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第一章 イケメン双子の転校生は、あやかしでした
1話
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──自分に見えているモノが、他の人にも見えているとはかぎらない。
私、長月結花は不思議なナニカが小学一年生の時に見えるようになった。
ナニカを初めて見た私は、興奮しながら隣を歩く友達に「見て!」ってナニカを指差したことがある。
『……居ない』
『え?』
『ひどい。私があやかしを信じてるって知ってるのに、どうしてそんな嘘をつくの』
『へ……? ち、違うよっ! 本当に、本当にいるんだってば!』
──本当にっふわふわした白い生き物が、あそこにいたんだよ!
でも何度言っても、友達にはあの生き物が見えなくて……。
その後、またあやかしが見えることでケンカをしてしまった。
だからあの日から私は、『あやかし』が見える事を人に言うのはやめた。
──……はず、なんだけど。
「追いついたよ。さぁ、観念するんだね」
「そーそー。逃げられると思ってるの? 送り屋のボクたちから、ね」
ぴょこりと頭に三角の耳がはえていて、もふもふなしっぽがゆらりと揺れている男の子二人。
二人は、とてもかっこいい。
頭に葉っぱを乗せた着物を着ている小さな男の子の前で、二人は仁王立ちになって男の子を見下ろしていた。
プルプルと震えて着物の男の子は、頭を地面にこすりつけている。
『ひぃぃぃ、お助けを! もうしませんから! 帰りますっ、隠世に帰りますー!』
着物の男の子がそう叫んだ、次の瞬間。
──ボフン!
あたりが一帯が煙に包まれて、一匹のたぬきが現れた!
「ちゃんと期限は守ってもらわないと。……結花ちゃん、鍵を」
「結花、はやくしてよねー? ボクお腹すいたぁ」
「う、うんっ!」
私はあの日から、あやかしが見えることを誰にも言わないようにしてた。
……なのに。
なぜかいま、あやかしのイケメン双子と一緒にとあるお仕事をしている。
──あれ、どうしてこうなったんだっけ……!?
◆◆◆◆◆
「わ、ハネてるっ……」
玄関先にある鏡を見ながら、私はぴょこりと寝癖がついていた前髪を整える。
ランドセルも背負って、トントンとつま先で床を蹴ったら準備は完璧!
「お母さん、いってきまーす!」
「いってらっしゃい。気をつけてねぇ」
お母さんの声を聞きながら、私は急いで家を出た。
なぜ急いでいるのかと言うと、昨日の夜……読んでいた本が面白くて、つい夜ふかしをしてしまったからだ。
だから、朝早くに起きられるはずもなくて。
寝坊をしちゃったから、このままだと学校に遅刻しちゃうよっ!
いまの私の気持ちとしては、一秒でもはやく学校にたどり着きたい。
必死に足を動かしていると視界のはしに、ふわふわとした白いわた毛が映った。
そのわた毛には、二つの小さな黒い粒が中心にチョンチョンとついている。
あれは、ただのわた毛じゃない。
普通の人には見えないナニカ……『あやかし』と呼ばれるモノだ。
私は小学一年生の時、突然あやかしが見えるようになった。
友達がいない私にとって、あのわた毛たちは数少ない友達だ。
それにもふもふとしている動物が好きな私は、すぐにわた毛たちのとりこになったの。
河川敷に生息しているわた毛のあやかし。
今日もお散歩をしているのか、ぴょんぴょんと集団で移動している。
わた毛のあやかしは全部で五匹いて、そのうちの一匹が集団から遅れていた。
──ぴょんぴょん。
──ぴょんぴょーん!
一生懸命とびはねているけど、前にいる四匹に一向に追いつかない。
「……誰もいない、よね? よし!」
私は周りに誰もいない事を念入りに確認してから、一匹のそばへ駆け寄った。
まだ一生懸命、ぴょんぴょんとしているわた毛のあやかしをそっと手に包む。
「もう、またあなたね? いつも遅れてるんだから」
ずいぶん先の方にいる残りの四匹が、私に気づいてぴょーん! と高くとびはねて嬉しそうにしている。
そんな四匹のところまで走っていき、私は手に包んでいた一匹をそっとおろした。
わた毛は『ありがとう』って言っているのか、ふわふわと浮かんで、私の頬にすりすりしてくる。
「ふふっ。くすぐったいってば。遅れないように気をつけてね? ……あっ!」
はやく学校に行かなきゃ、遅刻しちゃう!
「じゃ、またねっ!」
わた毛のあやかしたちは、とびはねながら私を見送ってくれた。
そこから全速力で走って、二つ先の角を曲がれば学校が見えてくるところまでやってきた。
よし、この調子なら間に合いそう──
『おや。珍しい、美味そうな人間がいるぞぉ』
「え?」
ひとつめの曲がり角から、にゅっと大きな牛が出てきた。
二足歩行で歩く牛は、着物を着ている。
声にならない声が、のどの奥でつっかえた。
『こりゃあ運がいい。……暴れるなよ、いま私が食ってやるからなぁ』
──だらり。
口からたくさんのヨダレを出して、鼻息荒く私を見つめてくる。
「あ……いや……っ」
この牛は怖いあやかしだ!
恐怖で縮こまった体をどうにか動かして、首からヒモでぶら下げているお守りを服の上からきゅっとにぎる。
こっちに向かってのびてきた牛の大きな手によって、私の顔の上に影ができた。
──おねがいだから、あっちに行って!
『な、なんだっ!?』
──バチバチバチ!
牛のあやかしの手が、何かにはじかれた。
あやかしがドシンっと尻もちをついている間に、私は急いでその場から離れる。
『待ちやがれ、くそっ! なんだこれはよぉ、動けねぇ。イテテテッ』
人じゃないナニカ。
私があやかしと呼んでいるそれらは、私を「美味そうだ」と言い襲ってくる。
その度に、昔おばあちゃんにもらったお守りが私を守ってくれるの。
毎朝、怖いあやかしに狙われる。
これが私にとっての日常だ。
◆◆◆◆◆
封鬼小学校。
私が通っている小学校の名前。
三階建ての本校舎の隣には、ひとまわり小さい二階建ての木造の旧校舎が建っている。
私たち児童は、老朽化の恐れがあるから旧校舎には入れないようになっていて、一度も入ったことはない。
……だから幽霊が出るとか、二階の窓から誰かがのぞいてるとかっ!
旧校舎にはそんな怖い噂ばかりがあるから、怖い話が苦手な私は旧校舎が恐ろしくて仕方がない。
本校舎の三階の一番端っこに私のクラス、五年一組の教室がある。
教室の一番後ろ、ぽつんと一つ飛び出ている席が私の席だ。
クラスの人数が奇数だから隣に席はなくて、ひとりぼっちだけど別に気にしていない。
──あれ?
教室に入ってすぐに私は気づく。
私の席の隣と後ろに真新しい机が置いてある。
昨日までは無かったのに……もしかして転校生かな?
優しい子だと良いなと思いながら、机に置いたランドセルから荷物を取り出す。
朝の準備が終わって、先生が来るまで少し時間があったから私は本を読んで待つことにした。
◆◆◆◆◆
本を読み始めて、数分後。
教室にやって来た夏目先生が「おはようございます。はーい、静かに」と言うと、ガヤガヤとにぎやかだった教室が静かになる。
五年一組の担任教師、夏目隼人先生はすごく優しい。
それにとってもイケメンなの。
男子達とも遊ぶし、女子に混じって恋バナだってしてくれる。
大きくなったら、夏目先生と結婚したいと言う女子もいるくらいだ。
「ふふ。今日はみんなに、お知らせがあります!」
にこりと笑った夏目先生は、一旦教室を出るとまたすぐに戻ってきた。
夏目先生の後ろから、二人の男の子が教室に入ってくる。
「きゃー!」
「わっ、カッコいい!」
「転校生っ? 仲良くなれるかな!」
二人の男の子を見たとたん、クラスの女子たちはソワソワとしはじめた。
そんな女子たちを見て、男子はちょっとムッとしている。
女子の大半が頬を赤くして、目を輝かせながら二人を見ていた。
と言いつつ、私もちょっぴりドキドキしながら二人に視線を向ける。
……だって、すごくカッコいいんだもん。
転校生の二人は黒板の前に並んだ。
私から見て左側に立っている男の子は、さらさらとした黒髪で、大きな瞳は長いまつ毛に縁取られている。
その子と目があって、ニコリと笑顔を向けられた。
突然のことにびっくりしちゃって、あわてて右側の男の子に視線をそらす。
二人目の子は、まだ誰にも踏まれていない真っ白な雪のような髪の毛の色をしていた。
右側だけ髪の毛が少し長くて、反対側には紫色の可愛い髪留めがついていた。
ん? もしかして……。
二人をじーっと観察して、気がついたことがある。
雰囲気が違うけど二人は顔が似ていた。
「──朝霧烈央です。よろしくお願いします」
「朝霧星守でーす。よろしく」
「俺たちは双子で俺が兄、星守が弟なんです」
黒髪の子、白い髪の子、の順で自己紹介をしてくれた。
「れお」と「せら」って、なんだか名前までカッコいい。
「烈央くんと星守くんは、遠い所から引っ越してきたんだ。慣れないことも多いだろうからみんな、二人に色々と教えてあげてね」
『はーい!』
クラスのみんなが元気に返事をした。
私も小声で「はーい」と言っておく。
夏目先生は、私の方を見てニコリと笑った。
な、なんだろうっ?
「二人の席は結花ちゃんの隣と、後ろの席だよ」
先生に名前を言われて、ビクッと肩がはねてしまった。
烈央くんと星守くんがこっちに向かって歩いてくる。
ついでにクラス中の視線が私に向けられて、落ち着かない。
二人を近くで見ると、圧というかオーラがすごいっ……!
烈央くんは私の隣、星守くんが後ろの席に座った。
烈央くんが私を見てまたニコリと笑う。
「よろしくね、結花ちゃん」
──な、なんで私の名前を!?
と思ったけど、さっき先生が呼んでいたのを思いだす。
「よ、よろしくね烈央くんっ」
烈央くんは親しみやすいというか、落ち着いていてカッコいい。
ふふっ、とやわらかく笑う姿は大人っぽく感じる。
同い年の小学生だよね? と疑ってしまった。
「ほら、星守もあいさつして」
「……星守でーす。よろしくー」
星守くんは、頬づえをついてプイッとそっぽを向きながらあいさつをしてくれた。
「結花ですっ。よろしくね、星守くん」
んー、と短く返事をする星守くん。
星守くんは烈央くんと違って、ちょっぴり怖い。
それにしても……気のせいかな?
さっきから教室中の女子の視線をビシバシと感じるんですがっ!?
小さな声で『私も烈央くんの隣が良かった』と聞こえてきた。
ひぇっ、そんなに怖い目で私を見ないでー!
私、長月結花は不思議なナニカが小学一年生の時に見えるようになった。
ナニカを初めて見た私は、興奮しながら隣を歩く友達に「見て!」ってナニカを指差したことがある。
『……居ない』
『え?』
『ひどい。私があやかしを信じてるって知ってるのに、どうしてそんな嘘をつくの』
『へ……? ち、違うよっ! 本当に、本当にいるんだってば!』
──本当にっふわふわした白い生き物が、あそこにいたんだよ!
でも何度言っても、友達にはあの生き物が見えなくて……。
その後、またあやかしが見えることでケンカをしてしまった。
だからあの日から私は、『あやかし』が見える事を人に言うのはやめた。
──……はず、なんだけど。
「追いついたよ。さぁ、観念するんだね」
「そーそー。逃げられると思ってるの? 送り屋のボクたちから、ね」
ぴょこりと頭に三角の耳がはえていて、もふもふなしっぽがゆらりと揺れている男の子二人。
二人は、とてもかっこいい。
頭に葉っぱを乗せた着物を着ている小さな男の子の前で、二人は仁王立ちになって男の子を見下ろしていた。
プルプルと震えて着物の男の子は、頭を地面にこすりつけている。
『ひぃぃぃ、お助けを! もうしませんから! 帰りますっ、隠世に帰りますー!』
着物の男の子がそう叫んだ、次の瞬間。
──ボフン!
あたりが一帯が煙に包まれて、一匹のたぬきが現れた!
「ちゃんと期限は守ってもらわないと。……結花ちゃん、鍵を」
「結花、はやくしてよねー? ボクお腹すいたぁ」
「う、うんっ!」
私はあの日から、あやかしが見えることを誰にも言わないようにしてた。
……なのに。
なぜかいま、あやかしのイケメン双子と一緒にとあるお仕事をしている。
──あれ、どうしてこうなったんだっけ……!?
◆◆◆◆◆
「わ、ハネてるっ……」
玄関先にある鏡を見ながら、私はぴょこりと寝癖がついていた前髪を整える。
ランドセルも背負って、トントンとつま先で床を蹴ったら準備は完璧!
「お母さん、いってきまーす!」
「いってらっしゃい。気をつけてねぇ」
お母さんの声を聞きながら、私は急いで家を出た。
なぜ急いでいるのかと言うと、昨日の夜……読んでいた本が面白くて、つい夜ふかしをしてしまったからだ。
だから、朝早くに起きられるはずもなくて。
寝坊をしちゃったから、このままだと学校に遅刻しちゃうよっ!
いまの私の気持ちとしては、一秒でもはやく学校にたどり着きたい。
必死に足を動かしていると視界のはしに、ふわふわとした白いわた毛が映った。
そのわた毛には、二つの小さな黒い粒が中心にチョンチョンとついている。
あれは、ただのわた毛じゃない。
普通の人には見えないナニカ……『あやかし』と呼ばれるモノだ。
私は小学一年生の時、突然あやかしが見えるようになった。
友達がいない私にとって、あのわた毛たちは数少ない友達だ。
それにもふもふとしている動物が好きな私は、すぐにわた毛たちのとりこになったの。
河川敷に生息しているわた毛のあやかし。
今日もお散歩をしているのか、ぴょんぴょんと集団で移動している。
わた毛のあやかしは全部で五匹いて、そのうちの一匹が集団から遅れていた。
──ぴょんぴょん。
──ぴょんぴょーん!
一生懸命とびはねているけど、前にいる四匹に一向に追いつかない。
「……誰もいない、よね? よし!」
私は周りに誰もいない事を念入りに確認してから、一匹のそばへ駆け寄った。
まだ一生懸命、ぴょんぴょんとしているわた毛のあやかしをそっと手に包む。
「もう、またあなたね? いつも遅れてるんだから」
ずいぶん先の方にいる残りの四匹が、私に気づいてぴょーん! と高くとびはねて嬉しそうにしている。
そんな四匹のところまで走っていき、私は手に包んでいた一匹をそっとおろした。
わた毛は『ありがとう』って言っているのか、ふわふわと浮かんで、私の頬にすりすりしてくる。
「ふふっ。くすぐったいってば。遅れないように気をつけてね? ……あっ!」
はやく学校に行かなきゃ、遅刻しちゃう!
「じゃ、またねっ!」
わた毛のあやかしたちは、とびはねながら私を見送ってくれた。
そこから全速力で走って、二つ先の角を曲がれば学校が見えてくるところまでやってきた。
よし、この調子なら間に合いそう──
『おや。珍しい、美味そうな人間がいるぞぉ』
「え?」
ひとつめの曲がり角から、にゅっと大きな牛が出てきた。
二足歩行で歩く牛は、着物を着ている。
声にならない声が、のどの奥でつっかえた。
『こりゃあ運がいい。……暴れるなよ、いま私が食ってやるからなぁ』
──だらり。
口からたくさんのヨダレを出して、鼻息荒く私を見つめてくる。
「あ……いや……っ」
この牛は怖いあやかしだ!
恐怖で縮こまった体をどうにか動かして、首からヒモでぶら下げているお守りを服の上からきゅっとにぎる。
こっちに向かってのびてきた牛の大きな手によって、私の顔の上に影ができた。
──おねがいだから、あっちに行って!
『な、なんだっ!?』
──バチバチバチ!
牛のあやかしの手が、何かにはじかれた。
あやかしがドシンっと尻もちをついている間に、私は急いでその場から離れる。
『待ちやがれ、くそっ! なんだこれはよぉ、動けねぇ。イテテテッ』
人じゃないナニカ。
私があやかしと呼んでいるそれらは、私を「美味そうだ」と言い襲ってくる。
その度に、昔おばあちゃんにもらったお守りが私を守ってくれるの。
毎朝、怖いあやかしに狙われる。
これが私にとっての日常だ。
◆◆◆◆◆
封鬼小学校。
私が通っている小学校の名前。
三階建ての本校舎の隣には、ひとまわり小さい二階建ての木造の旧校舎が建っている。
私たち児童は、老朽化の恐れがあるから旧校舎には入れないようになっていて、一度も入ったことはない。
……だから幽霊が出るとか、二階の窓から誰かがのぞいてるとかっ!
旧校舎にはそんな怖い噂ばかりがあるから、怖い話が苦手な私は旧校舎が恐ろしくて仕方がない。
本校舎の三階の一番端っこに私のクラス、五年一組の教室がある。
教室の一番後ろ、ぽつんと一つ飛び出ている席が私の席だ。
クラスの人数が奇数だから隣に席はなくて、ひとりぼっちだけど別に気にしていない。
──あれ?
教室に入ってすぐに私は気づく。
私の席の隣と後ろに真新しい机が置いてある。
昨日までは無かったのに……もしかして転校生かな?
優しい子だと良いなと思いながら、机に置いたランドセルから荷物を取り出す。
朝の準備が終わって、先生が来るまで少し時間があったから私は本を読んで待つことにした。
◆◆◆◆◆
本を読み始めて、数分後。
教室にやって来た夏目先生が「おはようございます。はーい、静かに」と言うと、ガヤガヤとにぎやかだった教室が静かになる。
五年一組の担任教師、夏目隼人先生はすごく優しい。
それにとってもイケメンなの。
男子達とも遊ぶし、女子に混じって恋バナだってしてくれる。
大きくなったら、夏目先生と結婚したいと言う女子もいるくらいだ。
「ふふ。今日はみんなに、お知らせがあります!」
にこりと笑った夏目先生は、一旦教室を出るとまたすぐに戻ってきた。
夏目先生の後ろから、二人の男の子が教室に入ってくる。
「きゃー!」
「わっ、カッコいい!」
「転校生っ? 仲良くなれるかな!」
二人の男の子を見たとたん、クラスの女子たちはソワソワとしはじめた。
そんな女子たちを見て、男子はちょっとムッとしている。
女子の大半が頬を赤くして、目を輝かせながら二人を見ていた。
と言いつつ、私もちょっぴりドキドキしながら二人に視線を向ける。
……だって、すごくカッコいいんだもん。
転校生の二人は黒板の前に並んだ。
私から見て左側に立っている男の子は、さらさらとした黒髪で、大きな瞳は長いまつ毛に縁取られている。
その子と目があって、ニコリと笑顔を向けられた。
突然のことにびっくりしちゃって、あわてて右側の男の子に視線をそらす。
二人目の子は、まだ誰にも踏まれていない真っ白な雪のような髪の毛の色をしていた。
右側だけ髪の毛が少し長くて、反対側には紫色の可愛い髪留めがついていた。
ん? もしかして……。
二人をじーっと観察して、気がついたことがある。
雰囲気が違うけど二人は顔が似ていた。
「──朝霧烈央です。よろしくお願いします」
「朝霧星守でーす。よろしく」
「俺たちは双子で俺が兄、星守が弟なんです」
黒髪の子、白い髪の子、の順で自己紹介をしてくれた。
「れお」と「せら」って、なんだか名前までカッコいい。
「烈央くんと星守くんは、遠い所から引っ越してきたんだ。慣れないことも多いだろうからみんな、二人に色々と教えてあげてね」
『はーい!』
クラスのみんなが元気に返事をした。
私も小声で「はーい」と言っておく。
夏目先生は、私の方を見てニコリと笑った。
な、なんだろうっ?
「二人の席は結花ちゃんの隣と、後ろの席だよ」
先生に名前を言われて、ビクッと肩がはねてしまった。
烈央くんと星守くんがこっちに向かって歩いてくる。
ついでにクラス中の視線が私に向けられて、落ち着かない。
二人を近くで見ると、圧というかオーラがすごいっ……!
烈央くんは私の隣、星守くんが後ろの席に座った。
烈央くんが私を見てまたニコリと笑う。
「よろしくね、結花ちゃん」
──な、なんで私の名前を!?
と思ったけど、さっき先生が呼んでいたのを思いだす。
「よ、よろしくね烈央くんっ」
烈央くんは親しみやすいというか、落ち着いていてカッコいい。
ふふっ、とやわらかく笑う姿は大人っぽく感じる。
同い年の小学生だよね? と疑ってしまった。
「ほら、星守もあいさつして」
「……星守でーす。よろしくー」
星守くんは、頬づえをついてプイッとそっぽを向きながらあいさつをしてくれた。
「結花ですっ。よろしくね、星守くん」
んー、と短く返事をする星守くん。
星守くんは烈央くんと違って、ちょっぴり怖い。
それにしても……気のせいかな?
さっきから教室中の女子の視線をビシバシと感じるんですがっ!?
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