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第三章 小さな神様の、探し人
21話
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のれんをくぐるみたいに、私の髪の毛をかき分けてピョコッと鈴葉様が顔を出した。
授業中だから声が出せないけど、すごくびっくりした!
というか、なんで鈴葉様が教室にいるのっ?
今日の朝、祠に会いに行った時は祠から動けない~って言ってたのに。
なんだかサイズも、少しだけ大きくなってる気がするし……。
鈴葉様はテイっ! と私の肩から飛び降りて、机に着地する。
みんなには見えていないはずだけど、やっぱり少し周りの目を気にしてしまう。
隣の席の烈央くんが鈴葉様に気付いたみたいで、びっくりしながら私と鈴葉様を交互に見た。
「鈴葉様、なんでこんなところにいるんですかっ?」
私が小声で鈴葉様に話しかけると、こてんと首をかしげて「うん? ……あ、思いだしたことがあったのじゃ!」と手を叩く。
『探している女の子が妾の所へ来ていたのは、ざっと四十年くらい前じゃったわ』
「よよ、四十年前!? ──あ」
ガタンと音をたてて立ち上がった私に、クラス中の視線が集まる。
「結花ちゃん?」
夏目先生がポカンとした顔で私の名前を呼んだ。
……は、恥ずかしい!
ついうっかり声を出しちゃった!
鈴葉様が四十年前なんて、とんでもない年数を言ってくるから、つい授業中だということも忘れて立ちあがっちゃったよ!
「あっ、えっと、その……!」
注目されるのが苦手な私は、適当な理由も思いつかなくてあたふた。
「──先生、結花ちゃんは体調がすぐれないようなので保健室に連れて行きます」
烈央くんが助け舟をだしてくれた。
夏目先生は眉を八の字に下げて、心配そうに私に視線を送る。
「そうなんですか? では烈央くん、お願いします。結花ちゃん、どうしても辛かったら無理せずに保護者の方を呼んで、迎えに来てもらってくださいね。佐藤先生が電話をしてくれるはずですから」
「はい、ありがとございます……」
夏目先生に嘘をつくのが申し訳なくて、だんだんと声が小さくなっていく。
烈央くんが「さぁ行こう」とうながしてくれて、私は鈴葉様をサッと服のポケットにいれながら廊下に出た。
「そうだ夏目先生。ついでに星守もお腹の調子が悪いようなので、連れていきますね」
「──んあ? なぁに、烈央」
「ほら、行くよ」
居眠りしていたところをぐいっと腕を引かれて立たされた星守くん。
──星守くん、いま寝てたよね?
──三人も保健室に行くの?
──星守くん大丈夫かなぁ。
ざわざわとしはじめたクラスメイトの視線から逃げるように、私たちは教室を後にした。
◆◆◆◆◆
「──はぁ!? 四十年前だって? それを早く言ってよね!」
「しぃ! 声が大きいよ星守くん!」
私たち三人と鈴葉様は、校舎と体育館をつなぐ渡り廊下から少し離れた場所に来ていた。
ここは、渡り廊下からは死角になっていて、先生たちに見つかる心配もない。
それでもさっきの星守くんは、声が大きすぎたけどね。
壁に背を預けて立っている烈央くんは、あごに手を当てて「うーん」と考えている。
「四十年前じゃ、もうその子は封鬼小学校には通ってないね」
「手がかりゼロ。ふり出しに戻るどころか、スタートラインにすら立ててないじゃんボクたち……」
『む、そう恨みがましく妾を見るでない! 妾にとって四十年前はつい最近じゃ。何百年生きていると思っておる?』
しーん、と重たい空気が私たちの間に流れた。
実際、星守くんが言ったようにスタートラインにすら立ててないよね……うーん。
四十年くらい前にこの学校に通っていて、いまはもう髪型は変わってるかもしれないけどボブヘアくらいで、左目に泣きぼくろがあって優しげな女の子……。
──なんだかひっかかる気が。
頭のすみっこで、チリチリとなにかが光を発している。
なんだろう?
もう少し……、あともう少しで、なにかを思い出せそうっ。
「あ…………居たぁぁぁぁぁぁぁ!?」
急に大声を出した私に、三人がビクッと肩をはねさせた。
でも私はそんなのお構いなしに、とある人の名前を烈央くんと星守くんに言うと、二人も「なるほど!」と頷いてくれる。
鈴葉様だけが名前ではピンと来ていないらしく「なんじゃ、なんじゃ!?」と、戸惑っていた。
私は鈴葉様様にニコリと笑いかける。
「会いたかった女の子にもうすぐ会えますよ、鈴葉様!」
授業中だから声が出せないけど、すごくびっくりした!
というか、なんで鈴葉様が教室にいるのっ?
今日の朝、祠に会いに行った時は祠から動けない~って言ってたのに。
なんだかサイズも、少しだけ大きくなってる気がするし……。
鈴葉様はテイっ! と私の肩から飛び降りて、机に着地する。
みんなには見えていないはずだけど、やっぱり少し周りの目を気にしてしまう。
隣の席の烈央くんが鈴葉様に気付いたみたいで、びっくりしながら私と鈴葉様を交互に見た。
「鈴葉様、なんでこんなところにいるんですかっ?」
私が小声で鈴葉様に話しかけると、こてんと首をかしげて「うん? ……あ、思いだしたことがあったのじゃ!」と手を叩く。
『探している女の子が妾の所へ来ていたのは、ざっと四十年くらい前じゃったわ』
「よよ、四十年前!? ──あ」
ガタンと音をたてて立ち上がった私に、クラス中の視線が集まる。
「結花ちゃん?」
夏目先生がポカンとした顔で私の名前を呼んだ。
……は、恥ずかしい!
ついうっかり声を出しちゃった!
鈴葉様が四十年前なんて、とんでもない年数を言ってくるから、つい授業中だということも忘れて立ちあがっちゃったよ!
「あっ、えっと、その……!」
注目されるのが苦手な私は、適当な理由も思いつかなくてあたふた。
「──先生、結花ちゃんは体調がすぐれないようなので保健室に連れて行きます」
烈央くんが助け舟をだしてくれた。
夏目先生は眉を八の字に下げて、心配そうに私に視線を送る。
「そうなんですか? では烈央くん、お願いします。結花ちゃん、どうしても辛かったら無理せずに保護者の方を呼んで、迎えに来てもらってくださいね。佐藤先生が電話をしてくれるはずですから」
「はい、ありがとございます……」
夏目先生に嘘をつくのが申し訳なくて、だんだんと声が小さくなっていく。
烈央くんが「さぁ行こう」とうながしてくれて、私は鈴葉様をサッと服のポケットにいれながら廊下に出た。
「そうだ夏目先生。ついでに星守もお腹の調子が悪いようなので、連れていきますね」
「──んあ? なぁに、烈央」
「ほら、行くよ」
居眠りしていたところをぐいっと腕を引かれて立たされた星守くん。
──星守くん、いま寝てたよね?
──三人も保健室に行くの?
──星守くん大丈夫かなぁ。
ざわざわとしはじめたクラスメイトの視線から逃げるように、私たちは教室を後にした。
◆◆◆◆◆
「──はぁ!? 四十年前だって? それを早く言ってよね!」
「しぃ! 声が大きいよ星守くん!」
私たち三人と鈴葉様は、校舎と体育館をつなぐ渡り廊下から少し離れた場所に来ていた。
ここは、渡り廊下からは死角になっていて、先生たちに見つかる心配もない。
それでもさっきの星守くんは、声が大きすぎたけどね。
壁に背を預けて立っている烈央くんは、あごに手を当てて「うーん」と考えている。
「四十年前じゃ、もうその子は封鬼小学校には通ってないね」
「手がかりゼロ。ふり出しに戻るどころか、スタートラインにすら立ててないじゃんボクたち……」
『む、そう恨みがましく妾を見るでない! 妾にとって四十年前はつい最近じゃ。何百年生きていると思っておる?』
しーん、と重たい空気が私たちの間に流れた。
実際、星守くんが言ったようにスタートラインにすら立ててないよね……うーん。
四十年くらい前にこの学校に通っていて、いまはもう髪型は変わってるかもしれないけどボブヘアくらいで、左目に泣きぼくろがあって優しげな女の子……。
──なんだかひっかかる気が。
頭のすみっこで、チリチリとなにかが光を発している。
なんだろう?
もう少し……、あともう少しで、なにかを思い出せそうっ。
「あ…………居たぁぁぁぁぁぁぁ!?」
急に大声を出した私に、三人がビクッと肩をはねさせた。
でも私はそんなのお構いなしに、とある人の名前を烈央くんと星守くんに言うと、二人も「なるほど!」と頷いてくれる。
鈴葉様だけが名前ではピンと来ていないらしく「なんじゃ、なんじゃ!?」と、戸惑っていた。
私は鈴葉様様にニコリと笑いかける。
「会いたかった女の子にもうすぐ会えますよ、鈴葉様!」
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