あやかし達の送り屋をやっています! 〜正反対な狐のあやかし双子との出会い〜

巴藍

文字の大きさ
上 下
14 / 53
第二章 ウワサの"のっぺらぼう"を捕まえろ!

14話

しおりを挟む
 模様が眩しいほどに光ったと思えば、床からポンッ! と本物の狐が出てきた。

「へ…………か、可愛い~!?」

 小さくて真っ白なお狐さん。
 きゅるるんと大きな瞳に、大きなしっぽがふわふわと左右に揺れている。
 くぅぅ、すっごく可愛い!
 私がはぁはぁと息を荒くして狐さんを見ていたら、烈央くんから魅力的なお誘いが。

「触ってみるかい?」
「いいの!? 触りたいっ!」
「うん。ほら、あんこ。結花ちゃんが、可愛がってくれるって」
「はぁはぁ、可愛いっ! 狐さん……!」

 手をワキワキさせて、狐さんに近づく。
 でも狐さんはプルプルと震えて、星守くんの後ろに隠れてしまった。

「そんなっ、狐さん!」
『せ、星守様ぁ! あの人間の娘は何ですか!? はぁはぁ言っていて、怖いです!』
「き、狐さんが喋った!?」

 びっくりしたけど、口をパクパクさせて喋っている姿が……うん、とても可愛らしい。
 星守くんが私と狐さんを見比べて、ニヤリと笑った。
 うん? なんだか嫌な予感。

「あんこ、おいで~」

 く~ん? と首を傾げて、星守くんを見上げる狐さんの姿もすごく可愛い。
 星守くんは狐さんを抱き上げた。
 そのまま私の目の前にくる。
 も、もしかして、私にも抱っこさせてくれるのかなっ?

 ……なんて、私の淡い希望はすぐに砕け散った。
 星守くんは見せつけるように、……狐さんのもふもふのお腹に顔を押しつけたのだ!

「ふふ。ボクがうやらましい? 結花」
「~! ずるいよ星守くん!」

 きぃぃ、と私は歯を噛みしめる。

「こら、星守。結花ちゃんにも、あんこを紹介してあげなよ」
「わかってるって。ちょ~っと、からかっただけだもん」

 ん、と星守くんは狐さんを私に渡してくれた。
 狐さんは星守くんから離れる時、すごく暴れたけど、どうにか落とさないように受けとる。
 ……狐さんの体にしずんだ指先から、もふりとたまらない感触が。

『ひぇぇぇぇ! どうみても様子がおかしいですよ、この娘はぁぁぁぁ! 星守様の裏切り者ぉぉぉ!!』
「うるさいなぁ、もう。それならボクだけじゃなくて、烈央も同罪でしょぉ?」
 
 落ち着いてもらいたくて、狐さんを優しく抱きしめる。
 次第に暴れるのをやめて大人しくなった。
 それでもまだプルプル震えている。
 怖くないよとゆっくり、やさしく頭を撫でると気持ちよさそうに目を細めた。
 もふり、と手がしずむ毛の多さとほのかに香るお日様の匂い。
 なんて……なんて可愛いのー!

「狐さんっ、私の名前は長月結花です。あなたのお名前は?」

 恐る恐る、と言った感じで私を見上げる狐さん。
 うぐ、その上目づかいがとっても可愛い。

『ワ、ワタクシはあんこと申します。結花様』
「なんて呼べばいいかな? あんこ……くん? ちゃん?」
『どちらでもお好きな方をどうぞ。一応ワタクシは、オスでございます』
「じゃあ、あんこくんで! よろしくね、あんこくん」

 ぎゅうっと抱きしめると「うぎゅ」と、苦しげな声が聞こえた。

「わわ、ごめんねあんこくん! 痛かった?」
『いえ、びっくりしただけでございます! ……結花様はなんというか、甘い匂いがしますね』

 くんくん、と私の匂いをかぐあんこくん。

「ふふ、くすぐったい」
『仕返しでございます』
「ふ、んふふ、あははっ! もうやめて~!」

 あぁ、最高すぎる!
 可愛いあんこくんと遊んでいると、さっきの恐怖はどこかへ吹っ飛んでいった。

「──やけに熱心に見てるね、星守?」
「はぁ!? れ、烈央こそ見てるじゃん!」
 
 なにやら双子が言い合いをしている。
 あんこくんがポンッと私の腕を叩いたから下ろしてあげると、烈央くんの元へトコトコ歩いていった。
 ゆらゆらと揺れるしっぽも、すごく可愛い。
 烈央くんは、足元にやってきたあんこくんの頭を撫でる。

「よし。のっぺらぼうを隠世かくりよに連れて行って、あんこ」
『ハイ、烈央様! かしこまりました!』

 あんこくんは床から出てきた時と同じように、パアァと光った。
 眩しさに目を閉じて、光がおさまってから目を開けると、あんこくんの何倍も大きな狐さんがちょこんと座っていた。

 きりりとした顔はカッコよくて、なんだか強そうだ。
 でもコテンと首を傾げる仕草は、さっき見たあんこくんそのもの。

「まさか……あ、あんこくん?」
『ハイ、そうですよ。結花様』
「あんこくん、おっきくなれるの!?」
『これがワタクシの本来の姿なのです』

 えっへんと言わんばかりに、ツンと上を向くあんこくん。
 大きくなったあんこくんは、おすわりをしていても私より背が高い。

「あんこはね、俺たち朝霧あさぎり家に代々仕えている天狐なんだ」
「てんこ?」
「天気の天に狐で、天狐。特別な力を持ったあやかし──って感じかな」
「へぇ! あんこくんって、すごいんだね?」

 大きくなったあんこくんの頭には手が届かないから、胸元あたりの毛をわしゃわしゃとすると、嬉しそうにしっぽを揺らした。
 上機嫌なあんこくんは、パクリとのっぺらぼうを口にくわえたかと思えば、ポイっと宙に投げる。

「あんこくん!? なにして……」

 クルクル回って落ちてきたのっぺらぼうは、ちょうどあんこくんの背中に乗った。

「す、すごい! あんこくんったら天才なの!?」
『ほ、ほめすぎです結花様~』

 そう言いながらも、嬉しそうなあんこくん。
 私もつられて嬉しくなる。

「……ねぇ烈央。さっきから結花の、あんこへの態度がボクらと違くない? なんであんこにだけ、優しいのさ」
「星守が結花ちゃんに意地悪するからじゃない? 俺はあんこと同じように接してもらっているよ」
「──なにそれ、ズルくない?」
「あのな星守。俺がいま、なんて言ったか聞こえてた?」
「なにって……、あれ? なんだっけ」
「はぁ。そういうところだよ」
「ちょっと! 詳しく教えてよ、烈央!」
「ねぇ二人とも、なんの話をしてるの?」

 顔を突き合わせて、コソコソと話している二人に話しかける。
 すると二人は息ピッタリに「なんでもない」と声を揃えて言った。

 ……さすが双子、すごいシンクロ率だね?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。

桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。 山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。 そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。 するとその人は優しい声で言いました。 「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」 その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。 (この作品はほぼ毎日更新です)

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

モブの私が理想語ったら主役級な彼が翌日その通りにイメチェンしてきた話……する?

待鳥園子
児童書・童話
ある日。教室の中で、自分の理想の男の子について語った澪。 けど、その篤実に同じクラスの主役級男子鷹羽日向くんが、自分が希望した理想通りにイメチェンをして来た! ……え? どうして。私の話を聞いていた訳ではなくて、偶然だよね? 何もかも、私の勘違いだよね? 信じられないことに鷹羽くんが私に告白してきたんだけど、私たちはすんなり付き合う……なんてこともなく、なんだか良くわからないことになってきて?! 【第2回きずな児童書大賞】で奨励賞受賞出来ました♡ありがとうございます!

ぬらりひょんと私

四宮 あか
児童書・童話
私の部屋で私の漫画を私より先に読んでいるやつがいた。 俺こういうものです。 差し出されたタブレットに開かれていたのはwiki…… 自己紹介、タブレットでwiki開くの? 私の部屋でくつろいでる変な奴は妖怪ぬらりひょんだったのだ。 ぬらりひょんの術を破った私は大変なことに巻き込まれた……

処理中です...