あやかし達の送り屋をやっています! 〜正反対な狐のあやかし双子との出会い〜

巴藍

文字の大きさ
上 下
7 / 53
第一章 イケメン双子の転校生は、あやかしでした

7話

しおりを挟む
星守せらくん……」
「うん、星守のいうとおりだ。俺たちが送り屋をする上で必要な鍵はいま、結花ゆかちゃんの体の中にある。だから必然的に送り屋を手伝ってもらうことになるんだけど……そのかわり必ず君を守ると誓うよ。俺たちは強いからね」

 真剣な目で私を見る烈央れおくん。

 ……私は知っている。
 あやかしは、怖いあやかしだけじゃないってことを。
 河川敷にいるわた毛のあやかしは、仲の良い友達がいない私にとって、一年生の時から一緒に遊んだりしている仲だ。

 烈央くんと星守くん、二人が悪いあやかしだとは思えないし、送り屋の鍵を私が持っている限り二人はお仕事ができない。
 なにより……烈央くんと星守くんと一緒にいる方が安全な気がした。

 瘴気しょうきのことも、人間の私にはなにもわからない。
 あのがいつ凶暴化するかだってわからない。

「私、あやかしは見えるけどあやかしについて知らないことばかりで、役に立てるかわからないけど……。でも精一杯やるから、よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしく、結花ちゃん。……巻きこんでしまったのは俺たちの方だし、できる限りサポートするからね」
「まぁ、ボクの足を引っ張らない程度に手伝ってよね~結花」
「こら星守。またそんな意地悪なことを言う」

 星守くんはプイッとそっぽを向いて、狐のクッションを抱きしめてベッドにダイブした。
 そんな星守くんを見て、私と烈央は顔を見合わせて笑う。

「結花ちゃん」
「うん?」

 烈央くんはスッと手を差し出す。

「握手しないかい? これから一緒に頑張る仲間だし」

 ニコリと笑う烈央くんはカッコいい。
 自分の手に汗をかいていないか確認してから、私は手をのばした。

 ──ぎゅ。

「…………っ」
「烈央くん?」

 握手をすると、烈央くんは目を見開いて固まった。
 おーい、と顔の前を空いてる方の手でヒラヒラとやってみても、瞬きすらしない。

 もう一度呼ぶとパチリと目が合う。

「──ちょっとごめんね」
「へ」

 ──ぎゅうううう。

「れれれれ烈央くん!?」

 烈央くんが急にハグをしてきた。
 ふわりといい匂いがして、私の心臓がありえないくらいバクバクとうるさくなる。

「もぉ急に大声出さないでよ、結花──って烈央!?」

 ベッドにうつ伏せになっていた星守くんが、顔を上げてベッドから飛び上がる。

「……やっぱりだ」

 烈央くんはゆっくりと私から離れた。
 すぐさま私はサササッと、烈央くんから距離をとって部屋の隅で深呼吸をする。

 ──びっっくりした。ビックリした!!

 いい匂いがするし、優しく抱きしめてくるしなんだったの……!?
 烈央くんっ、自分がイケメンだからってそんなことしてたら、いつか女の子がキュン死しちゃうよっ?
 カッコいい烈央くんにハグされたら、心臓がもたないと思うから……!

「烈央、いまのはなにっ? 結花にハグなんかしちゃって……説明してよ!」
が回復したんだ」
「……はあ?」
「だから結花ちゃんに触れると、妖力ようりょくが回復したんだっ。抱きしめたら……、接する面が増えると回復する量も増えた」
「な、なに言ってんの、そんなバカなことある訳ないじゃん!」

 ぷりぷり怒った星守くんは、私の手をぎゅっと握る。

「……ホント、だ」
「せせせ星守くんまで! せめて握る時は言ってよっ、びっくりしちゃうじゃん!」
「はぁ? 別に結花も、勝手にボクの手を握ればいいじゃん」

 ──そんなことできる訳ないよ!
 二人は、恥ずかしさってものを知らないのっ!?

「ていうか結花、こんなすごい力を持ってるなら先に言ってよ」
「二人とも、さっきからなにを言ってるの? ようりょく? が回復するとか、なんとか……!」
「ごめん、先に言えばよかったね。俺たちあやかしは、術を使うのに自分のを消費して発動させるんだ。例えば、こんなふうに」

 烈央くんは手のひらに、ボウ! と小さな青い火の玉を出した。
 部屋の中ということもあり一瞬、火事にならないか心配しちゃったけど、烈央くんは炎を握ってすぐにかき消す。

「俺と星守は学校に通う時、人間に変化しているけどそれにも少量の妖力をずーっと使ってる。だから結構疲れるし、妖力も減っていくんだ」
「なる、ほど……?」
「ボクたちあやかしにとって、妖力は生命線なんだ。自然回復するけど、枯らすほど使ってしまえばこともあるんだから」
「ひぃっ、死んじゃうの……?」

 あやかしにとって必要不可欠な妖力を回復するって、……すごいことなんじゃ?

 部屋の中が、しーんと静まり返る。
 私たち三人は顔を見合わせた。
 そして烈央くんと星守くんが、神妙な面持ちで私を見る。

「結花ちゃん。──君はすごい人間かもしれない」


『あの日』から、あやかしが見えることを誰にも言わないって決めていた。
 でもあやかしの転校生がやってきて、不思議な鍵が私の体の中に入って……訳がわからないことが立て続けに起こった結果。


 ──長月結花、十歳。
 あやかしの妖力を回復させる力が発覚して、あやかしイケメン双子の友達ができました……?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1、ブザービートからはじまる恋〜

おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
 お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。  とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。  最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。    先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?    推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕! ※じれじれ? ※ヒーローは第2話から登場。 ※5万字前後で完結予定。 ※1日1話更新。 ※第15回童話・児童書大賞用作品のため、アルファポリス様のみで掲載中。→noichigoさんに転載。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

妖精の風の吹くまま~家を追われた元伯爵令嬢は行き倒れたわけあり青年貴族を拾いました~

狭山ひびき@バカふり200万部突破
児童書・童話
妖精女王の逆鱗に触れた人間が妖精を見ることができなくなって久しい。 そんな中、妖精が見える「妖精に愛されし」少女エマは、仲良しの妖精アーサーとポリーとともに友人を探す旅の途中、行き倒れの青年貴族ユーインを拾う。彼は病に倒れた友人を助けるために、万能薬(パナセア)を探して旅をしているらしい。「友人のために」というユーインのことが放っておけなくなったエマは、「おいエマ、やめとけって!」というアーサーの制止を振り切り、ユーインの薬探しを手伝うことにする。昔から妖精が見えることを人から気味悪がられるエマは、ユーインにはそのことを告げなかったが、伝説の万能薬に代わる特別な妖精の秘薬があるのだ。その薬なら、ユーインの友人の病気も治せるかもしれない。エマは薬の手掛かりを持っている妖精女王に会いに行くことに決める。穏やかで優しく、そしてちょっと抜けているユーインに、次第に心惹かれていくエマ。けれども、妖精女王に会いに行った山で、ついにユーインにエマの妖精が見える体質のことを知られてしまう。 「……わたしは、妖精が見えるの」 気味悪がられることを覚悟で告げたエマに、ユーインは―― 心に傷を抱える妖精が見える少女エマと、心優しくもちょっとした秘密を抱えた青年貴族ユーイン、それからにぎやかな妖精たちのラブコメディです。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

リュッ君と僕と

時波ハルカ
児童書・童話
“僕”が目を覚ますと、 そこは見覚えのない、寂れた神社だった。 ボロボロの大きな鳥居のふもとに寝かされていた“僕”は、 自分の名前も、ママとパパの名前も、住んでいたところも、 すっかり忘れてしまっていた。 迷子になった“僕”が泣きながら参道を歩いていると、 崩れかけた拝殿のほうから突然、“僕”に呼びかける声がした。 その声のほうを振り向くと…。 見知らぬ何処かに迷い込んだ、まだ小さな男の子が、 不思議な相方と一緒に協力して、 小さな冒険をするお話です。

処理中です...