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4章.鳴門の渦のように‥(足利鳴門)
1.一人っ子の鳴門にとって、幼馴染の兄弟のことは「絵に描かれた幸せ」だったんだ。
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僕の名前は足利鳴門。足利家の一人娘だ。(人前では「もう大人だから」僕っていうのは止めたんだけど、心の中でいろいろ考える時くらい許してほしい。わざわざ訂正とかしてたら気が散っちゃうからね)
僕が僕って言いだしたのは、別に男に憧れてるとか、男になりたかったとか‥じゃない。
ただ、何となく「カッコイイな」って思ったからだ。
カッコイイ、っていって誰か憧れてる人がいて、その人が自分の事僕って呼んでたからとかじゃない。
ただ何となく「僕って呼ぶのがカッコイイ」って思ったから、それだけだ。
誰かの事意識したりとかは、別にしない。
僕には喜和ちゃん以外そう話す人もいないしね。喜和ちゃんは‥兄弟じゃないけど、それ位親しい人だ。
‥でも、兄弟じゃない。喜和ちゃんみたいに、僕にはホントの兄弟はいない。
父さんと母さんとの(血がつながってる)たった一人の娘ってだけで、僕には他にも何人かの(義理の)兄弟がいる。
足利家の名前を継ぐ「才能のある跡取り」がお家存続の為に必要だからだ。
その為に、何人もの「才能のある子ども」が僕の兄弟として連れてこられた。‥僕が生まれる前から、僕の家にはそういう子供たちがいて、教育を受けさせられていた。
後々僕の婿になる為の子供か? っていうと‥そうでもないらしい。
結婚は僕がホントに好きな人とすればいいって父さんたはいつも言ってる。
「家のことは兄弟たちがいるわけだしな。‥徳川の三男坊でもいいんだぞ」
って揶揄ってくるのはちょっと鬱陶しいんだけどね。
そんな名ばかりの兄弟たちだから、兄妹だっていってもホントに形だけのことで、その人たちの事兄だとか弟だとか呼んだことはない。(呼べって言われたこともない)その人たちも僕の事妹だとか姉だとか思ってないだろう。
‥僕は呼びたいなって一時期思ったことがあったんだ(実はね)。幼馴染の影響で「兄弟」ってのに憧れて‥「じゃあ僕も‥」って呼んでみようとしたんだけど‥なんかタイミングが合わなかったし、いざ呼んでみようと思ったら変に照れちゃって出来なかった。
今までそう話もしたことなかった子に急に「今日から兄さんって呼んでいい? 」って聞かれたら‥変だよね。
ってそのときは自分を納得させようとしたんだけど‥この頃その「ホントの理由」に気付いたんだ。
それは‥あの人たちには‥もう可笑しいくらい「人間性」ってものがないんだ。
あの人たちにとって興味関心があるのは情報で、情報が全てで、その情報を収集する方法を考えることだけが生活の全てで、楽しみなんだ。
だから、それ以外のことになんて何の興味もないんだ。
朝は皆揃ってご飯を食べるんだけど、その際も頭の中では情報の事ばっかりで、「頭に栄養を補給する」為だけに食事をとってるって感じ。
それも、全員!
時々父さんが
「この頃どうだ? 」
って話題を振っても
「問題ないです」
としか答えないんだ。
義理とはいえ、父親に対する態度でもないし、当主(偉い人)に対しての態度でもない。
それは僕に対しても同じで、僕は一応足利家の「お嬢様」なわけなんだけど、その人たちにはそんなこともどうでもいいみたいで、お嬢様扱いされたこともない。
姉でも兄弟でも、当主様の娘でもない。
ただ、一緒に住んでるだけって感じ。
‥みんなそうなんだからそんな奴ら同士情報交換でもすれば~って思うけど、それも、ない。
「あ、その方法いいかも! 俺もやってみよ! 」
とか協力し合えばいいのに、って思う。(でも、しないんだよな~)
‥そんな感じで、僕とその子たちの距離や、その子たち同士の距離は‥一緒に住んでで形式上兄弟(妹)だのに正真正銘他人の幼馴染よりずっと遠かった。
寄せ集め家族。
それは別に我が家に限ったことじゃなくって、例えば、情報分析を専門にしている上杉家だってそうだ。
僕らは、上杉の依頼の下で情報を収集するから、頻繁に家に出入りする上杉の人間と凄く親しくって、ここの子供である僕は、幼い頃からまるで親戚のオジサンのように親しくしてもらっていた。
上杉の当主はいかつい顔をしてる割に子供に優しかったんだ。(だけど、「おっちゃんおっちゃん」って言って寄って行くのは僕だけだったけど。他の子供は、例のごとく興味なしって顔をしてたな)
上杉の当主は結婚をしていなかったけど、「才能のある」跡継ぎの子供を沢山養子にして育てていた。‥本人が貰って来たっていうより上杉のおっちゃんに傾倒して家に居ついたって感じかな。おっちゃんはそんな子たちを追い出したりする人じゃないから。
結婚してないんだけど、別に「女の人に興味がない男色家」とかじゃない。あの人は‥性的嗜好が男か女か以前に、そういう‥性欲みたいなものと無縁に生きてるて感じの人。(きっと生涯童貞って奴なんだろう)仙人なんじゃないかな。
そういうのより、「軍師」‥軍事作戦部の細川家の当主と一緒になってあれこれ「血生臭いこと」を考えるが何よりも面白いって人なんだ。(あ、仙人は血生臭いこと考えないか。前言撤回っ)
軍部の細川と、情報分析の上杉。
細川の御当主は女が大好きな遊び人。(ハニトラ班のお姉さんたちは全員この人のお手付きって話だし)
線の細い美青年とかじゃない。どちらかというと骨太‥というか、筋張った親父。だけど、スリムでカッコよく、お洒落で‥年齢を感じさせない「ダンディなイケオジ」って感じ。
反対に上杉の御当主はお洒落とかに無頓着って感じの「オッサン」なんだ。流石に髪の毛ぼうぼうとかじゃない(寧ろ「鬱陶しいのは嫌いだ」ってこまめに刈り込んでいる)けど、無精ひげ生えてるし、眼鏡のフレームも「適当に買ってきた」って感じの奴を使ってる。だけど、その眼鏡の向こうのちょっとたれ目がちの切れ長の目は、ちょっと渋くて、「いぶし銀」って感じするんだよね。ダンディではなく、渋い職人タイプって感じかな。(皆には同意してもらえない。「え~、ただの偏屈なオッサンじゃん?? 」って言われちゃってます。)
そんな感じで‥この二人は性格も見た目も全然違うのに‥なぜか、昔っから凄く仲がよくってプライベートでも一緒にのんでる姿とかよく見る。
なんとなく気が合うのかな?
‥そういうことってあるよね。
僕の幼馴染の喜和ちゃんと僕も割と違う。
二つ歳が上だからってのもあるんだろうけど、喜和ちゃんは凄く落ち着いてる。すぐにかっとなる僕と違って、感情をコントロール出来てるって感じなんだ。
いつも穏やかで落ち着いてる。
それは、大人っぽいってのとはちょっとちがうんだよね。大人ぶってる‥のとも違う。
あれだ。「そういう風に教えられてきたから、そうするもんなんだって思ってます」って感じ。
喜和ちゃんは、「ずっとそう教えられてきたから」大人のようにふるまうのに慣れた子供って感じ。
だけど、喜和ちゃんだって昔からずっとそうだったわけでもない。
って言っても、他所の子供と比べたらずっと「大人っぽい子供」ではあったんだけど。
昔(三年ほど前かな? )義直様が僕に、
「今の喜和は、大人のようにふるまうのに慣れてるだけで、ホントに大人なわけでは無いから、まだ中身はスッカスカなんだ。張りぼてみたいな感じだね。だから、ちょっと強くついたら倒れちゃう。
‥だのに、倒れても泣かないんんだ。面白くないよね~。
あの子は、そういうことも知らずに育っちゃったんだ。可哀そうだよね」
って言ったことがあった。(そのあとすぐに「喜和には、僕がこんなこと言ってたってことは内緒ね」って口止めしてたけど)
それから、
「これからね、いっぱい色んな事を学んで感じて考えて体験して‥中身も伴った大人になってほしい。
だから、鳴門ちゃん、喜和といっぱい遊んであげてね。
いっぱい遊んで、いっぱい喧嘩して‥それぞれ「ホントの」大人になっていってね。
‥だけど、喜和が鳴門ちゃんにイジワルしたら「兄ちゃん」に言ってね。ボコってあげるから‥」
って付け加えた。
‥ボコってあげるからっていう時だけはやけに楽しそうな表情をしていた。楽しそう‥っていうかにや~って「悪い」笑顔だったけど‥、そういうのも含めて「兄弟っていいな」って思ったものだった。
そういえば、あれがあって兄弟って存在に憧れたのかもしれない。
でも、不思議と
「義直様が僕のお兄ちゃんだったらな」
とは思わなかったな。
「喜和ちゃんのお兄ちゃん、いいな」って思っただけ。
‥なんでだろ?
ああ‥そうか。
あの後‥喜和ちゃんがホントに義直様にボコられてるの見て「兄弟は羨ましいけど、傍から見るだけでいいや」って思ったんだ。
‥無理やりそう思い込み‥納得することにしたんだ。
羨ましいけど、現実味がない。
‥絶対に入り込めない‥「絵に描かれた幸せ」
それを切望する自分は、惨めで、カッコ悪く、あまりにも哀れに思えたんだ。
僕が僕って言いだしたのは、別に男に憧れてるとか、男になりたかったとか‥じゃない。
ただ、何となく「カッコイイな」って思ったからだ。
カッコイイ、っていって誰か憧れてる人がいて、その人が自分の事僕って呼んでたからとかじゃない。
ただ何となく「僕って呼ぶのがカッコイイ」って思ったから、それだけだ。
誰かの事意識したりとかは、別にしない。
僕には喜和ちゃん以外そう話す人もいないしね。喜和ちゃんは‥兄弟じゃないけど、それ位親しい人だ。
‥でも、兄弟じゃない。喜和ちゃんみたいに、僕にはホントの兄弟はいない。
父さんと母さんとの(血がつながってる)たった一人の娘ってだけで、僕には他にも何人かの(義理の)兄弟がいる。
足利家の名前を継ぐ「才能のある跡取り」がお家存続の為に必要だからだ。
その為に、何人もの「才能のある子ども」が僕の兄弟として連れてこられた。‥僕が生まれる前から、僕の家にはそういう子供たちがいて、教育を受けさせられていた。
後々僕の婿になる為の子供か? っていうと‥そうでもないらしい。
結婚は僕がホントに好きな人とすればいいって父さんたはいつも言ってる。
「家のことは兄弟たちがいるわけだしな。‥徳川の三男坊でもいいんだぞ」
って揶揄ってくるのはちょっと鬱陶しいんだけどね。
そんな名ばかりの兄弟たちだから、兄妹だっていってもホントに形だけのことで、その人たちの事兄だとか弟だとか呼んだことはない。(呼べって言われたこともない)その人たちも僕の事妹だとか姉だとか思ってないだろう。
‥僕は呼びたいなって一時期思ったことがあったんだ(実はね)。幼馴染の影響で「兄弟」ってのに憧れて‥「じゃあ僕も‥」って呼んでみようとしたんだけど‥なんかタイミングが合わなかったし、いざ呼んでみようと思ったら変に照れちゃって出来なかった。
今までそう話もしたことなかった子に急に「今日から兄さんって呼んでいい? 」って聞かれたら‥変だよね。
ってそのときは自分を納得させようとしたんだけど‥この頃その「ホントの理由」に気付いたんだ。
それは‥あの人たちには‥もう可笑しいくらい「人間性」ってものがないんだ。
あの人たちにとって興味関心があるのは情報で、情報が全てで、その情報を収集する方法を考えることだけが生活の全てで、楽しみなんだ。
だから、それ以外のことになんて何の興味もないんだ。
朝は皆揃ってご飯を食べるんだけど、その際も頭の中では情報の事ばっかりで、「頭に栄養を補給する」為だけに食事をとってるって感じ。
それも、全員!
時々父さんが
「この頃どうだ? 」
って話題を振っても
「問題ないです」
としか答えないんだ。
義理とはいえ、父親に対する態度でもないし、当主(偉い人)に対しての態度でもない。
それは僕に対しても同じで、僕は一応足利家の「お嬢様」なわけなんだけど、その人たちにはそんなこともどうでもいいみたいで、お嬢様扱いされたこともない。
姉でも兄弟でも、当主様の娘でもない。
ただ、一緒に住んでるだけって感じ。
‥みんなそうなんだからそんな奴ら同士情報交換でもすれば~って思うけど、それも、ない。
「あ、その方法いいかも! 俺もやってみよ! 」
とか協力し合えばいいのに、って思う。(でも、しないんだよな~)
‥そんな感じで、僕とその子たちの距離や、その子たち同士の距離は‥一緒に住んでで形式上兄弟(妹)だのに正真正銘他人の幼馴染よりずっと遠かった。
寄せ集め家族。
それは別に我が家に限ったことじゃなくって、例えば、情報分析を専門にしている上杉家だってそうだ。
僕らは、上杉の依頼の下で情報を収集するから、頻繁に家に出入りする上杉の人間と凄く親しくって、ここの子供である僕は、幼い頃からまるで親戚のオジサンのように親しくしてもらっていた。
上杉の当主はいかつい顔をしてる割に子供に優しかったんだ。(だけど、「おっちゃんおっちゃん」って言って寄って行くのは僕だけだったけど。他の子供は、例のごとく興味なしって顔をしてたな)
上杉の当主は結婚をしていなかったけど、「才能のある」跡継ぎの子供を沢山養子にして育てていた。‥本人が貰って来たっていうより上杉のおっちゃんに傾倒して家に居ついたって感じかな。おっちゃんはそんな子たちを追い出したりする人じゃないから。
結婚してないんだけど、別に「女の人に興味がない男色家」とかじゃない。あの人は‥性的嗜好が男か女か以前に、そういう‥性欲みたいなものと無縁に生きてるて感じの人。(きっと生涯童貞って奴なんだろう)仙人なんじゃないかな。
そういうのより、「軍師」‥軍事作戦部の細川家の当主と一緒になってあれこれ「血生臭いこと」を考えるが何よりも面白いって人なんだ。(あ、仙人は血生臭いこと考えないか。前言撤回っ)
軍部の細川と、情報分析の上杉。
細川の御当主は女が大好きな遊び人。(ハニトラ班のお姉さんたちは全員この人のお手付きって話だし)
線の細い美青年とかじゃない。どちらかというと骨太‥というか、筋張った親父。だけど、スリムでカッコよく、お洒落で‥年齢を感じさせない「ダンディなイケオジ」って感じ。
反対に上杉の御当主はお洒落とかに無頓着って感じの「オッサン」なんだ。流石に髪の毛ぼうぼうとかじゃない(寧ろ「鬱陶しいのは嫌いだ」ってこまめに刈り込んでいる)けど、無精ひげ生えてるし、眼鏡のフレームも「適当に買ってきた」って感じの奴を使ってる。だけど、その眼鏡の向こうのちょっとたれ目がちの切れ長の目は、ちょっと渋くて、「いぶし銀」って感じするんだよね。ダンディではなく、渋い職人タイプって感じかな。(皆には同意してもらえない。「え~、ただの偏屈なオッサンじゃん?? 」って言われちゃってます。)
そんな感じで‥この二人は性格も見た目も全然違うのに‥なぜか、昔っから凄く仲がよくってプライベートでも一緒にのんでる姿とかよく見る。
なんとなく気が合うのかな?
‥そういうことってあるよね。
僕の幼馴染の喜和ちゃんと僕も割と違う。
二つ歳が上だからってのもあるんだろうけど、喜和ちゃんは凄く落ち着いてる。すぐにかっとなる僕と違って、感情をコントロール出来てるって感じなんだ。
いつも穏やかで落ち着いてる。
それは、大人っぽいってのとはちょっとちがうんだよね。大人ぶってる‥のとも違う。
あれだ。「そういう風に教えられてきたから、そうするもんなんだって思ってます」って感じ。
喜和ちゃんは、「ずっとそう教えられてきたから」大人のようにふるまうのに慣れた子供って感じ。
だけど、喜和ちゃんだって昔からずっとそうだったわけでもない。
って言っても、他所の子供と比べたらずっと「大人っぽい子供」ではあったんだけど。
昔(三年ほど前かな? )義直様が僕に、
「今の喜和は、大人のようにふるまうのに慣れてるだけで、ホントに大人なわけでは無いから、まだ中身はスッカスカなんだ。張りぼてみたいな感じだね。だから、ちょっと強くついたら倒れちゃう。
‥だのに、倒れても泣かないんんだ。面白くないよね~。
あの子は、そういうことも知らずに育っちゃったんだ。可哀そうだよね」
って言ったことがあった。(そのあとすぐに「喜和には、僕がこんなこと言ってたってことは内緒ね」って口止めしてたけど)
それから、
「これからね、いっぱい色んな事を学んで感じて考えて体験して‥中身も伴った大人になってほしい。
だから、鳴門ちゃん、喜和といっぱい遊んであげてね。
いっぱい遊んで、いっぱい喧嘩して‥それぞれ「ホントの」大人になっていってね。
‥だけど、喜和が鳴門ちゃんにイジワルしたら「兄ちゃん」に言ってね。ボコってあげるから‥」
って付け加えた。
‥ボコってあげるからっていう時だけはやけに楽しそうな表情をしていた。楽しそう‥っていうかにや~って「悪い」笑顔だったけど‥、そういうのも含めて「兄弟っていいな」って思ったものだった。
そういえば、あれがあって兄弟って存在に憧れたのかもしれない。
でも、不思議と
「義直様が僕のお兄ちゃんだったらな」
とは思わなかったな。
「喜和ちゃんのお兄ちゃん、いいな」って思っただけ。
‥なんでだろ?
ああ‥そうか。
あの後‥喜和ちゃんがホントに義直様にボコられてるの見て「兄弟は羨ましいけど、傍から見るだけでいいや」って思ったんだ。
‥無理やりそう思い込み‥納得することにしたんだ。
羨ましいけど、現実味がない。
‥絶対に入り込めない‥「絵に描かれた幸せ」
それを切望する自分は、惨めで、カッコ悪く、あまりにも哀れに思えたんだ。
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