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第四章 大型連休は遊園地デートです!?

38話 遊園地にハプニングはつきもの?《side帝》 5

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 差し出した僕の手を数秒見つめたあと、おずおずと神城かみしほさんは手を重ねてきた。
 優しく握れば、神城かみしろさんは「ふふ」と笑った。
 なぜ笑ったのかわからなくて、首をかしげると慌てたように喋り出す。

「すみませんっ、なんだか友達に似ている気がして。いつも優しく、私を支えてくれるんです」

 ──これは、自惚うぬぼれても良いのだろうか。
 
「って、ウサギさんに言ってもわからないですね。先を急ぎましょうっ!」

 いや、黒羽くろざねの可能性も捨てきれないため、モヤモヤとする。
 ……しばらくお互い無言のまま薄暗い道を進んでいると、どこからか声が聞こえた。

『……誰か……誰か……』
「っ!? い、いま女の人の声がっ」
 
 ふるえる神城かみしろさんを安心させるように、手を強くにぎる。

『助けて……。ねぇ、聞こえてるんでしょう?』

 後ろを振り返ると、僕たちが来た道の随分ずいぶん後ろの方で、ポツリと女性が立っていた。
 白い服は血だらけで、黒く長い髪はボサボサだ。

「(こういうのは、あそこから僕たちを怖がらせるだけで動かないはず)」

 ──という僕の予想は、見事みごとに外れた。

『なんで返事をしてくれないのぉぉぉぉおおおおお!!』
「きゃぁぁ!?」

 頭を振りみだし、こっちに全速力で走ってくる女性。

「(それは反則だろうっ!?)」

 僕は神城かみしろさんの手を取り、そのまま走り出した。
 でも追われている恐怖からか、神城かみしろさんは速く走れない。

 ──しょうがない。

「わっ、ウサギさん!?」

 神城かみしろさんを横抱きにして、全速力で走る。

「わっ!」

 落ちないように、僕の首にしがみついてくる神城かみしろさん。かなり体が密着する。

「(軽すぎないか……? 神城かみしろさんは、ちゃんとご飯を食べているのだろうか? いやでもどこもやわらか……じゃなくて!)」

 邪念じゃねんを捨てて、ただ走ることだけに集中する。

「ウサギさんっ、あれ!」

 神城かみしろさんがある一点を指さした。そっちに顔を向ければ、暗闇の中に光がかすかにもれていた。

「(光……。あそこが出口かっ!)」

 出口まで、このまま突き進んだ。
 次の瞬間、眩い光が僕たちを包む。

まぶしいっ……」
 
 外の光だ。
 神城かみしろさんはまぶしさに目をおおうが、僕は被り物をしていたからそこまでまぶしくはない。

『女の子を横抱きにした、ウサギの被り物が走って出てくる』

 ──そんな光景を目にした出口のスタッフの人が、びっくりした顔をしていた。
 一応、謝罪しゃざいの意味もこめて頭を下げておく。
 横抱きにしていた神城かみしろさんをおろせば、恥ずかしそうにお礼を言われた。

「ありがとうございました……。ウサギさん」

 ホラーハウスを出ると、神城かみしろさんはあたりを見わたす。
 僕も同じように視線をめぐらせば、黒羽くろばねの後ろ姿をみつけた。 
 神城かみしろさんも、黒羽くろばねに気 づいたようだ。

「あれは……。魔央まおくんかも!」

 |神城さんは僕の両手をにぎり「ウサギさん」と呼ぶ。

「私一人じゃ、絶対にホラーハウスから出てこられなかったと思うんです。だから本当に、ありがとうございました!」

 こくりと縦に首をふれば、神城かみしろさんはニコリと笑ってから黒羽くろばねのもとへ走っていった。

 僕は手のひらを見つめる。
 ……神城かみしろさんの体温が、まだ手に残っている気がした。
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