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第四章 現世の朝霧家にて、猫又と座敷童子と
27話
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「結花さんが、あやかしに狙われる様になった原因はまだわからないけれど、用心するに越したことはない。身の危険を感じたら、すぐに烈央と星守を頼りなさいね」
こくりと頷くと、伊織さんは「よろしい」と言ってお茶をすする。
「……烈央と星守が導きの鍵を触れなくなって、人間の結花さんが送り屋の手伝いをすることになったと知った時は、どうなるかと思ったけれど。君なら大丈夫そうだ」
「手伝い……、不可抗力といいますかっ巻きこまれたといいますか……!」
「ふふっそうだね。なぜ人間の結花さんに、導きの鍵が反応したのかわからない以上、烈央と星守から離れないでほしい。あの二人は必ず、君を守ってくれるからね。原因はいま調べているけど、わかるまで時間がかかりそうなんだ」
「そうですか……。ご迷惑をおかけてして、すみません」
「結花さん、顔を上げて。……きっと鍵が何かを示したがっているんだ。それを調べるのは大人の役目。だから君のせいじゃないよ」
伊織さんが優しすぎて、涙が出そうだ。
横にいる桜子ちゃんが立ち上がって「よしよし」と、私の頭を撫でてくれた。
あ、優しさがしみて本当にちょっと涙が出たかも。
「もっと早く……そう、君の体の中に鍵が入った日に会うべきだった。二人が上手く隠し通していたから、会うのが遅くなってしまったんだ。怒られると思ったって。ふふ、隠す方がこってり怒られるというに」
笑いながらも、ゴゴゴッ! と背後に怖いオーラが出ている伊織さん。
この間、烈央くんと星守くんの元気がなかったのは、伊織さんに怒られたからだとわかった。
「一通りのことは隠世で学んでは来たらしいけれど……二人はまだ現世の知識が浅い子供だからね。保護者代理である私が、しっかりしないと。ふふ」
それはもうコッテリ怒られたんだなって思って、私は心の中で二人に手を合わせておく。
「そうだ。結花さんは、なぜ二人が現世に来たのかは聞いているかい?」
「……えっ、送り屋をするためじゃないんですか?」
「正解だよ。ふふっでも送り屋はね、必ずしも現世で活動するわけじゃない。二人がまだ送り屋見習いだった一ヶ月前……正式に送り屋になることが決まったんだ」
「一ヶ月前? ……私、もう二人は何年もやってるんだと思ってました。慣れているっていうか、ちゃんとしてますし!」
「ふふ、それは良いことを聞いた。二人はしっかりと、送り屋を出来ているようだね。現世に来た初日は、やっぱり両親が恋しいのか寂しげにしていたのに」
──あぁ、これは二人には秘密だよ? 私が結花さんに、告げ口をしたって怒られてしまうからね。
おちゃめに笑う伊織さんに、私はこくりと頷いておく。
やっぱり、気丈に見えるけど二人とも寂しかったんだね。
「二人には秘密、ですね!」
「うん、私と結花さんの秘密だ。……話を戻すね。送り屋は担当する地域がそれぞれ割り当てられるんだ。現世の場合、瘴気により凶暴化したあやかしを浄化する任務もある。二人の担当地域が隠世なのか現世なのか、直前までわからなかった。そして決まったのが、結花ちゃんも通っている封鬼小学校。──私はね、二人と結花さんは不思議な縁で繋がっているのかもしれないと思うんだ」
もしもあの日、筆箱を教室に忘れていなかったら。
もしも二階の音楽室に寄らずに、帰っていたら。
二人があやかしだって知らないまま、過ごしていたかもしれない。
そう思うと……縁っていうのは、とても不思議だなと感じる。
「それにね、私はあの子たちに友達ができるか心配だったんだ。特に星守は口が悪いから、本当に困ったものだよ」
はぁ、とため気をつく伊織さん。
星守くんが口が悪いのは、共感しかないです……! って声に出しそうになって、グッとこらえた。
でも失礼なことを言ってくるけど、本当にバカにしてるわけじゃないんだよね星守くんって。
えっとこう、微妙なところをついてくるっていうか……うーん?
あれ、やっぱりバカにしてるのかな!?
いやいやっ、私のことおバカって言いながらも色々手伝ってくれたりするから、やっぱり優しいはずだ、星守くんは。
……そう思いたい。
こくりと頷くと、伊織さんは「よろしい」と言ってお茶をすする。
「……烈央と星守が導きの鍵を触れなくなって、人間の結花さんが送り屋の手伝いをすることになったと知った時は、どうなるかと思ったけれど。君なら大丈夫そうだ」
「手伝い……、不可抗力といいますかっ巻きこまれたといいますか……!」
「ふふっそうだね。なぜ人間の結花さんに、導きの鍵が反応したのかわからない以上、烈央と星守から離れないでほしい。あの二人は必ず、君を守ってくれるからね。原因はいま調べているけど、わかるまで時間がかかりそうなんだ」
「そうですか……。ご迷惑をおかけてして、すみません」
「結花さん、顔を上げて。……きっと鍵が何かを示したがっているんだ。それを調べるのは大人の役目。だから君のせいじゃないよ」
伊織さんが優しすぎて、涙が出そうだ。
横にいる桜子ちゃんが立ち上がって「よしよし」と、私の頭を撫でてくれた。
あ、優しさがしみて本当にちょっと涙が出たかも。
「もっと早く……そう、君の体の中に鍵が入った日に会うべきだった。二人が上手く隠し通していたから、会うのが遅くなってしまったんだ。怒られると思ったって。ふふ、隠す方がこってり怒られるというに」
笑いながらも、ゴゴゴッ! と背後に怖いオーラが出ている伊織さん。
この間、烈央くんと星守くんの元気がなかったのは、伊織さんに怒られたからだとわかった。
「一通りのことは隠世で学んでは来たらしいけれど……二人はまだ現世の知識が浅い子供だからね。保護者代理である私が、しっかりしないと。ふふ」
それはもうコッテリ怒られたんだなって思って、私は心の中で二人に手を合わせておく。
「そうだ。結花さんは、なぜ二人が現世に来たのかは聞いているかい?」
「……えっ、送り屋をするためじゃないんですか?」
「正解だよ。ふふっでも送り屋はね、必ずしも現世で活動するわけじゃない。二人がまだ送り屋見習いだった一ヶ月前……正式に送り屋になることが決まったんだ」
「一ヶ月前? ……私、もう二人は何年もやってるんだと思ってました。慣れているっていうか、ちゃんとしてますし!」
「ふふ、それは良いことを聞いた。二人はしっかりと、送り屋を出来ているようだね。現世に来た初日は、やっぱり両親が恋しいのか寂しげにしていたのに」
──あぁ、これは二人には秘密だよ? 私が結花さんに、告げ口をしたって怒られてしまうからね。
おちゃめに笑う伊織さんに、私はこくりと頷いておく。
やっぱり、気丈に見えるけど二人とも寂しかったんだね。
「二人には秘密、ですね!」
「うん、私と結花さんの秘密だ。……話を戻すね。送り屋は担当する地域がそれぞれ割り当てられるんだ。現世の場合、瘴気により凶暴化したあやかしを浄化する任務もある。二人の担当地域が隠世なのか現世なのか、直前までわからなかった。そして決まったのが、結花ちゃんも通っている封鬼小学校。──私はね、二人と結花さんは不思議な縁で繋がっているのかもしれないと思うんだ」
もしもあの日、筆箱を教室に忘れていなかったら。
もしも二階の音楽室に寄らずに、帰っていたら。
二人があやかしだって知らないまま、過ごしていたかもしれない。
そう思うと……縁っていうのは、とても不思議だなと感じる。
「それにね、私はあの子たちに友達ができるか心配だったんだ。特に星守は口が悪いから、本当に困ったものだよ」
はぁ、とため気をつく伊織さん。
星守くんが口が悪いのは、共感しかないです……! って声に出しそうになって、グッとこらえた。
でも失礼なことを言ってくるけど、本当にバカにしてるわけじゃないんだよね星守くんって。
えっとこう、微妙なところをついてくるっていうか……うーん?
あれ、やっぱりバカにしてるのかな!?
いやいやっ、私のことおバカって言いながらも色々手伝ってくれたりするから、やっぱり優しいはずだ、星守くんは。
……そう思いたい。
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