桃の花が咲く頃、俺たちは恋を知る

木野葉ゆる

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衝撃の初体験

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 真矢は後悔していた。
 
 佑のことは好きだ。始めは気に入らなかった。陸上部の自分よりも足が速いのも、背が高いのも、無駄に顔がいいのも、なんだか癪に触る。でも、どうしても気になってしまうから、真矢は佑を観察していた。
 そうしたら、嫌でも気が付いてしまった。
 佑は馬鹿だけど、いい奴だった。裏表がなく、人に親切で、明るくて、友達想いで、真っ直ぐだった。
 告白された時は、まだ自分の感情の正体を自覚してなかった。 
 でもお付き合いを始めて、近くにいれば、どんどん佑に惹かれていく心を偽れなくなった。
 
 だからといって、何でも受け入れられるかと言えば、そんなことはない。
 真矢は拳を握りしめる。
「なんで俺が下なんだ! 」
 真矢の叫びは、陸上部の部室の中で木霊する。
 放課後も遅い時間、誰にも聞かれなかったのは、果たして幸いだったのか。
 真矢は可愛い顔を歪ませた。
 
 佑にホテルに誘われて、真矢は遂にこの日がきたのか、と、ドキドキしながら頷いた。
 繁華街の裏のラブホは、物珍しくて、でもそれどころじゃないくらい、真矢は緊張していた。
 たぶん佑も同じだったのだろう。
 小綺麗な部屋で、ガラス張りの浴室に、2人で入るのは恥ずかしいからと、別々に入った。
 裸にバスローブを着て、ダブルベットに座って佑を待つのは、なんだか心許ない感じがした。
 けれどもしっかりしなければ、これから自分は佑を抱くのだから。
 真矢は本気でそう思っていたのに、佑は全くその気はなかった。
 佑こそが、真矢を抱く気満々だったのだ。
 
 その日は結局、お互いの性器を握り合いっこしただけで終わってしまった。
 
「真矢が納得するまで待つよ」
 佑はそう言ったけれど、納得するのは佑の方だと、真矢は思う。
 確かに、14センチも背が高い佑は、体重だって真矢よりもずっと重い。
 でも自分だって男なのだ。
 好きな相手は抱きたいと思う。
 だから、受け身が怖いからなんて理由ではない……はずなんだ。
 触れ合いたい気持ちはいっぱいあるのに、うまくいかない。
 真矢は泣きたいような気持ちだった。
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