送り屋としては一刻も早く隠世へ送り返すのがお仕事で、そのために今日までおじいさんを追いかけ回していた。
でもおじいさんは、なんだかとても大切な用事があるように思えて仕方がない……。
「……ボクも賛成ー。普通に捕まえられないよ、あのおじいさん。なんのあやかしなんだか。あんなに足の速いあやかしいた?」
星守くんの問いに、烈央くんと私は頭を悩ませる。
私、そもそもあやかしの種類に詳しくないしなぁ。
ここは烈央くんに任せるしかない。
早々に考えるのを諦めて、私も星守くんと同じ聞く側に回った。
「うーん、そうだな。居たような、居なかったような……」
「なにそれぇ。烈央ですらわかんないなら、ボクにもわかんないや。おてあげ」
「今夜、伊織に聞いてみようか。伊織なら、知っているかも」
伊織さんは何百年も生きているあやかしだ。
きっとおじいさんがなんのあやかしなのか、特徴を伝えれば知ってるかもしれない。
「明日、またおじいさんを見かけたらちゃんと聞いてみよう。あなたの助けがしたいんだって」
「うん、そうだね。人探しなら、私たちも役に立てるかもしれないし」
「ま、あのおじいさんが話を聞いてくれればのはなしだけどー」
不吉なことを言わないで星守くん!?
◆◆◆◆◆
「──どうしてくれるんだ、まったく。星守が余計なこと言うからだよ」
「はぁっ? 別に、なんとなく言っただけだしぃ。たまたまでしょ」
「そうだといいけど」
私の家で作戦会議をした次の日。
いつも朝の登校時間には会えていたのに、今日に限っておじいさんの姿がなかった。
昨日、星守くんが『話を聞いてくれれば良いけど』って言っていたことが現実になってしまう。
登校時間ギリギリまで粘ってみたけど、結局おじいさんは現れなかった。
私たちは、放課後におじいさんに会えることを祈って一日を過ごすことに。
昼休みが終わり、掃除の時間。
トイレに行って教室へ戻る途中、私は急いでいた。
──ひぃ、早く戻らなきゃ五時間目が始まっちゃう!
掃除の時間ももう終わるころで、誰も居ない廊下を一人歩いていると、ふと視線を感じた。
「うん?」
後ろをふり返っても、誰も居ない。
でもまだ視線を感じる。
嫌な視線じゃないけど、冷たくて……でもあたたかい変な感覚の視線。
私は窓の外を覗きこんでみた。
五年一組の教室がある本校舎は三階建で、隣にはひとまわり小さい二階建ての木造の旧校舎がある。
私はいま本校舎三階にいるから、視線をすこし下にすると旧校舎の二階の廊下が見えた。
児童は立ち入り禁止の旧校舎。
もちろん、誰もいるはずがない。
「え──」
き、旧校舎の二階の廊下に誰かいる?
こちらをじいっと見つめてくる誰かと目が合った。
「だ、誰?」
「その誰かって誰? 人を探してるってわかっても、肝心の誰なのかがわかんないと意味ないじゃん~」
「うっ、そうだけどさぁ……!」
「──ほっほっほっ。ご名答じゃの、人間の子よ」
「ほら星守くん、おじいさんも合ってるって言──へ?」
──ズズズ。
私の隣でお茶を一口飲んで、ゆったりとくつろいでいる……おじいさんがいた。
パクリ、とお茶うけに出されているお菓子を一つ頬張る。
「……ぎゃあああ!?」
「いつからそこにっ?」
「今度こそ、このボクがとっ捕まえてやる!」
まったく気づかなかった!
いつからおじいさんは、この部屋にいたの!?
烈央くんと星守くんが臨戦態勢に入る。
おじいさんは、もう一口お菓子を食べてから立ち上がった。
「ああああ!! それボクがあとで食べようと思ってたお菓子だったのに!」
「ほっほっ。ワシはまだ捕まるわけにはいかんのじゃ。ではの~」
──ガラガラ。
おじいさんは部屋の窓を開けて、窓枠にひょいと足をかけた。
「お菓子、美味しかったぞ。またちょうだいね~」
ウィンクをしてから、そのまま窓から外に出た。
──私の部屋は二階だよ!? 危ないっ!
星守くんと二人で窓の外を覗きこむと、ぴょーんぴょーんと家の屋根伝いに逃げていく後ろ姿が見えた。
そう言えばおじいさん、あやかしだった。
だから二階から飛び降りたくらいじゃ怪我をしないことに気づき、ほっとする。
「もう、また逃げられた! なにがしたいのさっあのおじいさんは!」
「わわ、危ないよっ星守くん」
ふがー! と鼻息を荒くして、窓から身を乗り出す星守くんを引っ張りどうにか座らせる。
「……とにかく誰を探しているのか、どうにかしておじいさんから聞き出そう。俺たちだって別におじいさんのやりたいことを全部否定して、はやく隠世に帰れって言いたいわけじゃないんだ。手伝えることがあるのなら、手伝いたいと思う」
「烈央くん……。うん、私もそう思う」
おじいさんはそもそも、不法滞在中の身。
送り屋としては一刻も早く隠世へ送り返すのがお仕事で、そのために今日までおじいさんを追いかけ回していた。
でもおじいさんは、なんだかとても大切な用事があるように思えて仕方がない……。
「……ボクも賛成ー。普通に捕まえられないよ、あのおじいさん。なんのあやかしなんだか。あんなに足の速いあやかしいた?」
星守くんの問いに、烈央くんと私は頭を悩ませる。
私、そもそもあやかしの種類に詳しくないしなぁ。
ここは烈央くんに任せるしかない。
早々に考えるのを諦めて、私も星守くんと同じ聞く側に回った。
「うーん、そうだな。居たような、居なかったような……」
「なにそれぇ。烈央ですらわかんないなら、ボクにもわかんないや。おてあげ」
「今夜、伊織に聞いてみようか。伊織なら、知っているかも」
伊織さんは何百年も生きているあやかしだ。
きっとおじいさんがなんのあやかしなのか、特徴を伝えれば知ってるかもしれない。
「明日、またおじいさんを見かけたらちゃんと聞いてみよう。あなたの助けがしたいんだって」
「うん、そうだね。人探しなら、私たちも役に立てるかもしれないし」
「ま、あのおじいさんが話を聞いてくれればのはなしだけどー」
不吉なことを言わないで星守くん!?
◆◆◆◆◆
「──どうしてくれるんだ、まったく。星守が余計なこと言うからだよ」
「はぁっ? 別に、なんとなく言っただけだしぃ。たまたまでしょ」
「そうだといいけど」
私の家で作戦会議をした次の日。
いつも朝の登校時間には会えていたのに、今日に限っておじいさんの姿がなかった。
昨日、星守くんが『話を聞いてくれれば良いけど』って言っていたことが現実になってしまう。
登校時間ギリギリまで粘ってみたけど、結局おじいさんは現れなかった。
私たちは、放課後におじいさんに会えることを祈って一日を過ごすことに。
昼休みが終わり、掃除の時間。
トイレに行って教室へ戻る途中、私は急いでいた。
──ひぃ、早く戻らなきゃ五時間目が始まっちゃう!
掃除の時間ももう終わるころで、誰も居ない廊下を一人歩いていると、ふと視線を感じた。
「うん?」
後ろをふり返っても、誰も居ない。
でもまだ視線を感じる。
嫌な視線じゃないけど、冷たくて……でもあたたかい変な感覚の視線。
私は窓の外を覗きこんでみた。
五年一組の教室がある本校舎は三階建で、隣にはひとまわり小さい二階建ての木造の旧校舎がある。
私はいま本校舎三階にいるから、視線をすこし下にすると旧校舎の二階の廊下が見えた。
児童は立ち入り禁止の旧校舎。
もちろん、誰もいるはずがない。
「え──」
き、旧校舎の二階の廊下に誰かいる?
こちらをじいっと見つめてくる誰かと目が合った。
「だ、誰?」
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