22 / 44
第三章 ウワサの悪魔を調査せよ
22話 どこかで見た事があるような?
しおりを挟む
低くて、でも耳心地がいい声。
でも私は恐怖から、その場を動けないでいた。
息をひそめていると、ガタッと教卓が揺れた。
どうやら教卓の上に座ったらしい。
もう一度、呼びかけられる。
「そこで何をしている、と聞いているが?」
敵意はなさそう……?
得体の知れないナニカだったとしても、ずっとここにいるわけにもいかない。
私はそろりと、教卓の下から顔を出した。
「っ!」
教卓の上に座っている人を見て、私は息をのむ。
信じられないくらいに、顔が整っていたからだ。
さらさらと艶のある黒髪の片側を耳にかけていて、薄暗い中でも赤く光っている瞳。
黒いロングコートが、この人を闇に紛れさせていた。
……とても顔が整っている男の人が、私を見下ろしている。歳は二十代くらいに見えた。
あれ? でもなんだか、どこかで見たことがあるような……?
「……あっ、あなたは?」
「ほう。質問に、質問で返すとは」
男の人は組んでいた足を変える。
その仕草は、すごく大人っぽくて色っぽい。
……けれど鋭い瞳が怖かった。
でも今はそれに、怯むわけにもいかないのだ。
居なくなったみんなのことが心配だから。
「あ、あのっ! 界李くんっ、髪を一つに結んでいる男の子を見ませんでしたかっ!?」
私の強がりが伝わったのか、男の人は呆れたようにため息をついた。
そして、ふむ、と顎のあたりに手をそえる。
「いや、見てはいないが……」
「(そんなっ……!)」
界李くんはどこにいったの?
それに、魔央くん達だって……。
「おい娘」
「はっ、はい」
「いまどきの子供は……こんな夜中に、学校へ忍び込むのが流行っているのか?」
──俺の息子もそうなのだろうか?
と、もらす男の人。
「いえ、流行ってはない……と思います」
男の人は、顔は無表情だけれど「なるほど……」と何かを考えこんでいる。
それにしてもこの男の人は、誰かに似ている気がしてならない。
誰だろう? よく知っている人のような気もするし……。
私の視線に気づいたのか、男の人は不思議そうに私を見る。
「……なんだ?」
「あ、いえ! 誰かに似てるなぁと思って……」
あはは……、と誤魔化すように笑えば、今度は男の人が私の顔を見つめる。
「──娘、お前の歳と名前は?」
「えっと、か、神城一華《いちか》。十二歳……です」
「……なるほど。だから、あいつの匂いがするのか」
「(あいつ? 匂い?)」
なんのことだろう?
ここに来る前にお風呂も入ったし、臭い匂い……ではないと思いたい。
「さて……俺はもう帰る。ここを覗いたのも、変な気配がしたからだしな。それももう、解決した」
ひょいっと軽い動きで、教卓から降りる男の人。
「あのっ! よかったら、はぐれてしまった友達を一緒に探してほしいのですが……」
「すまないが、俺も暇ではないのでな。……それに、お前のことを待っているヤツがいるようだぞ?」
「え? 私のことを? それっていったい……」
男の人は、私の顔に手をかざす。
するとだんだん、眠たくなってきた。
あれ、なんで……。
だめっ、こんなところで寝ちゃ……!
界李くんたちを探さなきゃいけないのに!
「少し眠っていろ。顔色があまり優れないようだ」
──私の意識は、深い闇の底へと沈んでいく。
でも私は恐怖から、その場を動けないでいた。
息をひそめていると、ガタッと教卓が揺れた。
どうやら教卓の上に座ったらしい。
もう一度、呼びかけられる。
「そこで何をしている、と聞いているが?」
敵意はなさそう……?
得体の知れないナニカだったとしても、ずっとここにいるわけにもいかない。
私はそろりと、教卓の下から顔を出した。
「っ!」
教卓の上に座っている人を見て、私は息をのむ。
信じられないくらいに、顔が整っていたからだ。
さらさらと艶のある黒髪の片側を耳にかけていて、薄暗い中でも赤く光っている瞳。
黒いロングコートが、この人を闇に紛れさせていた。
……とても顔が整っている男の人が、私を見下ろしている。歳は二十代くらいに見えた。
あれ? でもなんだか、どこかで見たことがあるような……?
「……あっ、あなたは?」
「ほう。質問に、質問で返すとは」
男の人は組んでいた足を変える。
その仕草は、すごく大人っぽくて色っぽい。
……けれど鋭い瞳が怖かった。
でも今はそれに、怯むわけにもいかないのだ。
居なくなったみんなのことが心配だから。
「あ、あのっ! 界李くんっ、髪を一つに結んでいる男の子を見ませんでしたかっ!?」
私の強がりが伝わったのか、男の人は呆れたようにため息をついた。
そして、ふむ、と顎のあたりに手をそえる。
「いや、見てはいないが……」
「(そんなっ……!)」
界李くんはどこにいったの?
それに、魔央くん達だって……。
「おい娘」
「はっ、はい」
「いまどきの子供は……こんな夜中に、学校へ忍び込むのが流行っているのか?」
──俺の息子もそうなのだろうか?
と、もらす男の人。
「いえ、流行ってはない……と思います」
男の人は、顔は無表情だけれど「なるほど……」と何かを考えこんでいる。
それにしてもこの男の人は、誰かに似ている気がしてならない。
誰だろう? よく知っている人のような気もするし……。
私の視線に気づいたのか、男の人は不思議そうに私を見る。
「……なんだ?」
「あ、いえ! 誰かに似てるなぁと思って……」
あはは……、と誤魔化すように笑えば、今度は男の人が私の顔を見つめる。
「──娘、お前の歳と名前は?」
「えっと、か、神城一華《いちか》。十二歳……です」
「……なるほど。だから、あいつの匂いがするのか」
「(あいつ? 匂い?)」
なんのことだろう?
ここに来る前にお風呂も入ったし、臭い匂い……ではないと思いたい。
「さて……俺はもう帰る。ここを覗いたのも、変な気配がしたからだしな。それももう、解決した」
ひょいっと軽い動きで、教卓から降りる男の人。
「あのっ! よかったら、はぐれてしまった友達を一緒に探してほしいのですが……」
「すまないが、俺も暇ではないのでな。……それに、お前のことを待っているヤツがいるようだぞ?」
「え? 私のことを? それっていったい……」
男の人は、私の顔に手をかざす。
するとだんだん、眠たくなってきた。
あれ、なんで……。
だめっ、こんなところで寝ちゃ……!
界李くんたちを探さなきゃいけないのに!
「少し眠っていろ。顔色があまり優れないようだ」
──私の意識は、深い闇の底へと沈んでいく。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
絆の輪舞曲〜ロンド〜
Ⅶ.a
児童書・童話
キャラクター構成
主人公:水谷 陽太(みずたに ようた)
- 年齢:30歳
- 職業:小説家
- 性格:おっとりしていて感受性豊かだが、少々抜けているところもある。
- 背景:幼少期に両親を失い、叔母の家で育つ。小説家としては成功しているが、人付き合いが苦手。
ヒロイン:白石 瑠奈(しらいし るな)
- 年齢:28歳
- 職業:刑事
- 性格:強気で頭の回転が速いが、情に厚く家族思い。
- 背景:警察一家に生まれ育ち、父親の影響で刑事の道を選ぶ。兄が失踪しており、その謎を追っている。
親友:鈴木 健太(すずき けんた)
- 年齢:30歳
- 職業:弁護士
- 性格:冷静で理知的だが、友人思いの一面も持つ。
- 背景:大学時代から陽太の親友。過去に大きな挫折を経験し、そこから立ち直った経緯がある。
謎の人物:黒崎 直人(くろさき なおと)
- 年齢:35歳
- 職業:実業家
- 性格:冷酷で謎めいているが、実は深い孤独を抱えている。
- 背景:成功した実業家だが、その裏には多くの謎と秘密が隠されている。瑠奈の兄の失踪にも関与している可能性がある。
水谷陽太は、小説家としての成功を手にしながらも、幼少期のトラウマと向き合う日々を送っていた。そんな彼の前に現れたのは、刑事の白石瑠奈。瑠奈は失踪した兄の行方を追う中で、陽太の小説に隠された手がかりに気付く。二人は次第に友情と信頼を深め、共に真相を探り始める。
一方で、陽太の親友で弁護士の鈴木健太もまた、過去の挫折から立ち直り、二人をサポートする。しかし、彼らの前には冷酷な実業家、黒崎直人が立ちはだかる。黒崎は自身の目的のために、様々な手段を駆使して二人を翻弄する。
サスペンスフルな展開の中で明かされる真実、そしてそれぞれの絆が試される瞬間。笑いあり、涙ありの壮大なサクセスストーリーが、読者を待っている。絆と運命に導かれた物語、「絆の輪舞曲(ロンド)」で、あなたも彼らの冒険に参加してみませんか?
超ポジティブ委員長の桂木くん
またり鈴春
児童書・童話
不登校の私の家に委員長がやって来た。
「この僕がいるのに、なぜ学校に来ないのですか?」
「……へ?」
初対面で、この発言。
実はこの人、超ポジティブ人間だった。
「同じクラスで僕と同じ空気を吸う、
それは高級エステに通ってると同じですよ」
自己肯定感の塊、それが委員長の桂木くん。最初は「変なヤツ」って思ってたけど…
バカな事を大まじめに言う桂木くんを、「学校で見てみたい」なんて…そんな事を思い始めた。
\委員長のお悩み相談室が開幕!/
猫のお知らせ屋
もち雪
児童書・童話
神代神社に飼われている僕、猫の稲穂(いなほ)は、飼い主の瑞穂(みずほ)ちゃんの猫の(虫の)お知らせ屋になりました。
人間になった僕は、猫耳としっぽがあるからみずほちゃんのそばにいつもいられないけれど、あずき先輩と今日も誰かに為に走ってる。花火大会、お買い物、盆踊り毎日楽しい事がたくさんなのです!
そんな不思議な猫達の話どうぞよろしくお願いします
クラゲの魔女
しろねこ。
児童書・童話
クラゲの魔女が現れるのは決まって雨の日。
不思議な薬を携えて、色々な街をわたり歩く。
しゃっくりを止める薬、、猫の言葉がわかる薬食べ物が甘く感じる薬、――でもこれらはクラゲの魔女の特別製。飲めるのは三つまで。
とある少女に頼まれたのは、「意中の彼が振り向いてくれる」という薬。
「あい♪」
返事と共に渡された薬を少女は喜んで飲んだ。
果たしてその効果は?
いつもとテイストが違うものが書きたくて書きました(n*´ω`*n)
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中です!
イブの夜に、ひとりきり
みこと。
児童書・童話
ニコラス少年は、クリスマスの夜にひとりおうちでお留守番。"毎年こうだ。みんなクリスマス・イブは楽しい日だって言うけれど、僕にはそう思えないな!"
家族が出かけてしまって取り残された少年の、将来の夢とは?
低年齢層向け、ほのぼのほっこりしたお話です。
※ノベルアップ+様にも私の別名、チーム ホワイトミルクで投稿しています。
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜
うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】
「……襲われてる! 助けなきゃ!」
錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。
人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。
「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」
少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。
「……この手紙、私宛てなの?」
少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。
――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。
新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。
「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。
《この小説の見どころ》
①可愛いらしい登場人物
見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎
②ほのぼのほんわか世界観
可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。
③時々スパイスきいてます!
ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。
④魅力ある錬成アイテム
錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。
◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。
◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる