甘々悪魔と恋に堕ちたら罪!? 〜天使の監視つきです〜

巴藍

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第四章 大型連休は遊園地デートです!?

43話 勇気を出して!

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 楽しかった大型連休も終わり。
 朝、私はいつものように魔央まおくんと一緒に登校している。
 あんな事があったからと、ドキドキしていたのは私だけで、魔央まおくんは澄ました顔をしていた。
 そういえば天内あまないくんはというと、先生の手伝いがあるとかで先に学校に行ったらしい。
 だから今日は、私と魔央まおくんの二人だけだ。

 学校の校門をくぐると、ジャージ姿の柚瑠ゆずるくんがいた。
 その額には、うっすらと汗をかいている。
 私と魔央まおくんに気づいた柚瑠ゆずるくんは、手を振ってくれた。

「あ! イチカ、マオ、おはよー」
「おはよ、柚瑠ゆずる
「おはよう柚瑠ゆずるくん。ってそれ、どうしたの?」

 柚瑠くんは軍手をはめていて、抜いた草が沢山入っているゴミ袋を持っていた。

「あぁ、これ? 今月は体育祭があるから、ちょっとだけ草むしり頼むって、先生に言われてさー。……聞いてよイチカ! 一緒に居たのに、カイリはボクをおいて逃げたの!」

 ひどくない!? とプリプリ怒っている柚瑠ゆずるくん。

「それは大変だったね……」
「でしょっ!?」

 大型連休で忘れていたけど、もうすぐ体育祭の練習が始まる時期だ。私は走るのが苦手だから、あまり楽しみではないかなぁ。

「こんなことなら、早起きしなきゃよかった! たまたま先生に、見つかったばっかりにさぁ。本当サイアク!」
「私も手伝おうか?」
「ううん、もう終わったからいーよ。ボク、このゴミ袋捨ててくるねー」

 ふぅと、息をついた柚瑠ゆずるくん。
 落ちてきた額の汗を服のそででふくと、服にヘアピンが引っかかって落ちてしまった。
 それを見た柚瑠ゆずるくんは、眉を寄せる。

「あっ! もー……、この手でヘアピン触りたくないんだけど!」

  柚瑠ゆずるくんの両手には、土で汚れた軍手がはめられている。

「|柚瑠くん、ちょっと待って。私がつけてあげる」
「本当? ありがと」

 ヘアピンを拾って柚瑠ゆずるくんの方を向けば、すでに目を閉じてスタンバイしていた。

「ん、お願い」
「っ!」

 ……柚瑠ゆずるくんは、本当に可愛い顔をしている。
 お肌だってツルツルだし、まつ毛も長い。
 ぷくりとした頬は、おもわず指でつつきたくなるモチモチほっぺだ。

 私がいつまでたってもヘアピンをつけないからか、パチリと片目をあけた柚瑠ゆずるくん。
 至近距離でウィンクを見てしまい、可愛さに心臓がきゅっとなった。

「ねぇまだー?」
「ごめんっ、いまつけるね! ……よし、できたよ」
「ありがとイチカ。じゃ、ゴミ捨てに行ってくるー」
「いってらっしゃい」

 柚瑠ゆずるくんを見送って、私たちは下駄箱へ向かった。
 靴をき替えて廊下を歩いていると、魔央まおくんが先生に呼び止められた。

黒羽くろばね~、ちょっといいか?」
「はい」

 なにやら先生と話しこんでいる様子を見ていると、魔央まおくんがこちらをふり返った。

一華いちか。先に教室行ってて、すぐに行くから」
「うん。わかった」

 魔央まおくんと別れて、二階への階段をのぼっていると誰かとぶつかった。

「きゃっ!」

 うしろへと倒れていく私の体。
 衝撃しょうげきそなえて、目を固く閉じる。
 
「──おっと」

 でも痛みは来なくて。
 ぱちりと目を開ければ、そこには見慣れた顔があった。

「大丈夫? 一華いちかちゃん」
「……界李かいりくん!」

 私は界李かいりくんに腰に手をそえられて、まるでダンスを踊っているかのようなポーズをとっていた。
 長い界李かいりくんの髪が、私の頬をくすぐる。
 
「おはよ、一華いちかちゃん」
「おはよう……って、ぶつかってごめんね!」

 バッと頭を下げて謝ると、優しく私の頭に界李かいりくんの手がえられた。

「ううん、俺の方こそ……。柚瑠ゆずるの様子を見に行こうと思って、手伝わされるのヤダなぁって考え事をしながら歩いてたから」
柚瑠ゆずるくんなら、さっき草むしり終わってたよ?」
「そうなの? じゃあ……、ねぎらいに行ってこうかな」
「ふふ、そうしてあげて。柚瑠ゆずるくん、すっごく怒ってたから」
「それは聞きたくなかった……」

 ぶるりと震える界李かいりくんは、そんなことを言いつつも柚瑠ゆずるくんのところへ向かった。

 二階の廊下にはたくさんの生徒がいて、みんなお喋りしている。
 私は人をけるように廊下の端を歩いていると、一人の女の子と目があった。

「(……こ、これはおはようって言うチャンス?)」

 人見知りをなおすと言いつつも、魔央まおくんたちしかまだ友達がいない私。
 朝の挨拶をしあう女の子の友達は、まだ一人もいなかった。

 ──チャンスなんだし、勇気をふりしぼれ私!

「おっ……、おはようっ!」

 思ったよりも大きい声が出てしまった。
 まわりの子も、おどろいた顔をして私を見る。
 もちろん、私から挨拶をされた子も目を見開いておどろいていた。

 ……や、やってしまった!
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