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第四章 現世の朝霧家にて、猫又と座敷童子と
31話
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狭い押し入れから這い出て私たちは、はじめに伊織さんに通された部屋に戻る。
すると伊織さんが、人数分の飲み物を用意してくれていた。
「遊んだから喉がかわいたでしょう。さぁ、飲んで潤しなさい」
伊織さんはそう言って部屋を出て行こうとする。
それを星守くんと烈央くんが引きためた。
「伊織、結花と話さなくて良いの?」
「俺たちに結花ちゃんを呼ばせたのは、送り屋のことを話すためだろう?」
「あぁ、もういいんだ。ふふ、それに二人には内緒の話を私と結花さんはしたから。ね、結花さん?」
──パチン。
伊織さんは綺麗なウィンクを私に飛ばした。
そのまま桜子ちゃんを連れて、部屋を出て行ってしまう。
「ちょ、結花。なにを伊織と話したのっ?」
「秘密の話って、本当に俺たちには言えない?」
二人が私に詰め寄ってくる。
伊織さんが言った秘密の話はきっと、二人が現世に来た初日に寂しがっていた話……だと思う。
「ひ、秘密! だから言えません!」
「ボクたちに秘密? 結花が? ……へぇ、いい度胸じゃん」
「ふふ。それはどんな手を使ってでも、暴く価値がありそうだね」
ひぃぃぃぃ!
二人ともっ、顔が怖いよ!
「──女子の秘密を無闇に暴こうとするなんて嫌われるわよ、星守、烈央」
まさに鶴の一声。
乃々ちゃんが呆れたように言う。
その言葉が刺さったのか、烈央くんと星守くんはうぐっと声を詰まらせた。
「ありがとう、乃々ちゃん……!」
「ちょっ、抱きつかないでよ暑苦しいわねぇ!」
味方をしてくれたことが嬉しくて、私は乃々ちゃんに抱きつく。
口では「抱きつくな」って言ってるけど、私をはがそうとはしない。
乃々ちゃんって、本当はすごく優しいんだね。
ぐりぐりと頭を押し付けると、乃々ちゃんは「まったく……」と言いながら頭を撫でてくれた。
「……女の子同士の絆が深まっているところ悪いけど、ちゃんと自己紹介したら? 乃々。もっと結花ちゃんと仲良くなるためにもね」
「そう、ね」
私は一旦、乃々ちゃんから離れて座りなおす。
乃々ちゃんはコホンと咳をすると、視線を上下左右に移動させて頬を赤くした。
「あ、あたしは猫田乃々。見ての通り、猫又のあやかしよ」
乃々ちゃんの頭には、ぴこぴこと動く三角の耳、そしてゆらゆらと揺れている猫みたいなしっぽがある。
「えへへ……、乃々ちゃんの耳もしっぽも可愛いって思ってたの!」
「そっ、そうかしら?」
乃々ちゃんは、ピンとしっぽを立てた。
くぅ、いつか仲良くなったらしっぽも耳も触りたいなぁ。
「あたしと烈央と星守の関係だけど……。二人のご両親とあたしの親が仲がいいから、あたしは二人とは生まれた時から一緒にいたの。幼馴染ってやつよ」
「幼馴染ってことは……、乃々ちゃんも隠世に住んでるの? 現世は初めて?」
「えぇ、隠世に住んでいるわ。烈央たちが現世での勤務になってから、現世に来るようになったから……今回で三回目かしら」
「三回目かぁ。私もいつか、隠世に行ってみたいな」
「二人に言えば連れて行ってくれるんじゃない? 送り屋じゃないの」
ちらりと期待をこめた眼差しで烈央くんと星守くんを見ると、なんとも微妙な顔をしていた。
「うーんり人間の結花ちゃんを隠世へ連れて行くことは、すぐには難しいかな」
「色々とあるしねー。だいたい、弱っちぃ結花が隠世に行ったら即あやかしに食べられちゃうんじゃなーい?」
「食べられる……ひぃっ! 怖いこと言わないでよっ!」
星守くんがクスクス笑いながら、手をパクパクと口に見立てて脅かしてくる。
これはあれだ、鈴葉様の祠に行った時もやられたやつ。
私だって、やられてばかりじゃない!
星守くんの手をえいやっ! と握りこんで、動きを封じる。
──ふふ、これでもう動かせないでしょ?
してやったり、勝ち誇った顔で星守君を見れば目を大きく見開いた。
次第に顔を赤くして、プイッとそっぽを向いてしまう。
のどがかわいていたのか、ジュースをぐびぐび飲みはじめた。
うん? 急にどうしたんだろ、星守くん。
すると伊織さんが、人数分の飲み物を用意してくれていた。
「遊んだから喉がかわいたでしょう。さぁ、飲んで潤しなさい」
伊織さんはそう言って部屋を出て行こうとする。
それを星守くんと烈央くんが引きためた。
「伊織、結花と話さなくて良いの?」
「俺たちに結花ちゃんを呼ばせたのは、送り屋のことを話すためだろう?」
「あぁ、もういいんだ。ふふ、それに二人には内緒の話を私と結花さんはしたから。ね、結花さん?」
──パチン。
伊織さんは綺麗なウィンクを私に飛ばした。
そのまま桜子ちゃんを連れて、部屋を出て行ってしまう。
「ちょ、結花。なにを伊織と話したのっ?」
「秘密の話って、本当に俺たちには言えない?」
二人が私に詰め寄ってくる。
伊織さんが言った秘密の話はきっと、二人が現世に来た初日に寂しがっていた話……だと思う。
「ひ、秘密! だから言えません!」
「ボクたちに秘密? 結花が? ……へぇ、いい度胸じゃん」
「ふふ。それはどんな手を使ってでも、暴く価値がありそうだね」
ひぃぃぃぃ!
二人ともっ、顔が怖いよ!
「──女子の秘密を無闇に暴こうとするなんて嫌われるわよ、星守、烈央」
まさに鶴の一声。
乃々ちゃんが呆れたように言う。
その言葉が刺さったのか、烈央くんと星守くんはうぐっと声を詰まらせた。
「ありがとう、乃々ちゃん……!」
「ちょっ、抱きつかないでよ暑苦しいわねぇ!」
味方をしてくれたことが嬉しくて、私は乃々ちゃんに抱きつく。
口では「抱きつくな」って言ってるけど、私をはがそうとはしない。
乃々ちゃんって、本当はすごく優しいんだね。
ぐりぐりと頭を押し付けると、乃々ちゃんは「まったく……」と言いながら頭を撫でてくれた。
「……女の子同士の絆が深まっているところ悪いけど、ちゃんと自己紹介したら? 乃々。もっと結花ちゃんと仲良くなるためにもね」
「そう、ね」
私は一旦、乃々ちゃんから離れて座りなおす。
乃々ちゃんはコホンと咳をすると、視線を上下左右に移動させて頬を赤くした。
「あ、あたしは猫田乃々。見ての通り、猫又のあやかしよ」
乃々ちゃんの頭には、ぴこぴこと動く三角の耳、そしてゆらゆらと揺れている猫みたいなしっぽがある。
「えへへ……、乃々ちゃんの耳もしっぽも可愛いって思ってたの!」
「そっ、そうかしら?」
乃々ちゃんは、ピンとしっぽを立てた。
くぅ、いつか仲良くなったらしっぽも耳も触りたいなぁ。
「あたしと烈央と星守の関係だけど……。二人のご両親とあたしの親が仲がいいから、あたしは二人とは生まれた時から一緒にいたの。幼馴染ってやつよ」
「幼馴染ってことは……、乃々ちゃんも隠世に住んでるの? 現世は初めて?」
「えぇ、隠世に住んでいるわ。烈央たちが現世での勤務になってから、現世に来るようになったから……今回で三回目かしら」
「三回目かぁ。私もいつか、隠世に行ってみたいな」
「二人に言えば連れて行ってくれるんじゃない? 送り屋じゃないの」
ちらりと期待をこめた眼差しで烈央くんと星守くんを見ると、なんとも微妙な顔をしていた。
「うーんり人間の結花ちゃんを隠世へ連れて行くことは、すぐには難しいかな」
「色々とあるしねー。だいたい、弱っちぃ結花が隠世に行ったら即あやかしに食べられちゃうんじゃなーい?」
「食べられる……ひぃっ! 怖いこと言わないでよっ!」
星守くんがクスクス笑いながら、手をパクパクと口に見立てて脅かしてくる。
これはあれだ、鈴葉様の祠に行った時もやられたやつ。
私だって、やられてばかりじゃない!
星守くんの手をえいやっ! と握りこんで、動きを封じる。
──ふふ、これでもう動かせないでしょ?
してやったり、勝ち誇った顔で星守君を見れば目を大きく見開いた。
次第に顔を赤くして、プイッとそっぽを向いてしまう。
のどがかわいていたのか、ジュースをぐびぐび飲みはじめた。
うん? 急にどうしたんだろ、星守くん。
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