あやかし達の送り屋をやっています! 〜正反対な狐のあやかし双子との出会い〜

巴藍

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第四章 現世の朝霧家にて、猫又と座敷童子と

32話

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「──星守は攻められるより、攻めたいもんね」
「は、はぁ!? な、なに言ってんの烈央!」
「ふふ、そこでムキになったらダメだろう星守。──結花ちゃん。隠世かくりよの件は一応父さんに相談してみるよ。俺も結花ちゃんを隠世に案内してみたいし。送り屋の仕事を手伝ってもらってるから、隠世について詳しくなるのもいいと思うんだ」
「……そ、そーね。近いうちに、父さんと母さんに聞いてみたらいいんじゃないっ?」
「本当っ? やったあ!」

 あれよあれよと、私が隠世に行けるかもしれない可能性が浮上してワクワク。
 あんこくんみたいな可愛らしいあやかしが、隠世には沢山いるのかな?
 ふふふ、楽しみになってきた!

「……結花」

 乃々ちゃんが暗い顔をして、私の名前を呼んだ。

「うん?」
「さっきは悪かったわね。……腕、本当に大丈なの?」
「うんっ。すこし赤くなっただけだよ。気にしないで乃々ちゃん」

 乃々ちゃんはホッとしたように、息をはいた。

「結花は学校でもぽやんとしてるんだから、ボクたちが見張ってないと。今回は乃々だったけど、次は悪いあやかしに食べられちゃうかもねー」
「ひどい! お守りもちゃんと持ってるから、大丈夫だもん!」
「星守、結花ちゃんはちょっぴりドジなだけだよ」
「あ、烈央くんまでっ! ……私知ってるんだからね? 烈央くんが給食のトマト苦手なの!」
「気づいてたの? って、いまはその話は関係ないだろうっ?」
「プププ~。烈央と違って、ボクは苦手なもの無いし~」
「星守くんはそもそも、野菜全般苦手でしょうが! 嘘つかないのっ!」

 ああ言えばこう言う!
 まったく、油断も隙もない双子なんだから!

「──ふふっ、あはは! 楽しそうね、あなたたち」
『楽しくないっ!』

 声を揃えた私たちに、乃々ちゃんはお腹を抱えて笑い出した。
 その目には、笑いすぎて涙が浮かんでいる。

「ほんと、そんなことばっかり言い合ってるんでしょ? あなたたちっ。ふふっ!」
『そんなに笑わなくてもっ!』
「だからっぷ、あははは! 笑わせないでよ、もうっ!」

 口を大きく開けて笑う乃々ちゃん。
 私と烈央くん星守くんは、顔を見合わせて脱力する。
 
「あははっ! ひぃ……ふぅ。はぁー、一ヶ月分くらい笑ったわ。ふふ」
「乃々ちゃん、笑いすぎぃ……」
「あなたたちが面白のが悪いのよ。ねぇ結花、現世うつしよのことについてもっと教えてくれる? 流行りのファッションとか、遊びとか知りたいわ」
「お、いいよ! えっとねぇ──」

 そこから私は烈央くんと星守くんに呼ばれるまで、乃々ちゃんとたくさんおしゃべりをした。
 趣味や苦手なこと、最近ハマっているもの、おすすめの本。
 色々とお互いのことを知れたよ。
 あ、そうそう。
 乃々ちゃんは、私が導きの鍵を烈央くんと星守くんから奪ったって、勘違いをしていたらしい。
 どうにか誤解も解けたし、よかったぁ。

 気づけば空はオレンジ色で、もう帰る時間だ。
 乃々ちゃんは、今日はもう遅いから隠世には帰らず伊織さんのお家に泊まっていくみたい。
 玄関先で、みんなが私を見送ってくれた。

「お邪魔しました! またね伊織さん、乃々ちゃん!」
「またいつでもおいで。桜子も私も、待っているよ」

 桜子ちゃんは疲れて眠ってしまい、起こすのもかわいそうだから手紙を置いてきた。
 私はこくりと頷く。

「また遊んであげてもいいわ。……元気にしてなさいよ、結花」
「うん! 乃々ちゃんも、元気でね。絶対また遊ぼうっ」
「えぇ。さようなら、結花」

 乃々ちゃんは、ちょっぴり恥ずかしそうに手を振ってくれる。

「烈央くんと星守くんは、また明日学校でね!」
「あぁ、また明日。結花ちゃん」
「ん。まーた夜更かしして、遅刻しないでよ~? 結花」
「うぐっ。き、気をつけます……!」

 みんなが見えなくなるまでブンブンと手を振る。

 お屋敷の門を出て一人になると、とたんにオレンジ色の空が寂しいものに見えてきた。
 ……私も早く帰ろう。
 お母さんとお父さんがいるお家に。
 
 ──すごく充実した、とある日曜日。
 色々あったけど、猫又の新しいお友達ができました!
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