甘々悪魔と恋に堕ちたら罪!? 〜天使の監視つきです〜

巴藍

文字の大きさ
上 下
23 / 44
第三章 ウワサの悪魔を調査せよ

23話 ウワサの悪魔の正体は……

しおりを挟む
「──ん、──ちゃん!」

 遠くで声がする。
 でもなんて言っているのか、よく聞こえない……。
 必死に叫んでいるような、そんな苦しい声だ。

「──ちゃん! 一華いちかちゃん!」
「ん……。あれ……、ここは?」
「っ! よかった!」
「かい、りくん? ……界李かいりくんっ!」

 苦しそうに叫んでいた声は、界李くんだった。
 ぎゅうと私を抱きしめる界李くんは、かすかに震えている。

「界李くん、無事だったんだねっ?」
「うん。戻ってきたら、一華ちゃんが倒れてたから。……心配した」

 眉を下げる界李くん。
 私は大丈夫だよっ、と微笑みかければ少し笑顔になった。

「男の人がきて、それから……あれ? 私、どうして眠っちゃってたんだろ」
「男? 誰かここにきたの?」
「うん、とっても綺麗な顔の男の人が……んん?」

 綺麗な顔だったことは覚えているのに、顔の細かいところは思い出せない。

「なんで顔が思い出せないんだろ……私」
「男から、危ないことはされてない?」
「それは大丈夫だよ」
「よかった……。動けそう?」

 界李くんに支えてもらい、立ち上がる。

「さっき一階で、明かりがついてる部屋を見つけた」
「ほんとっ!?」
「──校長室。とにかく、そこへ行こう」

◇◇◆◇◇

 無事に一階まで下りれた私と界李くん。
 校長室の方へ廊下を進んでいくと、明かりがもれていた。

「もしかしたら、校長先生がまだいるのかもっ!」
「そうだね、行こう」

 ──ガラッ。

 私たちが近づく前に、校長室の扉が開いて中から人が出てきた。
 中から出てきたのは……。

魔央まお、くん?」

 ゆっくりと、こちらを向く魔央くん。

「一華、逃げて……んぐっ!」
「魔央くんっ!」

 後ろから、魔央くんの首に腕がまわされた。
 校長室の中に、またナニカがいるの……!?

「──なぁに、逃げようとしてるのかしらぁん?」
「……校長、先生?」

 魔央くんを後ろから捕獲したのは、……校長先生だった!
 校長は私と界李くんに気づくと、「おいでおいで」と手招きした。

「一華ちゃん。遅かったわねぇ。界李くんも」
「(ど、どうなってるの!?)」
「とりあえず部屋に入りなさい。ほら、こっちこっちー」

 ずるずると、魔央くんを引きずって戻る校長先生。
 言われるがまま私と界李くんも、校長室の中にはいる。

 校長室の真ん中には、テーブルがあって両側には大きなソファーが置かれていた。
 一番奥には、校長先生の机がドンと構えてある。
 そしてソファーには、会いたかった人達がいた。

天内あまないくんっ! 柚瑠ゆずるくんっ!」
神城かみしろさん。すまない、心配させただろう?」
「やっほー……、イチカ」

 でも、どこか元気のない天内くんと柚瑠くん。

「そうだ……、校長先生! 階段っ! あと、じ、人体模型がっ!」
「──ふふっ」
「……へ?」

 もしかして今、校長先生は……笑った?

「おっと、ごめんなさい。さ、座って一華ちゃん、界李くん」

 校長先生は豪華なクルッとまわる椅子に座ると、私達にもソファーに座るようにうながした。
 私は空いているソファーに、魔央くんと界李くんに挟まれて座った。  

 机にひじをついて、組んだ手にあごを乗せた校長先生。
  
「不気味な声がする男子トイレ。どこまで行っても二階から動けない階段。走る人体模型……」
「そうです! 人体模型がっ──」
「あれは全部、アタシの仕業なのよ」
「…………え?」

 驚く私を見て、校長先生はニヤリと笑う。

「最近、夜の学校に忍びこむ生徒が多くてねぇ。なんでも、『悪魔』が出るってウサワが流れてからは特に多いのよ」

 ウワサがウワサを呼んで、『悪魔』が出るという騒ぎにまでなってしまったのだろうか?

「あの、じゃあ人体模型も全部……、生徒を怖がらせるためのものだったんですか?」
「──そうなの。怖がらせようとしたら、ウワサが広がって逆効果になっちゃったわ」

 てへっ、とする校長先生は可愛らしい。
 でも魔央くんたちは「いい歳して……」と、呆れた顔をした。

「でも一華、ウワサはあながち間違ってないよ」
「そうなの? 魔央くん」

 魔央くんは肩をすくめると、校長先生へ視線を向ける。

「だって、校長先生は──『悪魔』なんだから」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

超ポジティブ委員長の桂木くん

またり鈴春
児童書・童話
不登校の私の家に委員長がやって来た。 「この僕がいるのに、なぜ学校に来ないのですか?」 「……へ?」 初対面で、この発言。 実はこの人、超ポジティブ人間だった。 「同じクラスで僕と同じ空気を吸う、 それは高級エステに通ってると同じですよ」 自己肯定感の塊、それが委員長の桂木くん。最初は「変なヤツ」って思ってたけど… バカな事を大まじめに言う桂木くんを、「学校で見てみたい」なんて…そんな事を思い始めた。 \委員長のお悩み相談室が開幕!/

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。童話パロディ短編集

猫のお知らせ屋

もち雪
児童書・童話
神代神社に飼われている僕、猫の稲穂(いなほ)は、飼い主の瑞穂(みずほ)ちゃんの猫の(虫の)お知らせ屋になりました。 人間になった僕は、猫耳としっぽがあるからみずほちゃんのそばにいつもいられないけれど、あずき先輩と今日も誰かに為に走ってる。花火大会、お買い物、盆踊り毎日楽しい事がたくさんなのです! そんな不思議な猫達の話どうぞよろしくお願いします

マサオの三輪車

よん
児童書・童話
Angel meets Boy. ゾゾとマサオと……もう一人の物語。

クラゲの魔女

しろねこ。
児童書・童話
クラゲの魔女が現れるのは決まって雨の日。 不思議な薬を携えて、色々な街をわたり歩く。 しゃっくりを止める薬、、猫の言葉がわかる薬食べ物が甘く感じる薬、――でもこれらはクラゲの魔女の特別製。飲めるのは三つまで。 とある少女に頼まれたのは、「意中の彼が振り向いてくれる」という薬。 「あい♪」 返事と共に渡された薬を少女は喜んで飲んだ。 果たしてその効果は? いつもとテイストが違うものが書きたくて書きました(n*´ω`*n) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中です!

イブの夜に、ひとりきり

みこと。
児童書・童話
ニコラス少年は、クリスマスの夜にひとりおうちでお留守番。"毎年こうだ。みんなクリスマス・イブは楽しい日だって言うけれど、僕にはそう思えないな!" 家族が出かけてしまって取り残された少年の、将来の夢とは? 低年齢層向け、ほのぼのほっこりしたお話です。 ※ノベルアップ+様にも私の別名、チーム ホワイトミルクで投稿しています。

見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜

うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】 「……襲われてる! 助けなきゃ!」  錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。  人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。 「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」  少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。 「……この手紙、私宛てなの?」  少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。  ――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。  新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。 「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」  見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。 《この小説の見どころ》 ①可愛いらしい登場人物 見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎ ②ほのぼのほんわか世界観 可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。 ③時々スパイスきいてます! ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。 ④魅力ある錬成アイテム 錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。 ◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。 ◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。 ◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。

処理中です...