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第五章 狙われたわた毛たちを守る大作戦!
37話
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「結花ちゃん。隠世の門を呼ぶの、一人でできるかやってみるかい?」
「……うん。やってみたい!」
河川敷だと目立つから、私たちは人目が少ない近くの空き地に移動してきた。
すぅーはぁ。
深呼吸をして、鍵が出てくるように念じる。
──出てきて。
胸の辺りがあたたかくなって、一本の鍵が光をまとって出てきた。
次は門を呼び出す言葉を唱えるるんだけど、前みたいに烈央くんが先に言って私が復唱するわけじゃないから、ちょっぴり緊張した。
……大丈夫、私ならできるっ。
「正しき道よ、かくりよへ導きたまえ!」
──ふわり。
金木犀の甘い香りがして、無事に隠世への門が現れた。
鍵を開けて門を開くとわた毛たちはぴょんぴょんと、とびはねながら暗い道を通って行く。
「みんな、元気でねっ。……またねー!」
一匹、また一匹。
次々に門をくぐって行く。
わた毛たちは人間の言葉を話せないけど、仲のいい友達がいない私にとって小さな友達だった。
……みんな、隠世で元気に暮らしてね。
いつか隠世に遊びに行けるといいな。
わた毛たちは烈央くんと星守くんに毛玉の塊をあげたり、大切に持っていたのか体の中からペットボトルのギャップを出して私にくれた。
そんなわた毛たちを見送っていると、最後の一匹が門の前で立ち止まる。
「……どうしたの? ほら、みんなが待ってるよ」
一匹だけ遅れていたあの日のように、先の方でわた毛たちが身を寄せ合って最後の一匹を待っている。
残っているわた毛は、そんな仲間と私を交互に見てプルプル震えていた。
じっと見守っているとわた毛はもう一度だけ私を見てから、ぴょーんと大きくはねて仲間と合流する。
ほっとしていると、なぜかわた毛はまた私たちの方へ戻ってきた。
「どうしてっ? なにかあったの?」
しゃがんで手をのばすと、わた毛はスルスルと腕を登ってきて肩に乗った。
そして一生懸命、私の頬に体を押し付けてくる。
「……まさか、私と一緒にいたいの?」
──うん。
声は聞こえないけど、そう返事をしたように感じた。
「っ、い、いいの? ここに……現世に残ったら、中々ほかのみんなに会えないかもしれないよ?」
──スリスリ。
いいよ、と言うように頬に体をすり寄せてきた。
私はバッ! と、烈央くんと星守くんをふり返る。
「結花ちゃん……」
烈央くんは眉を八の字にさせて、困ったような表情を浮かべた。
……わた毛のこと、ダメだって言われるのかな。
やっぱりあやかしは、あやかしの世界で生きた方がこの子のためを思うと良いのかもしれない。
人間の私と一緒にいるよりも……。
「──いいんじゃない?」
「星守くんっ……」
「ちっこいわた毛なら、結花を襲う心配はないしー? それにわた毛は、結花と一緒に居たいって言ってるみたいだしね」
「……俺だって別に、ダメとは言ってないよ」
「ならどうして、そんな顔してるのさ」
「あのなぁ、あやかしはペットじゃないんだぞ? このわた毛が結花ちゃんを守るとも限らないし……」
「ねぇ、わた毛。ちゃんと結花を守れるの?」
星守くんはわた毛をガシリと両手で掴んで、ゴゴゴ! と背後に怖いオーラをまとわせて脅すように言う。
わた毛は星守くんの手の中で、なにやら必死にアピールを始めた。
「──ん、わかった。よし、じゃあまずは結花を不安にさせたあの狐をやっつけろわた毛!」
──ポーイ!
星守くんはわた毛を烈央くんの顔面にめがけて投げた!
「んぐっ!」
顔に張りついたわた毛は、攻撃するように烈央くんの顔周りを這いまわる。
「……ふははっ、待って、くすぐったい、あははは!」
首周りにサササッと移動したわた毛。
くすぐったさに烈央くんが身をよじりながら笑う。
「ほら烈央、わた毛を認めないとソレやめないよー?」
「わかっ、わかったからわた毛をどかしてくれ!」
わた毛を呼ぶと、ポトっと下に落ちてからぴょんぴょーんととびはねて私の元に帰ってくる。
手をのばせば、スルスルと肩まで登ってきた。
「ふぅ……。結花ちゃん」
呼吸を整えた烈央くんが私の前に来る。
「あー、えっと。……わた毛は結花ちゃんに悪さをしないと思うから、一緒に居て良いよ」
「ほ、本当っ!?」
「でも。だからって、今後もむやみに小さなあやかしをそばに置くことを許したわけじゃないからね? 小さくても、危ないあやかしだっているんだよ。自分が妖力を回復させる力を持ってるって、忘れないように」
「……はい、わかりました」
下を向いて反省していると、ススッと私の隣にきた星守くん。
星守くんの一押しがなかったら、烈央くんは認めてくれなかったかもしれない。
「……ありがとうっ、星守くん」
「ま、ボクの方が優しいってことがわかったでしょ? ふふーん、今度からはボクを頼ると良いよ結花」
「調子に乗るな星守。今回のことは、優しい優しくないの問題じゃないだろう?」
「もーうるさいなぁ。ガミガミちくちく怒ってたら、結花に嫌われちゃうよー?」
「ぐっ……」
「ふふ、これで言い返せないでしょ~」
「卑怯だぞ星守!」
また喧嘩を始めた双子。
そんな二人はおいといて、私は隠世へ続く門を閉じる。
隠世へ行くことを決めたわた毛たちは、沢山とびはねて私とわた毛にバイバイって言ってくれた気がした。
門が消えても、烈央くんと星守くんはまだ言いあっている。
そうだ、わた毛の名前を考えてあげよう!
なにが良いかな?
可愛い名前にしたい。
真っ白なわた毛で、つぶらな瞳……。
私が見つめるからか、わた毛も私を見つめ返してくる。
小さなごま粒のような瞳が、とっても可愛い。
「うーん……あ、ましろって名前はどうかな?」
「──うわ、そのまますぎない?」
「こら星守。そういうことは、言っちゃダメだろう。いくは安直すぎるからって」
ぐるんっとふり返って、二人は私が決めた名前に文句を言ってくる。
「むぅ。さっきまで喧嘩してたのに、耳がいいんだから……! 可愛いでしょっ? ねー、ましろ?」
わた毛──改め、ましろは喜ぶようにぴょんっと飛んだ。
「ほら、ましろだって喜んでる!」
「ましろー、その名前に飽きたらいつでもボクが新しい名前を決めてあげるからー」
「ちょっと星守くん!?」
「俺は良いと思いよ、結花ちゃん」
「烈央くん……! だよね、可愛いよね──」
「マシュマロみたいで美味しそうだ」
「ひぇ……!!」
私とましろは身を寄せ合って、震える。
「烈央くんっ、ましろは食べ物じゃないよ!」
「ふふ、わかってるよ? 冗談さ」
いつか、ましろが食べられちゃうかも……!
私が守るからね、ましろ!
ましろに私の想いが伝わったのか、こくんと頷いてくれた。
あぁ、可愛い……!
「チョコかけたら美味しそうじゃなーい?」
「たしかに、そうだね」
……また物騒な会話が聞こえてきた!
「ましろっ。あの二人から、絶っっ対に守ってみせるからっ!」
私が必死にましろに伝えていると、くすくすと笑い声が後ろから聞こえてくる。
むぅ……!
なぐさめてくるように、ましろが私の手にスリスリと体をこすりつけてきた。
私の唯一の友達だった、わた毛のあやかしたち。
そんな小さな友達の一匹が、時が経って私の小さな仲間になった。
「……ふふ。これからよろしくね、ましろ!」
「……うん。やってみたい!」
河川敷だと目立つから、私たちは人目が少ない近くの空き地に移動してきた。
すぅーはぁ。
深呼吸をして、鍵が出てくるように念じる。
──出てきて。
胸の辺りがあたたかくなって、一本の鍵が光をまとって出てきた。
次は門を呼び出す言葉を唱えるるんだけど、前みたいに烈央くんが先に言って私が復唱するわけじゃないから、ちょっぴり緊張した。
……大丈夫、私ならできるっ。
「正しき道よ、かくりよへ導きたまえ!」
──ふわり。
金木犀の甘い香りがして、無事に隠世への門が現れた。
鍵を開けて門を開くとわた毛たちはぴょんぴょんと、とびはねながら暗い道を通って行く。
「みんな、元気でねっ。……またねー!」
一匹、また一匹。
次々に門をくぐって行く。
わた毛たちは人間の言葉を話せないけど、仲のいい友達がいない私にとって小さな友達だった。
……みんな、隠世で元気に暮らしてね。
いつか隠世に遊びに行けるといいな。
わた毛たちは烈央くんと星守くんに毛玉の塊をあげたり、大切に持っていたのか体の中からペットボトルのギャップを出して私にくれた。
そんなわた毛たちを見送っていると、最後の一匹が門の前で立ち止まる。
「……どうしたの? ほら、みんなが待ってるよ」
一匹だけ遅れていたあの日のように、先の方でわた毛たちが身を寄せ合って最後の一匹を待っている。
残っているわた毛は、そんな仲間と私を交互に見てプルプル震えていた。
じっと見守っているとわた毛はもう一度だけ私を見てから、ぴょーんと大きくはねて仲間と合流する。
ほっとしていると、なぜかわた毛はまた私たちの方へ戻ってきた。
「どうしてっ? なにかあったの?」
しゃがんで手をのばすと、わた毛はスルスルと腕を登ってきて肩に乗った。
そして一生懸命、私の頬に体を押し付けてくる。
「……まさか、私と一緒にいたいの?」
──うん。
声は聞こえないけど、そう返事をしたように感じた。
「っ、い、いいの? ここに……現世に残ったら、中々ほかのみんなに会えないかもしれないよ?」
──スリスリ。
いいよ、と言うように頬に体をすり寄せてきた。
私はバッ! と、烈央くんと星守くんをふり返る。
「結花ちゃん……」
烈央くんは眉を八の字にさせて、困ったような表情を浮かべた。
……わた毛のこと、ダメだって言われるのかな。
やっぱりあやかしは、あやかしの世界で生きた方がこの子のためを思うと良いのかもしれない。
人間の私と一緒にいるよりも……。
「──いいんじゃない?」
「星守くんっ……」
「ちっこいわた毛なら、結花を襲う心配はないしー? それにわた毛は、結花と一緒に居たいって言ってるみたいだしね」
「……俺だって別に、ダメとは言ってないよ」
「ならどうして、そんな顔してるのさ」
「あのなぁ、あやかしはペットじゃないんだぞ? このわた毛が結花ちゃんを守るとも限らないし……」
「ねぇ、わた毛。ちゃんと結花を守れるの?」
星守くんはわた毛をガシリと両手で掴んで、ゴゴゴ! と背後に怖いオーラをまとわせて脅すように言う。
わた毛は星守くんの手の中で、なにやら必死にアピールを始めた。
「──ん、わかった。よし、じゃあまずは結花を不安にさせたあの狐をやっつけろわた毛!」
──ポーイ!
星守くんはわた毛を烈央くんの顔面にめがけて投げた!
「んぐっ!」
顔に張りついたわた毛は、攻撃するように烈央くんの顔周りを這いまわる。
「……ふははっ、待って、くすぐったい、あははは!」
首周りにサササッと移動したわた毛。
くすぐったさに烈央くんが身をよじりながら笑う。
「ほら烈央、わた毛を認めないとソレやめないよー?」
「わかっ、わかったからわた毛をどかしてくれ!」
わた毛を呼ぶと、ポトっと下に落ちてからぴょんぴょーんととびはねて私の元に帰ってくる。
手をのばせば、スルスルと肩まで登ってきた。
「ふぅ……。結花ちゃん」
呼吸を整えた烈央くんが私の前に来る。
「あー、えっと。……わた毛は結花ちゃんに悪さをしないと思うから、一緒に居て良いよ」
「ほ、本当っ!?」
「でも。だからって、今後もむやみに小さなあやかしをそばに置くことを許したわけじゃないからね? 小さくても、危ないあやかしだっているんだよ。自分が妖力を回復させる力を持ってるって、忘れないように」
「……はい、わかりました」
下を向いて反省していると、ススッと私の隣にきた星守くん。
星守くんの一押しがなかったら、烈央くんは認めてくれなかったかもしれない。
「……ありがとうっ、星守くん」
「ま、ボクの方が優しいってことがわかったでしょ? ふふーん、今度からはボクを頼ると良いよ結花」
「調子に乗るな星守。今回のことは、優しい優しくないの問題じゃないだろう?」
「もーうるさいなぁ。ガミガミちくちく怒ってたら、結花に嫌われちゃうよー?」
「ぐっ……」
「ふふ、これで言い返せないでしょ~」
「卑怯だぞ星守!」
また喧嘩を始めた双子。
そんな二人はおいといて、私は隠世へ続く門を閉じる。
隠世へ行くことを決めたわた毛たちは、沢山とびはねて私とわた毛にバイバイって言ってくれた気がした。
門が消えても、烈央くんと星守くんはまだ言いあっている。
そうだ、わた毛の名前を考えてあげよう!
なにが良いかな?
可愛い名前にしたい。
真っ白なわた毛で、つぶらな瞳……。
私が見つめるからか、わた毛も私を見つめ返してくる。
小さなごま粒のような瞳が、とっても可愛い。
「うーん……あ、ましろって名前はどうかな?」
「──うわ、そのまますぎない?」
「こら星守。そういうことは、言っちゃダメだろう。いくは安直すぎるからって」
ぐるんっとふり返って、二人は私が決めた名前に文句を言ってくる。
「むぅ。さっきまで喧嘩してたのに、耳がいいんだから……! 可愛いでしょっ? ねー、ましろ?」
わた毛──改め、ましろは喜ぶようにぴょんっと飛んだ。
「ほら、ましろだって喜んでる!」
「ましろー、その名前に飽きたらいつでもボクが新しい名前を決めてあげるからー」
「ちょっと星守くん!?」
「俺は良いと思いよ、結花ちゃん」
「烈央くん……! だよね、可愛いよね──」
「マシュマロみたいで美味しそうだ」
「ひぇ……!!」
私とましろは身を寄せ合って、震える。
「烈央くんっ、ましろは食べ物じゃないよ!」
「ふふ、わかってるよ? 冗談さ」
いつか、ましろが食べられちゃうかも……!
私が守るからね、ましろ!
ましろに私の想いが伝わったのか、こくんと頷いてくれた。
あぁ、可愛い……!
「チョコかけたら美味しそうじゃなーい?」
「たしかに、そうだね」
……また物騒な会話が聞こえてきた!
「ましろっ。あの二人から、絶っっ対に守ってみせるからっ!」
私が必死にましろに伝えていると、くすくすと笑い声が後ろから聞こえてくる。
むぅ……!
なぐさめてくるように、ましろが私の手にスリスリと体をこすりつけてきた。
私の唯一の友達だった、わた毛のあやかしたち。
そんな小さな友達の一匹が、時が経って私の小さな仲間になった。
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