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第三章 小さな神様の、探し人

17話

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「たしかに、あやかしっぽい感じはないね。誰かが結花ちゃんを導いている気はするけど……」
「誰かが、私をこの裏山に?」

 ぐるりと視線をめぐらせた烈央くんは、とある一点を見て足を止めた。
 と同時に私の足も止まる。
 さっきまで自分の体なのに、手足に感覚がまったくなかったけどじわりと体温が戻ってきた。

 なんだか、体がすごく疲れた感じがする。
 校庭を何周も走ったくらいの疲労感だ。

「──あそこを見てごらん、二人とも」

 烈央くんが指差した先にあるのは、……小さなほこらだ。
 さっきまでは草木が生い茂っている、道なき道を進んできたけどそれを抜けた先にあるひらけた場所に、ポツンと祠はあった。

 ……お世辞にも綺麗とは言えなくて。
 屋根の一部がなかったり、苔むしていたり、かなりボロボロになっていて年月を感じる。

「祠……。烈央くん、さっき私が導かれてるって言ってたよね。その場所がこの祠なの?」
「多分……そうだと思う」
「じゃあ私、手を合わせておこうかな」

 神様がまつられているかもしれないし、と言ったら烈央くんに「ダメだよっ」と止められてしまった。

「どんな神様が祀られているかわからない以上、人間にとってよくない神様かもしれない。むやみに小さな祠へ手を合わせて、お祈りはしちゃいけないよ結花ちゃん」
「そーそー。結花なんて、すぐに食べられちゃうんだからね?」

 パクリ、と手を口のように見立てて脅かしてくる星守くん。
 烈央くんも同じように手を動かして、二人で私を怖がらせようとしてきた。

「わ、わかった! わかったから、それやめてー!」

 二人はクスクス笑いながら、手を引っこめる。
 もうっ、二人は変なところで息ぴったりな部分を見せてくるんだから!

 ……でも二人が止めてくれなかったら、祠に手を合わせていたかもしれない。
 どんな神様がいるかわからないし、もしかしたらたたり神かもしれなかったよね。
 危なかった……と胸を撫でおろす。

 ──その時。

『なんじゃと!? わらわと言いたいのか無礼者めぇ!』

 どこからか声がした。
 びっくりして、私たちは顔を見合わせる。
 きょろきょろと周りを見ても、誰もいない。

「ひぃ、まさか幽霊……?」
『わわわわらわが幽霊!? ──ほんっっとうに、無礼者じゃのお主らは!?』
「ひゃあ!? また声がした!」

 声がした方向は、あの小さな祠からな気がした。
 烈央くんと星守くんが怖がる様子もなく祠の方に行くから、私もその少し後ろをついていく。

『妾はここじゃ!』

 ぴょこり、と祠の陰から出てきたのは小さな女の子。桃色の派手な着物を着ている。
 可愛らしい手のひらサイズの女の子は「えっへん」と、腰に手を当てて私たちを見上げた。

『よく来たのぅ、子供たちよ』
「烈央くん、星守くんっ! お人形さんみたいな子が喋った!」
「なーに? このちっこいの。片手で潰せそう」
「星守、潰しちゃダメだよ。こんなに小さいからって」
『ええいっ! 妾だって喋るわい! 小さいのには理由がちゃんとあるわ! というかさっきから、頭が高いぞお主らはぁぁ!?』

 プンスカと怒り出した小さな女の子。
 小さいながら、その迫力はすごくて私たちはピタリと喋るのをやめる。
 怒るのをやめた女の子はキリッとした表情で、私たちに向かって指をさした。
 
『──まずはそこに並んで座るのじゃ、子供たちよ!』

 ……も、もしかしてこの子、偉いあやかしだったりするのかな?

 私たちはとりあえず言われた通りに並んで座り、この小さな女の子のお話を聞くことになった。
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