あやかし達の送り屋をやっています! 〜正反対な狐のあやかし双子との出会い〜

巴藍

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第二章 ウワサの"のっぺらぼう"を捕まえろ!

13話

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 烈央くんがゆっくりと鞘から刀を抜く。
 全部抜き終わると、キラリと光った刀身に青い炎がまとわりついた!

 あまり見ることがない青い炎。
 たしか前にテレビで、青い炎は赤い炎よりずっと熱いって聞いたことがある。
 目の前でおきている出来事が、ちっとも現実味がない。
 熱いはずの炎をまとった刀を持っていても、烈央くんは涼しい顔をしている。
 ……烈央くんはあやかしなんだって、改めて思った。

「──焼き尽くせっ、狐火きつねび!」

 烈央くんが刀身に青い炎をまとわせた刀で、のっぺらぼうに切りかかる!
 でもその刀はのっぺらぼうじゃなくて、のっぺらぼうの手足に巻きついている黒い炎の縄をたち切った。
 
『ぎゃぁぁぁあああああ!!』

 大きな悲鳴をあげたのっぺらぼう。
 怖くなった私はぎゅっと目を閉じて、両手で耳を塞いだ。
 それでもかすかに悲鳴が聞こえてくる。
 星守くんが私を守るように、抱きしめてくれた。

 悲鳴が聞こえなくなって、そっと顔を上げる。
 のっぺらぼうに巻きついていた炎の縄が消えて、支えを失ったのっぺらぼうは床に倒れこんでいた。
 カチャン……と金属の音が聞こえて、それは烈央くんが刀を鞘に収めた音だと分かる。
 ふぅと息を吐いた烈央くんは、私たちのそばに戻ってきた。

のっぺらぼうは、瘴気にあてられて凶暴化していたみたいだね」
「……瘴気って、封鬼ふうき小学校に封印されている鬼からあふれ出ている『悪い空気』のこと……だよね?」
「うん、よく覚えていたね。すごいよ結花ちゃん」

 やわらかい笑みを浮かべて、ほめてくれた烈央くん。

「それにしても……結花ちゃん、いきなり戦闘になってごめんね。怖かっただろう?」
「うん……怖くなかったって言えば嘘になるけど、むしろ私、邪魔してないか心配になっちゃった」
「烈央が烈火れっかを使う時、結花が飛び出して行かないようにボクが見張ってたから、大丈夫だよ」

 ……そんな、私を犬みたいに言わないでよ星守くん!
 むぅ、とジト目で星守くんを見ると口笛を吹いて知らん顔。
 コホンと烈央くんの咳が聞こえてきたから、私はぐっとこらえて星守くんを見るのをやめた。

「あのね。実は今日、学校に来てからずっとがしていたんだ」
「あ、ボクも思ってた。肌にまとわりつく、イヤな感じでしょ~」
「え、嫌な気配? ……私、全然わからなかった」
「あやかしなら感じる程度のものだったから、気にしないで。それにもう一つ疑問があって、普通ののっぺらぼうなら人をおどかす程度で、顔を取られる……なんて噂は出回らない。だから俺は、瘴気で凶暴化しているんじゃないかと思ってたんだ」

 烈央くんはちらり、と倒れているのっぺらぼうに視線を向ける。
  
「放課後。三階に俺たち三人だけになった途端より一層、嫌な気配が強くなった。だから俺は鬼役になって、二人を探しながら廊下や教室に攻撃札を貼ったり、罠を仕掛けていたんだ。鏡の布も、俺だよ」

 のっぺらぼうは鏡で自分の顔を見るとひるむらしい。
 さっきの様子を見ていたら、鏡を見てひるんでしまうのは顔が……がない事実を認めたくないからなのかな、と思った。

「あ、そうだ。私、星守くんの炎の縄? とか烈央くんの刀とか! すごくびっくりしちゃった。あの炎、熱くないの?」
「ふふ、狐のあやかしの俺たちは狐火なら熱くないよ」
「さすがに普通の炎は熱いけどね~」
「星守は凶暴化したあやかしの動きを止める、結界術が使えるんだ。捕まえたあやかしが体に瘴気を溜めこんでいたら、星守の赤い炎が黒く染まる。瘴気を吸い取ったその炎を俺がこの烈火で断ち切れば、あやかしは元に戻るんだよ」

 星守くんがあやかしを捕まえて、烈央くんが倒す。双子らしい見事な連携技だった。

「二人が一緒にいなきゃ、瘴気によって凶暴化したあやかしは元に戻らないの?」
ねー。もちろん、一人で出来る送り屋のあやかしもいるよ」
「あやかしによって、使える術や武器は様々なんだ。あやかしの数だけ、瘴気の除去方法が存在する」
「ボクたちは双子だからなのか、二人でいる方が強いんだよ」

 なるほど、烈央くんと星守くんは二人で一つなんだ。
 一人っ子の私からすると、兄弟がいるってちょっとうらやましい。

「ま、瘴気のくらい覚えてなきゃ、この先ボクたちの足を引っ張ることになるんだから。これくらいで、浮かれないでよねー? 結花」 
「むぅ。わかってるもん」
「勉強会でも開く? 百点取れなきゃ、結花のおやつはずっとボクのもの~」
「それズルくない!? 私になんの得もないじゃん!」
 
 また言い合いをはじめた私と星守くんを烈央くんはニコニコしながら見ている。
 なんだか私にとって星守くんはムチ、烈央くんはアメのように思えてきた。

 ……星守くんの言う通り、送り屋のお手伝いをする限り、二人の足を引っ張りたくはないから色々と覚えていかなきゃ。
 私だって、役に立ちたい気持ちはあるんだから。

「さて、後片付けをしようか」

 烈央くんの言葉に、私たちの視線は床に倒れこんでいるのっぺらぼうへ。
 この前音楽室で見かけたあやかしは二人に怒られた後、自分の足で隠世かくりよへの門をくぐって行った。

 でものっぺらぼうは意識がないみたい。
 私たちが担いで移動させるしかないのかな?

「──おいで、

 烈央くんがそう言うと、ブウゥン! と床に狐の模様が浮かび上がった。
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