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第一章 イケメン双子の転校生は、あやかしでした

3話

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 音楽室の中の様子をもっと見ようとして、扉に手をついたら音がなってしまった。
 動くこともできなくてじっとしていると、少し空いている扉の隙間からパチリと烈央れおくんと目が合う。

「君は……!」

 烈央くんは、音を立てたのが私だとわかると目を見開いた。
 もう言い逃れできないと思って、私は扉を開けて中に入る。

「あ、あの! 私は怪しい者じゃなくて……!」

 あまりにも私がオドオドしていたからか、一転してきょとんとした顔になる烈央くん。

「たしか、同じクラスの──」
「そそそそう! 同じクラスの、なっ長月結花ゆかです!」

 カミカミになりながらも、どうにか自分の名前を言えた。
 ふぅと息を吐いた私を星守せらくんが怪しむ顔で見てくる。

「アンタ、なんであんなところにいたのさ?」

 たしかに、何も言わずに覗き見していた、なんて不審者以外の何者でもないよね?
 ごもっともな反応だ。

『えへへ、実は私あやかしが見えるの!』

 ……なんて気軽に二人に言えるわけがない!
 あれっ? 
 でもあやかしの二人が見えてるから、もうバレてるのかな?

 どう説明すればいいかわからなくて、頭をフル回転させて考えていたその時。
 烈央くんが持っていた鍵が、バアァと眩しい光を放った。
 驚いた烈央くんは床に鍵を落としてしまう。

 カーンッと高い音を立てて落ちた鍵は、ふわりと浮き上がって……一直線に私へと飛んできた!

「ひゃあ!?」

 怖くて、とっさに目を閉じる。
 細長いものが飛んできたら、誰だって怖くて目を閉じると思うのっ!

 でも何秒経っても、なにも衝撃はこなかった。 
 ……うん? 痛く、ない?
 顔に当たったら絶対に痛い、と思うくらいのスピードで私の方へ飛んできていた鍵。
 不思議に思ってゆっくりと目を開けると、鍵は私の顔の前でぷかぷかと浮かんでいた。

「ど、どうして……?」

 そっと手を鍵にのばそうとしたら、逆に鍵からゆっくりと私に近づいてきた。
 じーっと鍵を見つめていると、私の胸のあたりから……ヌプリと体の中に入っていく。

 そして綺麗さっぱり無くなってしまった。

「へ──……ぎゃああ!?」
「ちょ、どうなってるの!? アンタ、なにしたのさ!」

 ぎょっとした顔をして、星守くんが私のところに走ってきた。

「わ、私だってわかんないよ!?」
「ボクだってわかんないし!」
「──落ち着いて、二人とも」

 気づけば烈央くんも私の隣に立っていた。
 烈央くんは、もふもふな耳をピクピクと忙しなく動かしてる。
 星守くんは耳をピンと立てていた。

 これ、やっぱり本物の耳なんだ!
 近くで見るもふもふな耳は触り心地が良さそうで、思わず手がのびそうになった。
 そんなことを思いながら耳を見ていたからか、烈央くんが不思議そうな顔をして私の顔をのぞきこむ。

「……結花ちゃん、気持ち悪くなったりした? 吐きそう?」
「う、ううんっ? 大丈夫!」
「そう……なら良かった」

 烈央くんはホッとしたように、やわらかい笑みを浮かべた。
 そこに星守くんが、ギャンと吠えるように声を荒げて会話に入ってくる。

「ちょっと烈央、ほっとしてる場合じゃないんだけど! 『みちびきの鍵』が無くなっちゃったんだよ!? あれがなきゃ『送り屋』の仕事できないんだから!」
「あぁ、わかってるよ」

 導きの鍵? おくりや?
 わからない単語が星守くんの口から出てくる。
 それに仕事って……二人は働いているの?

「結花ちゃん」
「っ、はい!」
「そんなに緊張しなくていいよ。……さっきの鍵、取り出せそうかな? 出てこい、って念じてみて」

 急にそんなことを言われても、できる気がしない。
 私の体の中に何かある感覚がするわけでもないし、……本当にどこかへと鍵が消えてしまったのだ。

「で、できるかわからないけど……やってみるね?」

 さっき鍵が消えていった胸の辺りに、意識を集中させてみる。

 ──お願い、出てきて!
 私、体の中にずっと鍵があるまま生きたくないよ!

 おりゃー! と念じていると、ふと胸のあたりが熱くなった気がして驚いて目を開ける。
 すると胸の前でぷかぷかと鍵が浮いていた。

「わ、出てきた!?」
「その調子だ、結花ちゃん。いい? そのままでいて──」

 烈央くんが、そーっと鍵に手をのばす。
 鍵まであともう少し……『ちょん』と烈央くんの指先が鍵に触れた。

 ──バチバチバチッ!!

「なっ……!」

 静電気のような光が、烈央くんを嫌がるように鍵から放たれた。
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