あやかし達の送り屋をやっています! 〜正反対な狐のあやかし双子との出会い〜

巴藍

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第三章 小さな神様の、探し人

20話

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 次の日。
 私たち三人は朝から、鈴葉すずは様の言っていた女の子を探していた。
 まずは下駄箱で、登校してくる子を一人一人見ていく。

 鈴葉様が言っていた特徴は、肩につかないくらいのボブヘアで優しそうな女の子。
 それともう一つ思いだしたそうで『左目の涙袋にホクロがあったぞ!』と、学校に行く前に祠へ寄った際に教えてくれた。

「──あ、あの子はどうかなっ!」
「うん? ……ホクロがないから、違うみたいだ」
「まーた違うじゃん。ちゃんと見てるの~結花」
「むぅ、ちゃんと見てもん」

 文句を言ってくる星守くんは、下駄箱の近くにある椅子に座って足をぷらぷらさせている。
 そっちこそ、ちゃんと見てないんじゃん!
 って言いたい。
 ……けど、本当はちゃんと見ているから、星守くんに文句が言えないんだよね。

 烈央くんはと言うと。
 頬を赤くそめながら近寄ってくる女の子たちに、ニコリと笑いかけながらも探している子かどうか素早く確認している。
 ちなみに星守くんにも、たくさんの女の子が視線を送ってるけど、ムスリとした顔をしてるから話しかけづらいみたい。

 探し始めて数十分が経った。
 登校してくる子も少なくなって、ついに最後の一人であろう子が教室へ向かっていってしまう。
 
「……居なかったね、鈴葉様が言う女の子」
「誰かさんのせいで登校するのが遅れて、俺たちが来る前に登校していた子も沢山いたからね。また昼休みに探してみよう、結花ちゃん」

 誰かさん、とはきっと星守くんのことだ。
 学校に行く前に祠に行った際、また星守くんが鈴葉様と言い合いになって……あれ止めるのには本当に苦労したよ。
 星守くんは、烈央くんのチクリと刺さる言葉に気づいていないフリをしているのか、キリリとした表情で頷いている。

「ボブヘアとかが、鈴葉の記憶違いだったらボク怒るからね。……サイズも丁度いいし、てるてる坊主みたいに飾ってあげようかな?」

 さらりと怖いことを言う星守くん。
 鈴葉様っ、逃げて……!

「──あら結花ちゃん? こんなところで、なにをしてるのかしら。そろそろ朝の会が始まるわよー」
「あ、佐藤先生!」

 ふわりと笑って話しかけてきた佐藤先生は、保健室の先生。
 優しい先生で、学年問わずみんなが大好きな先生だ。
 佐藤先生はおしゃれな老眼鏡ろうがんきょうをかけていて、たまに失くすからみんなで探すこともしばしば。

「そっちの二人は……ふふ、ウワサの烈央くんと星守くんね?」
「ウワサ?」

 星守くんが不思議そうに首をかしげた。
 ……佐藤先生が言ったウワサ、私、わかるかも。

「とってもカッコいい双子の転校生が来たって、保健室に来た女の子たちがみんな言うのよ? だから名前を覚えちゃったわ」

 うふふ、と笑う佐藤先生。
 星守くんは興味なさそうに「ふーん」と返した。
 烈央くんはウワサを知っていたのか、苦笑い。
 そんな二人を優しい目で見ていた佐藤先生は、ふと腕時計を見て慌てはじめた。

「もうこんな時間。ほら三人とも、はやく教室に戻りなさいな」
「はい!」
「はい」
「はーい」

 ひらひらと手を振る佐藤先生を見送って、私たちも五年一組の教室へ戻る。

◆◆◆◆◆

 教室に入ってすこしすると、夏目先生がやってきて朝の会が始まった。
 そして国語、算数、理科、社会……。
 私にとっては、午前中から地獄のような組み合わせですごく疲れちゃった。
 元気を取り戻すためにも給食をたくさん食べて、昼休みに女の子探しを再開。
 ……でもやっぱり、見つからなかった。

 昼休みが終わり、午後の授業が始まって「明日も女の子を探さなきゃ……」と、ぼーっと考えていたら急に背中がモゾモゾとしてくる。

 ──んんっ? かゆいし、くすぐったい!
 ソレはどんどん上に登ってきて、ついに首元がモゾモゾしはじめた。
 そして……ソレは首元からも移動して、肩にナニカが乗った感触がする。
 
『元気にしておるか、結花』

 ──って鈴葉様!?
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