あやかし達の送り屋をやっています! 〜正反対な狐のあやかし双子との出会い〜

巴藍

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第三章 小さな神様の、探し人

16話

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「それではみなさん、気をつけて帰ってくださいね。さようなら」
『さようならー!』

 帰りの会が終わり、みんなの元気な声が教室に響くいつもの風景。

 のっぺらぼうが隠世かくりよに帰って行ったあと、学校ではパタリと『一人増える』ウワサを聞かなくなった。
 最近の五年一組は、学校の近くにカラスの集団が現れた……なんていう話題で持ちきり。
 ちょっと、それも気になっちゃうけど……!

 こほん。
 ぞろぞろとみんなが教室を出ていく。
 私も帰ろうと、立ち上がってランドセルを背負った。
 今日は私の家で烈央くんと星守くんと、三人で送り屋の作戦会議だ。
 ……と言っても、ただおやつを食べてグダグダすることになりそうだけどね。

「うわあっ!?」

 ──クルンッ!

 な、なに!?
 いきなり体が、クルリと華麗に一回転をした。
 ……私の意思じゃなく、勝手に!

 急に私が大きな声を出したからか、星守くんが片耳を塞いで、むすりと頬をふくらませながら私を見た。
 烈央くんはきょとんとしている。

「ちょっとー、急に大きな声を出さないでよねっ」
「どうかしたの結花ちゃん。急に一回転なんてして」
「あのねっ! か、体が勝手に動い──ぎゃあっ!?」

 今度は右足が勝手に一歩を踏み出して、ぐらりと上半身がかたむく。
 でもギリギリのところでバランスを保って、転ばずにすんだ。
 自分の体に何が起こっているのかわからないし、二人になにも説明ができないよ!

「ちょっと待って結花、一緒に帰るんでしょっ?」
  
 星守くんの声を背中で聞きながら、私の体はズンズンと教室前方にある扉へと向かっていく。 
 扉の横で一人一人に手を振っていた夏目先生が、私を見てびっくりしていた。

「すいぶん急いでいますね、気をつけて──」
「さようならーっ、夏目先生!」

 止まらずに、ビュンッ! と夏目先生の前を一秒で通り過ぎていく私の体。
 後ろから「さようなら! また明日、結花ちゃんー」と声が聞こえる。

 ……ごめんなさい夏目先生!
 いま私の体は、勝手に動いているんです!
 ガシャンガシャンとロボットのようにぎごちなく動く私の体は、教室を出て廊下を歩いていき、ついに階段にたどり着いた。

「へ──っ」

 一歩を踏み出して、二歩目が出た瞬間。

「いぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁ!?」

 体がものすごいスピードで階段を下りはじめた!

 もう絶対に転ぶ! って思うくらい、ダダダダッ! と勢いよく階段を駆け下りていく。
 悲鳴を聞いた他の子たちがふり返って、猛スピードで階段を下りてくる私を見ると、ぎょっとしながら階段の端によけていく。

 恥ずかしいから目を合わせないように、きゅっと目を閉じてみるけど視界ゼロの方が怖くて、結局目を開ける。
 階段を下りたら下駄箱で靴をはきかえて、とうとう校舎の外に出てしまった。

「私の体、どこまでいくのっ!?」

 校門を出て、右に行けばいつもの帰り道。
 ……でも体は、道を左へ曲がっていく。
 そっちには学校の裏山に続く細い道がある。

 裏山はいつも先生たちに、入っちゃダメって言われている場所だ。
 小さな山だけど、迷子になったりすると危ないから。
 私も学校の避難訓練で行ったくらいで、一人で裏山に入ったことはない。
 だから道なんてわからないし、もしこのまま迷子になったらどうしよう……と怖くなったその時。

「──結花ちゃん!」
「もう結花、どこまで行ってるのさ!」
「烈央くん! 星守くん!」

 ランドセルを背負った二人は、軽い足取りで私の隣にやってくる。
 私が歩くスピードに合わせながら、星守くんがジト目で見てきた。

「まったく、急に走っていくと思ったら。どうして裏山なんかに登ってるのさ」
「私もわからないよ! さっきから体が勝手に動いてて……これってもしかして、あやかしの仕業だったりする?」
「うん? そんな気配はしないけど……。烈央はどう思う」

 烈央くんはあごに手を当てて「うーん」と悩んだ。
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