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第二章 ウワサの"のっぺらぼう"を捕まえろ!
11話
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「ほら、舌を噛むといけないから。しー、だよ」
あぁ、もう! どうしたらいいの?
どうにかして、烈央くんから離れる方法はないかと視線をめぐらせれば、いつの間にか階段の所まで来ていた。
このままじゃ本当に星守くんを置いて帰ってしまう!
「烈央く……」
『──待て!』
私は烈央くんの顔を見上げる。
さっきまでやわらかい笑みを浮かべていたのに、なぜか表情がストンと抜け落ちていて。
怖い、と思うくらい無表情の烈央くん。
さっきの声は聞き……間違えだと思った。
だって私と烈央くんの後ろから、烈央くんの声が聞こえたから。
いま喋ったのは本当に、私をお姫様抱っこしている烈央くんのものだったのだろうか?
「れ、おくん?」
無表情のまま私を見下ろした烈央くんは、くるりと体の向きを変えた。
向いたのは、さっき声がした方向。
廊下に立っている人物を見て、私は息をのんだ。
だって──
「烈央くんが、二人……!?」
もう一人の烈央くんが廊下に立っていた。
私たちから離れた場所にいる烈央くんは、上履きを履いている。
さらにぴょこんと、狐の耳としっぽが出ていた。
怒っているのか、ふわふわのはずのしっぽは逆立っている。
あやかし姿の烈央くんは、私を見て目を細めた。
そして視線をずらして、私をお姫様抱っこしている烈央くんをにらむ。
「……結花ちゃんを離せ、ニセモノ」
「このオレがニセモノだって? ふふっ、面白いことを言う。ねぇ、ユカちゃん?」
そう問いかけてくる烈央くんの声は、ひやりと冷たい。
間違いない……この烈央くんはニセモノだ!
「いやっ、離して!」
『おっと。急に暴れたら危ないだろう? ユカちゃん』
ニセモノの烈央くんの声が急に、ぐわんと反響して聞こえる。
身体をひねって抜け出そうとするけど、ぎゅうっと強い力で拘束されておりられない。
どうしよう!
どうやって逃げたらいいの!?
──そうだ、お守り!
私はお守りを服の上から握りしめて、「どっかに行って!」と念じる。
これで、私からのっぺらぼうは離れるはず!
「……どうしてっ? なんで、なにも起きないの!?」
『ふふっ、あはははっ!!』
急に笑い出したニセモノの烈央くん。
それが怖くて、ひぃと声をもらせばグッと顔を近づけられた。
こてん、と首を傾げるニセモノの烈央くん。
『怯えてるの?』
「いやぁっ……」
『……ああ可愛いね、ユカちゃん。美味しそうだ』
──どろり。
ニセモノの烈央くんの顔が溶けていく。
そして顔のパーツがひとつもない、のっぺりとした顔になった。
……のっぺらぼうが正体をあらわした!
いまでさえ近いのに、さらに顔が近づいてくる。
まるで私の顔にその、のっべりとした顔を重ねるように……。
「結花から離れろ! のっぺらぼう!」
──ドンッ!!
強い衝撃と共に、私の体が宙を舞う。
すぐさま本物の烈央くんが、私をキャッチしてくれた。
解放された安心感で涙が出そうになる。
でもそんな場合じゃないと、我慢。
さっき聞こえた声は、烈央くんのものじゃなかった。
ニセモノの烈央くん……いや『のっぺらぼう』に後ろから体当たりをしたのは──星守くんだ!
助けに来てくれた星守くんもキツネの耳としっぽが出ていて、本来のあやかし姿になっていた。
いま私たちの位置関係は私と烈央くん、そして星守くんで、のっぺらぼうを挟みこむような形になっている。
吹き飛ばされたのっぺらぼうは、ゆらりと立ち上がった。
手足に力が入っていなくて、両腕がぶらぶらと揺れている。
その姿はまるでホラー映画の幽霊みたいで、見るだけでゾワリと鳥肌が立つ。
『痛ったいなぁ。……なにしてくれるんだよ、セラ』
「はぁ? ボクの方が肩が痛いんだけど。あとさ、勝手に名前を呼ばないでくれる? ニセモノ」
『ふふっ。反抗期かい?』
「その腹の立つ言い方は烈央そっくりだね。そこだけは、褒めてあげるー」
口がないのに、のっぺらぼうはどうやって喋っているんだろう?
と、場違いな疑問が浮かんでいると、それがわかったのか星守くんが私の方を見てビシッと指を突きつけた。
「まったく。のっぺらぼうなんかに捕まってんじゃないよ、おバカ結花!」
「ひぇ! ご、ごめんなさいっ!」
星守くんのあまりの怖さに、反射的に謝る。
……って、なんで私が星守くんに謝ってるの!?
たしかに捕まっちゃったけど、でもそれには事情があって……!
んん? あれ、私が悪いのかな?
わからなくなってきちゃったっ……!
あぁ、もう! どうしたらいいの?
どうにかして、烈央くんから離れる方法はないかと視線をめぐらせれば、いつの間にか階段の所まで来ていた。
このままじゃ本当に星守くんを置いて帰ってしまう!
「烈央く……」
『──待て!』
私は烈央くんの顔を見上げる。
さっきまでやわらかい笑みを浮かべていたのに、なぜか表情がストンと抜け落ちていて。
怖い、と思うくらい無表情の烈央くん。
さっきの声は聞き……間違えだと思った。
だって私と烈央くんの後ろから、烈央くんの声が聞こえたから。
いま喋ったのは本当に、私をお姫様抱っこしている烈央くんのものだったのだろうか?
「れ、おくん?」
無表情のまま私を見下ろした烈央くんは、くるりと体の向きを変えた。
向いたのは、さっき声がした方向。
廊下に立っている人物を見て、私は息をのんだ。
だって──
「烈央くんが、二人……!?」
もう一人の烈央くんが廊下に立っていた。
私たちから離れた場所にいる烈央くんは、上履きを履いている。
さらにぴょこんと、狐の耳としっぽが出ていた。
怒っているのか、ふわふわのはずのしっぽは逆立っている。
あやかし姿の烈央くんは、私を見て目を細めた。
そして視線をずらして、私をお姫様抱っこしている烈央くんをにらむ。
「……結花ちゃんを離せ、ニセモノ」
「このオレがニセモノだって? ふふっ、面白いことを言う。ねぇ、ユカちゃん?」
そう問いかけてくる烈央くんの声は、ひやりと冷たい。
間違いない……この烈央くんはニセモノだ!
「いやっ、離して!」
『おっと。急に暴れたら危ないだろう? ユカちゃん』
ニセモノの烈央くんの声が急に、ぐわんと反響して聞こえる。
身体をひねって抜け出そうとするけど、ぎゅうっと強い力で拘束されておりられない。
どうしよう!
どうやって逃げたらいいの!?
──そうだ、お守り!
私はお守りを服の上から握りしめて、「どっかに行って!」と念じる。
これで、私からのっぺらぼうは離れるはず!
「……どうしてっ? なんで、なにも起きないの!?」
『ふふっ、あはははっ!!』
急に笑い出したニセモノの烈央くん。
それが怖くて、ひぃと声をもらせばグッと顔を近づけられた。
こてん、と首を傾げるニセモノの烈央くん。
『怯えてるの?』
「いやぁっ……」
『……ああ可愛いね、ユカちゃん。美味しそうだ』
──どろり。
ニセモノの烈央くんの顔が溶けていく。
そして顔のパーツがひとつもない、のっぺりとした顔になった。
……のっぺらぼうが正体をあらわした!
いまでさえ近いのに、さらに顔が近づいてくる。
まるで私の顔にその、のっべりとした顔を重ねるように……。
「結花から離れろ! のっぺらぼう!」
──ドンッ!!
強い衝撃と共に、私の体が宙を舞う。
すぐさま本物の烈央くんが、私をキャッチしてくれた。
解放された安心感で涙が出そうになる。
でもそんな場合じゃないと、我慢。
さっき聞こえた声は、烈央くんのものじゃなかった。
ニセモノの烈央くん……いや『のっぺらぼう』に後ろから体当たりをしたのは──星守くんだ!
助けに来てくれた星守くんもキツネの耳としっぽが出ていて、本来のあやかし姿になっていた。
いま私たちの位置関係は私と烈央くん、そして星守くんで、のっぺらぼうを挟みこむような形になっている。
吹き飛ばされたのっぺらぼうは、ゆらりと立ち上がった。
手足に力が入っていなくて、両腕がぶらぶらと揺れている。
その姿はまるでホラー映画の幽霊みたいで、見るだけでゾワリと鳥肌が立つ。
『痛ったいなぁ。……なにしてくれるんだよ、セラ』
「はぁ? ボクの方が肩が痛いんだけど。あとさ、勝手に名前を呼ばないでくれる? ニセモノ」
『ふふっ。反抗期かい?』
「その腹の立つ言い方は烈央そっくりだね。そこだけは、褒めてあげるー」
口がないのに、のっぺらぼうはどうやって喋っているんだろう?
と、場違いな疑問が浮かんでいると、それがわかったのか星守くんが私の方を見てビシッと指を突きつけた。
「まったく。のっぺらぼうなんかに捕まってんじゃないよ、おバカ結花!」
「ひぇ! ご、ごめんなさいっ!」
星守くんのあまりの怖さに、反射的に謝る。
……って、なんで私が星守くんに謝ってるの!?
たしかに捕まっちゃったけど、でもそれには事情があって……!
んん? あれ、私が悪いのかな?
わからなくなってきちゃったっ……!
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