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第一章 イケメン双子の転校生は、あやかしでした

4話

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 烈央れおくんは、素早く手を引っこめる。

「烈央、大丈夫っ!?」
「烈央くんっ!」

 星守せらくんは烈央くんに駆け寄って、怪我をしていないか手を見ようとする。
 烈央くんはふるふると首を振って、大丈夫だとアピールをした。

「大丈夫。ちょっとピリってしただけだよ。それにしても、いまのはいったい……」

 自分の手を見て驚いている烈央くん。 
 何も喋らなくなってしまった烈央くんを見て、星守くんは目を吊りあげながら私をにらんだ。

「ちょっと! アンタ、結花ゆかって言ったよね。その鍵、返してくれる? ボクたちにとって大事なものなんだから!」

 星守くんはそう言うと、まだぷかぷかと浮いている鍵に触れようとする。
 ──バチバチバチッ!!
 またしても、静電気のようなものが鍵から放たれて星守くんを拒んだ。

「きゃあ!」
「っ、ボクも触れない……! なんで!?」

 信じられない……と言った様子で、星守くんも自分の手を見つめた。
 烈央くん、星守くんと来たら今度は私の番……だよね?

 二人が無理だったのに、私が触れる気がしない。
 それに私にもバチバチと静電気が走ったら、と思うとすごく怖い。

 ……でもやるしかない、よね。
 また私の体の中に鍵が戻ってきたら、その方が何倍も怖いもん!
 やる前からダメそうだと思いながらも、私は鍵に手を伸ばした。

 そーっと、人差し指を鍵に近づける。
 そーっと、そーっと。

 ……ちょん。

「──あれ? 触れ、ちゃった?」

 二人みたいに静電気のような物がバチバチする訳でもなく。
 ええっ、普通に触れちゃったよ?

「はぁ!? なんでボクたちが触れないのに、結花は触れてるのさ!」
「そんなこと言われても、私もわかんないよっ!」

 鼻息を荒くしながら、鍵をぎゅっと握って星守くんと見つめ合う。
  というか、一方的ににらまれているっ。

「星守、結花ちゃん。言い合うのはやめてくれ」
「烈央っ」
「……ご、ごめんなさい」

 烈央くんにそう言われて、おとなしくなる私と星守くん。
 その様子がおかしいのか、くすくすと烈央くんが笑う。

 そして笑われたのが嫌だったのか、ムッとしながら星守くんが私を見てきた。
 なんだか負けられない気がして、私も頬をふくらませて星守くんを見つめる。

「……あのさ二人とも、仲良くしてるところ悪いんだけど」
「はぁ!? 仲良くなんてしてないし!」
「そうだよっ! 私はただ、星守くんが見てくるから負けられないって思って……!」
「負けられないってなにさ! アンタみたいなドジに、ボクが負けることなんか一つもなさそうだけどね!」
「ド、ドジっ? 私、ドジじゃないもん!」
「さっき、音を立ててたじゃん。覗き見してたのかなんなのか知らないけど、音を立てるなんてドジでしょー。スパイなら失格だよ?」

 もう! ああ言えばこう言う!
 ぐぬぬ、となんて言い返そうと考えていたら、ゴホンと烈央くんが咳払いをした。

「結花ちゃん──とりあえずその鍵で、この扉を閉めてくれないかな?」

 冷静な烈央くんが指差すのは、あの赤い鳥居だ。

「ええっ、私が?」
「むしろいまは、結花ちゃんにしかできなんだ。この扉を閉めるには、鍵がいるんだけど……」

 私が握っている鍵にスッと視線を向けて、苦笑いのレオくん。

「『導きの鍵』は、結花ちゃんしか触れないようだし」
「それは、本当にごめんなさいっ……!」
「あぁ謝らないで? 俺たちもどうしてそうなっているのか、全くわからないし。結花ちゃんだけが悪いとは思わないよ」
「……うん、ありがとう烈央くん」
「大丈夫、結花ちゃんならできる。まずは、鍵を鍵穴に差しこんでみて?」

 烈央くんに言われた通り、扉を閉めてから鍵穴に鍵をさしこむ。
 回してガチャリと音がしてから鍵を引き抜くと、パアァと光って鳥居が消えていった。

「わ、できた!」
「ふふ、よくできました」
「そうかな? えへへ、ありが──」
「簡単なんだから、それくらい誰でもできるでしょー」
「……またそんなことを言って。ダメだろう、星守?」

 ……なんだか星守くんの言葉に、カチンときてしまった。
 私はスススッと烈央くんの背後に隠れて、ちょびっとだけ顔を出す。
 その様子を不思議そうな顔をしながら見てくる星守くんに一言。

「でも……鍵にすら触れなかったら、扉を閉めれないよね?」
「なっ!?」

 星守くんはぷくりと頬をふくらませて、私をにらむけれど全然怖くない。
 ニヤリと笑ってみせると、目を見開いて「烈央、いまの見たぁ!?」と抗議をしている。
 ふふと笑いながら星守くんを見ていれば、右手に持っていた鍵が私の胸の中へ消えていく。

「──ぎゃぁぁぁぁ!? ま、また!」
「ぶぷー。ボクをおちょくるからだよ」

 星守くんがベーと下を出して、くすくす笑う。
 
「はいはい、二人とも静かに。……とにかく、いったん場所を移そう。結花ちゃんに送り屋をしているところを見られてしまったし、鍵のことも話し合わなくちゃ」

 ニコリとしているけど少し怖い笑顔を浮かべて、烈央くんが私を見た。

「──てことで、ついてきてくれるよね? 結花ちゃん」
「……よ、よろこんで?」

 私は顔を引きつらせながら、どうにか笑顔を浮かべた。
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