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第四章 現世の朝霧家にて、猫又と座敷童子と
30話
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──と言っても、初めてくるお家。
おまけにとても広くて案の定、迷子です。
「あ……、ここの部屋入ってもいいかな?」
一応さっき伊織さんとすれ違った時に、部屋に入ってもいい許可はもらってある。
でもよそ様のお家をうろうろするのも、なんだか気が引けちゃう。
……かくれんぼやろうって、自分で言い出したことだけどさぁ。
「よし、この押し入れに隠れよう」
入った部屋には、ちょうど押し入れがあった。
下の段にはなにも荷物が入ってないから、隠れるのにちょうどいいいかも。
「お邪魔しまーす……」
少しだけ戸を開けて入り、体育座りで中に隠れる。
ふぅと息をはいて耳をすませると、「どこに隠れたって無駄よ!」と乃々ちゃんの声が遠くでしている。
ちょっとセリフが怖すぎるんじゃないかな?
ホラー映画の殺人鬼に追われている気分になってきちゃった……!
しばらく息を潜めていると、タタタタッと足音が聞こえた。
早歩きをしているような足音だ。
どんどん私がいる部屋の方に近づいてくる。
ん? でも乃々ちゃんじゃないっぽい?
一体誰が……。
「──乃々ったら、なんで長い爪をむき出しにしてるのさ!? 猫又のあやかしだからって、怖すぎでしょ!」
息を切らした星守くんが、押し入れに入ってきた。
「はぁはぁっ……あれ、捕まったらひっかかれるやつ! まったく、結花がかくれんぼしようって言うか──」
パチリと星守くんと目が合った……と思う。
なぜ自信がないかと言うと、星守くんが完全に戸を閉めちゃったから、暗くてよく顔が見えない。
「……ど、どうも?」
「その声っ結花!? なんでいるの、ボクと同じところに隠れないでよねっ!」
「私が先に隠れてたんだよ! 星守くんが被せてきたんでしょ!」
「おバカ、大きな声出さないでよ!」
「んぐっ!」
口を手で塞がれる。
大きな声を出してたのは、星守くんもなのに。
理不尽! 横暴!
烈央くんに怒られちゃうよーだ!
すこししてから、星守くんは手を退けてくれた。
よく見たら星守くんは、もふもふな耳としっぽを出している。
もしかして、あやかしの姿のほうが遠くまで音がよく聞こえるとか?
「ふぅ。……で、結花は初めからここに隠れてたわけ?」
「そうだよ。まだこっちの方には乃々ちゃん来てないし、ココは結構穴場な気がする!」
「ならちょうどいいや、ボクもここに隠れようっと。もっと奥につめて、ほらほら」
「わっ、ちょっと押さないで──ぎゃあ!」
奥の方にずれようとしたら、急かすようにぐいぐいと肘で押してくるから体勢を崩してしまった。
倒れる! と思って、私はとっさに星守くんの服の袖をひっぱったらしく、星守くんも私の方へ倒れてくる。
「ちょ、なにすんのっ!?」
「いたたたっ……! ごめんっ星守くん、怪我はない──」
目を開けると、至近距離に星守くんの顔があった。
暗闇の中でもわかるくらい、息がかかりそうなほど近くに。
これはあれだ、壁ドンならぬ床ドンというやつでは……?
すこしでも動いたら、くちびるが触れちゃうんじゃないかってくらい近い。
「星守く……」
「っ、静かに!」
また口を手で塞がれた。
星守くんは、三角の耳をピクピクと忙しなく動かしている。
……もしかして、乃々ちゃんがこっちに来たのかな?
そう思っていると、ミシッミシッと廊下を歩く音が聞こえてきた。
やっぱり星守くんには、乃々ちゃんが近寄ってきた音が聞こえていたらしい。
押し入れの中で二人で息を潜めて、乃々ちゃんが通り過ぎるのを待つ。
すぐ近くから星守くんの呼吸と心音が聞こえてきて、こんなの二重の意味でドキドキしてしまう……!
実際に、ドッドッと私の心臓が速くなってきた。
同じタイミングで、チラリと星守くんが私を見てくる。……ニヤっと悪い笑みを浮かべて。
「──結花、ドキドキしてるんでしょ」
「べべべ別に? してないもんっ」
「ふーん?」
くすくすと笑いながら、あろうことか星守くんは顔をもっと近づけてきた!
「せ、星守くんっ!?」
「だーかーらー、静かに」
本当に、あと少しでくちびるがくっついちゃいそう──
『あなたたち、どこに隠れてるのよー!? 誰でも良いから出てきなさーーい!』
「ひっ!?」
いきなり乃々ちゃんの大きな声が聞こえてきて、びっくりしてしまう。
まだ誰も見つかっていないみたいだから、乃々ちゃんはイライラしているんだ。
「……乃々のやつ。まったく、かくれんぼしててノコノコと出ていくやつがどこにいるのさ?」
はぁとため息をついて星守くんが、私の上から移動しようとしたその時。
「──ふふ。結花ちゃん、星守、みぃつけたあ」
「ぎゃあ!?」
「れ、烈央くん!?」
スッと戸が開いて、ニコリとなんだか怖い笑顔を浮かべた烈央くんが顔をのぞかせた。
よ、よかった……!
烈央くんはまだ乃々ちゃんに見つかってないから、これはノーカンウントだよね?
「おどかさないでよ烈央っ。烈央だってまだ見つかってないんでしょ? 鬼じゃないんだから、無効だよ」
「ふふふ。星守はまだお子様だね」
「なにが?」
「乃々が怒ってるからまだ誰も見つかってない──なんて誰が言ったの? 囮作戦だよ」
「はぁ!? なにそれっ、ずるいんだけど!」
「私、まんまと引っかかっちゃった……!」
さっき乃々ちゃんは、「誰でもいいから出てきなさい」って言ってたから、まだ烈央くんも見つかっていないんだと思っていた。
それも作戦だったなんて、烈央くんと乃々ちゃんかくれんぼの鬼うますぎない……?
「あら星守、ここにいたの。……やっぱり烈央の作戦勝ちってとこね」
「乃々……!」
乃々ちゃんはクスリと笑って星守くんを見たあと、私に視線を移す。
「……あなたも見つかったのね、結花」
「あ……、うん! えへへ!」
「う、うるさいわよ! 声が大きい!」
「ごめん、ごめんっ。……ふふ、烈央くんと乃々ちゃんの作戦にまんまとかかっちゃった」
恥ずかしそうに乃々ちゃんが私の名前を呼ぶから、なんだか嬉しくなっちゃって元気に返事をしてしまった。
──これはあれだ。
ふふ、お友達になれそうな予感ってやつだ。
おまけにとても広くて案の定、迷子です。
「あ……、ここの部屋入ってもいいかな?」
一応さっき伊織さんとすれ違った時に、部屋に入ってもいい許可はもらってある。
でもよそ様のお家をうろうろするのも、なんだか気が引けちゃう。
……かくれんぼやろうって、自分で言い出したことだけどさぁ。
「よし、この押し入れに隠れよう」
入った部屋には、ちょうど押し入れがあった。
下の段にはなにも荷物が入ってないから、隠れるのにちょうどいいいかも。
「お邪魔しまーす……」
少しだけ戸を開けて入り、体育座りで中に隠れる。
ふぅと息をはいて耳をすませると、「どこに隠れたって無駄よ!」と乃々ちゃんの声が遠くでしている。
ちょっとセリフが怖すぎるんじゃないかな?
ホラー映画の殺人鬼に追われている気分になってきちゃった……!
しばらく息を潜めていると、タタタタッと足音が聞こえた。
早歩きをしているような足音だ。
どんどん私がいる部屋の方に近づいてくる。
ん? でも乃々ちゃんじゃないっぽい?
一体誰が……。
「──乃々ったら、なんで長い爪をむき出しにしてるのさ!? 猫又のあやかしだからって、怖すぎでしょ!」
息を切らした星守くんが、押し入れに入ってきた。
「はぁはぁっ……あれ、捕まったらひっかかれるやつ! まったく、結花がかくれんぼしようって言うか──」
パチリと星守くんと目が合った……と思う。
なぜ自信がないかと言うと、星守くんが完全に戸を閉めちゃったから、暗くてよく顔が見えない。
「……ど、どうも?」
「その声っ結花!? なんでいるの、ボクと同じところに隠れないでよねっ!」
「私が先に隠れてたんだよ! 星守くんが被せてきたんでしょ!」
「おバカ、大きな声出さないでよ!」
「んぐっ!」
口を手で塞がれる。
大きな声を出してたのは、星守くんもなのに。
理不尽! 横暴!
烈央くんに怒られちゃうよーだ!
すこししてから、星守くんは手を退けてくれた。
よく見たら星守くんは、もふもふな耳としっぽを出している。
もしかして、あやかしの姿のほうが遠くまで音がよく聞こえるとか?
「ふぅ。……で、結花は初めからここに隠れてたわけ?」
「そうだよ。まだこっちの方には乃々ちゃん来てないし、ココは結構穴場な気がする!」
「ならちょうどいいや、ボクもここに隠れようっと。もっと奥につめて、ほらほら」
「わっ、ちょっと押さないで──ぎゃあ!」
奥の方にずれようとしたら、急かすようにぐいぐいと肘で押してくるから体勢を崩してしまった。
倒れる! と思って、私はとっさに星守くんの服の袖をひっぱったらしく、星守くんも私の方へ倒れてくる。
「ちょ、なにすんのっ!?」
「いたたたっ……! ごめんっ星守くん、怪我はない──」
目を開けると、至近距離に星守くんの顔があった。
暗闇の中でもわかるくらい、息がかかりそうなほど近くに。
これはあれだ、壁ドンならぬ床ドンというやつでは……?
すこしでも動いたら、くちびるが触れちゃうんじゃないかってくらい近い。
「星守く……」
「っ、静かに!」
また口を手で塞がれた。
星守くんは、三角の耳をピクピクと忙しなく動かしている。
……もしかして、乃々ちゃんがこっちに来たのかな?
そう思っていると、ミシッミシッと廊下を歩く音が聞こえてきた。
やっぱり星守くんには、乃々ちゃんが近寄ってきた音が聞こえていたらしい。
押し入れの中で二人で息を潜めて、乃々ちゃんが通り過ぎるのを待つ。
すぐ近くから星守くんの呼吸と心音が聞こえてきて、こんなの二重の意味でドキドキしてしまう……!
実際に、ドッドッと私の心臓が速くなってきた。
同じタイミングで、チラリと星守くんが私を見てくる。……ニヤっと悪い笑みを浮かべて。
「──結花、ドキドキしてるんでしょ」
「べべべ別に? してないもんっ」
「ふーん?」
くすくすと笑いながら、あろうことか星守くんは顔をもっと近づけてきた!
「せ、星守くんっ!?」
「だーかーらー、静かに」
本当に、あと少しでくちびるがくっついちゃいそう──
『あなたたち、どこに隠れてるのよー!? 誰でも良いから出てきなさーーい!』
「ひっ!?」
いきなり乃々ちゃんの大きな声が聞こえてきて、びっくりしてしまう。
まだ誰も見つかっていないみたいだから、乃々ちゃんはイライラしているんだ。
「……乃々のやつ。まったく、かくれんぼしててノコノコと出ていくやつがどこにいるのさ?」
はぁとため息をついて星守くんが、私の上から移動しようとしたその時。
「──ふふ。結花ちゃん、星守、みぃつけたあ」
「ぎゃあ!?」
「れ、烈央くん!?」
スッと戸が開いて、ニコリとなんだか怖い笑顔を浮かべた烈央くんが顔をのぞかせた。
よ、よかった……!
烈央くんはまだ乃々ちゃんに見つかってないから、これはノーカンウントだよね?
「おどかさないでよ烈央っ。烈央だってまだ見つかってないんでしょ? 鬼じゃないんだから、無効だよ」
「ふふふ。星守はまだお子様だね」
「なにが?」
「乃々が怒ってるからまだ誰も見つかってない──なんて誰が言ったの? 囮作戦だよ」
「はぁ!? なにそれっ、ずるいんだけど!」
「私、まんまと引っかかっちゃった……!」
さっき乃々ちゃんは、「誰でもいいから出てきなさい」って言ってたから、まだ烈央くんも見つかっていないんだと思っていた。
それも作戦だったなんて、烈央くんと乃々ちゃんかくれんぼの鬼うますぎない……?
「あら星守、ここにいたの。……やっぱり烈央の作戦勝ちってとこね」
「乃々……!」
乃々ちゃんはクスリと笑って星守くんを見たあと、私に視線を移す。
「……あなたも見つかったのね、結花」
「あ……、うん! えへへ!」
「う、うるさいわよ! 声が大きい!」
「ごめん、ごめんっ。……ふふ、烈央くんと乃々ちゃんの作戦にまんまとかかっちゃった」
恥ずかしそうに乃々ちゃんが私の名前を呼ぶから、なんだか嬉しくなっちゃって元気に返事をしてしまった。
──これはあれだ。
ふふ、お友達になれそうな予感ってやつだ。
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