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第一章 隣のキミは悪魔と天使
4話 墓穴を掘るとは、こういうこと
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──授業中。
隣で寝ている界李くんが気になって、内容が全然頭に入ってこなかった……。
寝ていることが先生にバレないかヒヤヒヤしてたから、なんだかすごく疲れてしまったのだ。
長く感じた午前中も終わり、お昼の時間がやってくる。
みんな各々机をくっつけて、仲のいい子とお昼を食べていた。
私は魔央くんたちに誘われて、柚瑠くんと界李くんの三人と机を合わせた。
天内くんを探したけど、教室にいない。
どこに行ったんだろう?
「──か、一華ってば」
「へ?」
ぼーっとしていた私は、慌てて横を向けば、魔央くんが箸でつまんだ唐揚げを私に近づけてきた。
「はい、あーん」
「あーん!?」
ガタッと椅子から転げ落ちそうになった。
同時に、「きゃあ!」と教室からも悲鳴が上がる。廊下にいた他のクラスの女の子たちも、悲鳴をあげていた。
魔央くんへの黄色い悲鳴がすごい。
……いや、みんなもお昼ご飯食べようよ?
お腹すいてないの!?
私がいま一番、考えなくちゃいけないのは魔央くんからの「あーん」をどう断わるか。
良い案が思い浮かばず、視線をさまよわせる。
ふと、廊下にいた女の子たちが持っている横断幕に目がいった。
「(I LOVE 魔央くん?)」
その下には小さく『黒羽魔央ファンクラブ一同』と書いてある。
……って、ファンクラブ!?
ファンクラブってことは、この女の子たちは、魔央くんが『推し』ってことだよね?
私なんかがみんなの『推し』から、あーんなんてされたら……、こ、ころされちゃうかも!?
魔央くんからの「あーん」を断る方法っ、何か、何かないかなっ!?
そうだっ……!
「一華? 急にどうしたの、ゆっくり食べないと喉に詰まらせるよ?」
「いいの! 私、早く食べなきゃ──うぐ!!」
「ちょ、イチカっ! ボクの方に飛ばさないでよっ?」
「柚瑠、そんなこと言わないの。ほら、お茶飲んで一華」
「んぐっ……はぁ、ありがとう魔央くん」
私の背中を優しく撫でてくれる魔央くんを見て、さらに「きゃー!」と悲鳴が上がった。
あーんされる前に、ご飯を食べ終わろう思ったんだけど、これって逆効果だったのかも……。
ちらりと前を見れば、柚瑠くんが「綺麗に食べないからだよ、まったくもう!」とプリプリ怒っている。
界李くんはというと……うん。黙々と食べていた。
私も女の子たちからの視線を気にするのはあきらめて、界李くんを見習い黙々と食べ進める。
──そんなこんなで。
中学に入って、はじめてできた友達は男の子三人。
……あれ、私、女の子の友達出来るのかな?
ちょっと不安になってきたよ……。
◇◇◆◇◇
放課後。
柚瑠くんと界李くんは、用事があるみたいで、先生の話が終わると急いで帰っていった。
混雑している教室の出入り口を見て、少したってからリュックを手に取り帰ろうとして、ふと隣の魔央くんを見る。
……あ、朝みたいに、一緒に帰ろうって誘われるかな?
いやいや、それは高望みしすぎだよ私。
う~ん、と悩んでいると魔央くんと目があってしまった。
「あっ、いや、えっと……!」
慌てる私を見て、困ったような笑みを浮かべた魔央くん。
「一華、俺も一緒に帰りたいのは山々なんだけど……今日は送ってあげられないんだ」
ごめんね、と魔央くんに謝られてしまった。
「ううんっ、謝らないで!? 私、一人で帰れるから! ぼっち行動は得意というか……!」
あぁもうっ。
魔央くんに謝らせちゃった……、私が悪いのに!
今度は悲しげな顔をした魔央くん。
私の前までくると、ぎゅうと抱きしめられた。
突然のことに、まず、みんなに見られちゃう! と焦ったけれど、教室には数人のクラスメイトしかいなかった。
でもその子たちも、私たちを見てササッと教室を出て行く。
魔央くんは私を抱きしめたまま動かない。
心配になって、背中をポンっと叩く。
「魔央くん?」
「本当に……、ごめんね」
「……大丈夫だから! 謝らないでよっ、ね?」
私の顔を覗き込む魔央くん。
とても切なげに見つめられて、ドキドキする。
「あー、離したくない。このまま家に持って帰りたい」
「もももっ!?」
「でも一華が困るから、やめとく」
魔央くんはテキパキと私にリュックを背負わせて、もう一度抱きしめてきた。
「気をつけてね、バイバイ」
「……うん。バイバイ、また明日ね魔央くん」
「ふふっ、また明日。一華」
──っていい気分だったのに。
「なんで忘れ物しちゃうかなぁ私!」
学校を出て五分ほどたったくらいで、忘れ物をしたことに気がづいた。
重たい足取りで教室に戻ると、一人、ぽつんと魔央くんが机に腰かけていた。
「あれ、魔央くんまだ帰らないの?」
「うん、ちょっとね。それより、一華こそどうしたの?」
「あはは……ちょっと忘れ物しちゃって」
「なら、はやく探して帰った方が良────いや、遅かったかな」
「?」
机の上に腰かけていた魔央くんが立ち上がる。
真剣な目つきで私のうしろ、教室の入り口の方を見ていた。
つられるように私も振り返れば、クラスメイトの男の子が教室に入ってきた。
ゆらりゆらりと、足元がおぼつかない。
立ち止まったかと思えば、頭をかきむしり、うずくまった。
そしてピクリとも動かなくなった。
なんだか怖い……けど、声をかけた方がいいよね?
「あ、あの、どうかしたの?」
「ううっ……じ……し」
「じ?」
「女子……女子……女子ぃ!!」
「きゃあ!」
クラスメイトは突然、こっちに向かって手を広げて走ってきた!
逃げなきゃいけないのに、恐怖で体が固まって動けない……!
「い、いやぁ……!」
「──大丈夫だよ、一華」
耳によく馴染む声と共に、うしろから抱きしめられた。
振り向くと、魔央くんが優しげな顔で私を見下ろしている。
「俺が守るから」
それだけ私に言うと、前を向いた魔央くん。
けれど私は、魔央くんのうしろに見える『あるもの』が気になった。
「──翼?」
コウモリのような黒い翼が、魔央くんの背中から生えている。
不思議と私は、それに触れてみたいと思った。
手を伸ばそうとしたら、頭にひびく絶叫が聞こえて思わず手を止める。
「ぐあぁぁぁ!!」
「低級悪魔のくせに、俺の一華を襲おうとするなんて許されると思う?」
様子のおかしかったクラスメイトを見れば、いつのまにか床に倒れていた。
隣で寝ている界李くんが気になって、内容が全然頭に入ってこなかった……。
寝ていることが先生にバレないかヒヤヒヤしてたから、なんだかすごく疲れてしまったのだ。
長く感じた午前中も終わり、お昼の時間がやってくる。
みんな各々机をくっつけて、仲のいい子とお昼を食べていた。
私は魔央くんたちに誘われて、柚瑠くんと界李くんの三人と机を合わせた。
天内くんを探したけど、教室にいない。
どこに行ったんだろう?
「──か、一華ってば」
「へ?」
ぼーっとしていた私は、慌てて横を向けば、魔央くんが箸でつまんだ唐揚げを私に近づけてきた。
「はい、あーん」
「あーん!?」
ガタッと椅子から転げ落ちそうになった。
同時に、「きゃあ!」と教室からも悲鳴が上がる。廊下にいた他のクラスの女の子たちも、悲鳴をあげていた。
魔央くんへの黄色い悲鳴がすごい。
……いや、みんなもお昼ご飯食べようよ?
お腹すいてないの!?
私がいま一番、考えなくちゃいけないのは魔央くんからの「あーん」をどう断わるか。
良い案が思い浮かばず、視線をさまよわせる。
ふと、廊下にいた女の子たちが持っている横断幕に目がいった。
「(I LOVE 魔央くん?)」
その下には小さく『黒羽魔央ファンクラブ一同』と書いてある。
……って、ファンクラブ!?
ファンクラブってことは、この女の子たちは、魔央くんが『推し』ってことだよね?
私なんかがみんなの『推し』から、あーんなんてされたら……、こ、ころされちゃうかも!?
魔央くんからの「あーん」を断る方法っ、何か、何かないかなっ!?
そうだっ……!
「一華? 急にどうしたの、ゆっくり食べないと喉に詰まらせるよ?」
「いいの! 私、早く食べなきゃ──うぐ!!」
「ちょ、イチカっ! ボクの方に飛ばさないでよっ?」
「柚瑠、そんなこと言わないの。ほら、お茶飲んで一華」
「んぐっ……はぁ、ありがとう魔央くん」
私の背中を優しく撫でてくれる魔央くんを見て、さらに「きゃー!」と悲鳴が上がった。
あーんされる前に、ご飯を食べ終わろう思ったんだけど、これって逆効果だったのかも……。
ちらりと前を見れば、柚瑠くんが「綺麗に食べないからだよ、まったくもう!」とプリプリ怒っている。
界李くんはというと……うん。黙々と食べていた。
私も女の子たちからの視線を気にするのはあきらめて、界李くんを見習い黙々と食べ進める。
──そんなこんなで。
中学に入って、はじめてできた友達は男の子三人。
……あれ、私、女の子の友達出来るのかな?
ちょっと不安になってきたよ……。
◇◇◆◇◇
放課後。
柚瑠くんと界李くんは、用事があるみたいで、先生の話が終わると急いで帰っていった。
混雑している教室の出入り口を見て、少したってからリュックを手に取り帰ろうとして、ふと隣の魔央くんを見る。
……あ、朝みたいに、一緒に帰ろうって誘われるかな?
いやいや、それは高望みしすぎだよ私。
う~ん、と悩んでいると魔央くんと目があってしまった。
「あっ、いや、えっと……!」
慌てる私を見て、困ったような笑みを浮かべた魔央くん。
「一華、俺も一緒に帰りたいのは山々なんだけど……今日は送ってあげられないんだ」
ごめんね、と魔央くんに謝られてしまった。
「ううんっ、謝らないで!? 私、一人で帰れるから! ぼっち行動は得意というか……!」
あぁもうっ。
魔央くんに謝らせちゃった……、私が悪いのに!
今度は悲しげな顔をした魔央くん。
私の前までくると、ぎゅうと抱きしめられた。
突然のことに、まず、みんなに見られちゃう! と焦ったけれど、教室には数人のクラスメイトしかいなかった。
でもその子たちも、私たちを見てササッと教室を出て行く。
魔央くんは私を抱きしめたまま動かない。
心配になって、背中をポンっと叩く。
「魔央くん?」
「本当に……、ごめんね」
「……大丈夫だから! 謝らないでよっ、ね?」
私の顔を覗き込む魔央くん。
とても切なげに見つめられて、ドキドキする。
「あー、離したくない。このまま家に持って帰りたい」
「もももっ!?」
「でも一華が困るから、やめとく」
魔央くんはテキパキと私にリュックを背負わせて、もう一度抱きしめてきた。
「気をつけてね、バイバイ」
「……うん。バイバイ、また明日ね魔央くん」
「ふふっ、また明日。一華」
──っていい気分だったのに。
「なんで忘れ物しちゃうかなぁ私!」
学校を出て五分ほどたったくらいで、忘れ物をしたことに気がづいた。
重たい足取りで教室に戻ると、一人、ぽつんと魔央くんが机に腰かけていた。
「あれ、魔央くんまだ帰らないの?」
「うん、ちょっとね。それより、一華こそどうしたの?」
「あはは……ちょっと忘れ物しちゃって」
「なら、はやく探して帰った方が良────いや、遅かったかな」
「?」
机の上に腰かけていた魔央くんが立ち上がる。
真剣な目つきで私のうしろ、教室の入り口の方を見ていた。
つられるように私も振り返れば、クラスメイトの男の子が教室に入ってきた。
ゆらりゆらりと、足元がおぼつかない。
立ち止まったかと思えば、頭をかきむしり、うずくまった。
そしてピクリとも動かなくなった。
なんだか怖い……けど、声をかけた方がいいよね?
「あ、あの、どうかしたの?」
「ううっ……じ……し」
「じ?」
「女子……女子……女子ぃ!!」
「きゃあ!」
クラスメイトは突然、こっちに向かって手を広げて走ってきた!
逃げなきゃいけないのに、恐怖で体が固まって動けない……!
「い、いやぁ……!」
「──大丈夫だよ、一華」
耳によく馴染む声と共に、うしろから抱きしめられた。
振り向くと、魔央くんが優しげな顔で私を見下ろしている。
「俺が守るから」
それだけ私に言うと、前を向いた魔央くん。
けれど私は、魔央くんのうしろに見える『あるもの』が気になった。
「──翼?」
コウモリのような黒い翼が、魔央くんの背中から生えている。
不思議と私は、それに触れてみたいと思った。
手を伸ばそうとしたら、頭にひびく絶叫が聞こえて思わず手を止める。
「ぐあぁぁぁ!!」
「低級悪魔のくせに、俺の一華を襲おうとするなんて許されると思う?」
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