7 / 18
3章.継いでいくもの、変えていくもの(徳川喜和)
1.昔の確執なんて知ったこっちゃないって思う僕は、それよりも‥幼馴染が可愛くって仕方が無い。(やっぱお年頃だから)
しおりを挟む
いつもの様に家の塀に並んで座って団子を頬張っている二人の子供。
そんな様子を、庭で落ち葉を掃いている家政婦が微笑ましいって表情で眺めている。
さわさわとヤシャブシの樹の葉を揺らし、風が過ぎていく。
初夏の風は、さわやかな黄緑色をしている。
「あ~いい天気~。
勉強も終わったし、素振りも終わったし! こののんびりした時間が私は好きだな」
ん~と鳴門が伸びをするのを幼馴染の喜和はチラリと視線だけで見た。
鳴門は今年の正月で8歳になった。喜和の二歳年下で、二人は兄妹のように育ってきた。
と‥
兄妹だと思っているのは鳴門だけで、喜和はこの年下の幼馴染のことが昔から異性として好きだった。
黒目がちの勝気な瞳も、艶やかな黒髪も、白いすべすべした肌も、
明るい笑顔も、おおらかな性格も、
全部が好きだった。
(まだ)付き合うとか結婚とか‥そういう話を彼女にする気は無いけど‥彼女に他の男を近づけない様に気をつけて来た。
いずれ、彼女とそんな話が出来る日が来るように、「ただの兄」ポジションにだけは収まらないように‥って気をつけている。
そこら辺が難しんだけどね~。
こっそりため息をつくと、鳴門が首を傾げて
「どうかした? 」
って‥顔を下から覗き込んできた。
「わ! 」
‥近い。
「な‥なんでもない!! 」
「そう? 具合悪いんだったら薬貰ってくるからね? 言ってね? 」
って言って、ぴょんと塀から飛び降りた。
一つにくくった長い三つ編みがひゅっと‥身体より遅れて降りていく。
白い詰襟には、足利家の特徴である群青色のラインが入っている。
一方の貴和の白い詰襟のラインは、徳川家を表すえんじ色だ。
足利家だ徳川家だっていって、別に、戦国時代の有名武将の末裔とかじゃない。
ただ、僕らの御先祖様が「生き残り貴族」って名乗った時に、面白半分で名付けただけだ。
あの時‥今の富田の先祖に絶縁状を叩きつけて国家から独立を宣言した僕らの御先祖様たち。
揃いも揃って大金持ちだった彼らは、富田(先祖)に喧嘩を売る前に、全国の「よさげな」山林を買い占めてたんだ。
で、予定通り‥大喧嘩して、独立宣言して、そこに引きこもっちゃったってわけ。
(あの頃の)政界に影響力があった一派の突然の国家からの引退宣言に、当時はもうてんやわんやになった‥らしいけど、今みたいにメディアが充実してなかった時代だから、そんなに記録は残ってない。
っていうか‥政府にしたら「色々自分たちにとって都合の悪いこと省略してたらなんも残せなくなったよ」って感じなのかもしれない。(多分こっちが正しい)
まあ‥僕が言えることは
「御先祖様たちって大人気なかったんだな~」
ってこと。
で、時は流れて、その時の富田総理の子孫が今の総理大臣になってるって訳。
頭良さそうだし、無駄とかが嫌いそうな彼は、だけど、最も無駄なことに‥僕らのことが目障りで仕方が無いらしく、(今まで世間ではあえて触れないでおこうと‥)臭い物に蓋状態だった僕らにことあるごとにちょっかいかけてきてるってわけ。
それも、正々堂々と正面から‥じゃなくね。
「だけど、バレバレなんだよね~」
こっちには、優秀な諜報部員もいるし、暗殺部隊もいるし‥
一応、国家側にもこっちの味方がいる。
その、諜報部員が足利家で、暗殺を担当しているのが徳川家で、国家側にいる見方が豊臣家って訳。
他にも、武器調達係(伊達家)だとかもいる。
そればっかりしてきてる筋金入りの僕たちに喧嘩売るとか‥馬鹿じゃないのかなあ‥って思う。
‥それとも‥僕らは引きこもってるから「今の新技術を持ってしたら何とかなるだろ」とか思われてる??
僕らの事、原始人だとでも思ってる??
確かに僕らは税金も払ってないし、電気代も払ってないけど、別に文明に取り残された生活しているわけでは無い。情報から取り残されてるわけでもない。確かに、妨害電波とか出して、「普通に」電波とか使えない様にしてるみたいだけど‥そういうことされたら、余計に燃えるよね?? なんとかしてやるぜ!! ってなるよね??
電力とかは自家発電してるんだ。
だから、(電力会社と契約してなくても)電気を利用した生活してるし、携帯電話だって使えるし、ネットだって見れてるんだ。
全部(奴らに言わせれば)違法で。
頭と金と腕があれば出来ないことはないね、って話。
「お互い干渉しないで暮らしていけばいいと思うけどね~。まあ、税金も払わず彼らのルール(法律)にも従わない僕らは邪魔だとは‥思うけどね」
ぼんやりと‥でも、自分が思った時間以上に考え事をしていたみたいで‥
気付くと、訝そうな表情で見上げている鳴門の大きな目と目が合って、ドキリとした。(love的な意味ではなく、わ! びっくりした的なドキ! だ)
いつまでたっても自分の後を追ってこない幼馴染を心配して戻ってきたんだ。
「大丈夫? 」
心配そうに自分を見上げる幼馴染の大きくてキラキラした瞳にどくんと心臓が跳ねる。
「え‥うん。何でもない。ちょっと考え事してただけ」
へへって笑って
ふわり、と塀から飛び降りる。
たん‥とも音を立てずに塀から降りた喜和を見て、鳴門が目をキラキラと輝かせる。
「やっぱ喜和ちゃんは凄いな~。私はやっぱり音がしちゃうもんなあ‥」
ぷうと頬を膨らませて‥悔しがる幼馴染がやっぱり可愛くって仕方が無い喜和だった。
そんな様子を、庭で落ち葉を掃いている家政婦が微笑ましいって表情で眺めている。
さわさわとヤシャブシの樹の葉を揺らし、風が過ぎていく。
初夏の風は、さわやかな黄緑色をしている。
「あ~いい天気~。
勉強も終わったし、素振りも終わったし! こののんびりした時間が私は好きだな」
ん~と鳴門が伸びをするのを幼馴染の喜和はチラリと視線だけで見た。
鳴門は今年の正月で8歳になった。喜和の二歳年下で、二人は兄妹のように育ってきた。
と‥
兄妹だと思っているのは鳴門だけで、喜和はこの年下の幼馴染のことが昔から異性として好きだった。
黒目がちの勝気な瞳も、艶やかな黒髪も、白いすべすべした肌も、
明るい笑顔も、おおらかな性格も、
全部が好きだった。
(まだ)付き合うとか結婚とか‥そういう話を彼女にする気は無いけど‥彼女に他の男を近づけない様に気をつけて来た。
いずれ、彼女とそんな話が出来る日が来るように、「ただの兄」ポジションにだけは収まらないように‥って気をつけている。
そこら辺が難しんだけどね~。
こっそりため息をつくと、鳴門が首を傾げて
「どうかした? 」
って‥顔を下から覗き込んできた。
「わ! 」
‥近い。
「な‥なんでもない!! 」
「そう? 具合悪いんだったら薬貰ってくるからね? 言ってね? 」
って言って、ぴょんと塀から飛び降りた。
一つにくくった長い三つ編みがひゅっと‥身体より遅れて降りていく。
白い詰襟には、足利家の特徴である群青色のラインが入っている。
一方の貴和の白い詰襟のラインは、徳川家を表すえんじ色だ。
足利家だ徳川家だっていって、別に、戦国時代の有名武将の末裔とかじゃない。
ただ、僕らの御先祖様が「生き残り貴族」って名乗った時に、面白半分で名付けただけだ。
あの時‥今の富田の先祖に絶縁状を叩きつけて国家から独立を宣言した僕らの御先祖様たち。
揃いも揃って大金持ちだった彼らは、富田(先祖)に喧嘩を売る前に、全国の「よさげな」山林を買い占めてたんだ。
で、予定通り‥大喧嘩して、独立宣言して、そこに引きこもっちゃったってわけ。
(あの頃の)政界に影響力があった一派の突然の国家からの引退宣言に、当時はもうてんやわんやになった‥らしいけど、今みたいにメディアが充実してなかった時代だから、そんなに記録は残ってない。
っていうか‥政府にしたら「色々自分たちにとって都合の悪いこと省略してたらなんも残せなくなったよ」って感じなのかもしれない。(多分こっちが正しい)
まあ‥僕が言えることは
「御先祖様たちって大人気なかったんだな~」
ってこと。
で、時は流れて、その時の富田総理の子孫が今の総理大臣になってるって訳。
頭良さそうだし、無駄とかが嫌いそうな彼は、だけど、最も無駄なことに‥僕らのことが目障りで仕方が無いらしく、(今まで世間ではあえて触れないでおこうと‥)臭い物に蓋状態だった僕らにことあるごとにちょっかいかけてきてるってわけ。
それも、正々堂々と正面から‥じゃなくね。
「だけど、バレバレなんだよね~」
こっちには、優秀な諜報部員もいるし、暗殺部隊もいるし‥
一応、国家側にもこっちの味方がいる。
その、諜報部員が足利家で、暗殺を担当しているのが徳川家で、国家側にいる見方が豊臣家って訳。
他にも、武器調達係(伊達家)だとかもいる。
そればっかりしてきてる筋金入りの僕たちに喧嘩売るとか‥馬鹿じゃないのかなあ‥って思う。
‥それとも‥僕らは引きこもってるから「今の新技術を持ってしたら何とかなるだろ」とか思われてる??
僕らの事、原始人だとでも思ってる??
確かに僕らは税金も払ってないし、電気代も払ってないけど、別に文明に取り残された生活しているわけでは無い。情報から取り残されてるわけでもない。確かに、妨害電波とか出して、「普通に」電波とか使えない様にしてるみたいだけど‥そういうことされたら、余計に燃えるよね?? なんとかしてやるぜ!! ってなるよね??
電力とかは自家発電してるんだ。
だから、(電力会社と契約してなくても)電気を利用した生活してるし、携帯電話だって使えるし、ネットだって見れてるんだ。
全部(奴らに言わせれば)違法で。
頭と金と腕があれば出来ないことはないね、って話。
「お互い干渉しないで暮らしていけばいいと思うけどね~。まあ、税金も払わず彼らのルール(法律)にも従わない僕らは邪魔だとは‥思うけどね」
ぼんやりと‥でも、自分が思った時間以上に考え事をしていたみたいで‥
気付くと、訝そうな表情で見上げている鳴門の大きな目と目が合って、ドキリとした。(love的な意味ではなく、わ! びっくりした的なドキ! だ)
いつまでたっても自分の後を追ってこない幼馴染を心配して戻ってきたんだ。
「大丈夫? 」
心配そうに自分を見上げる幼馴染の大きくてキラキラした瞳にどくんと心臓が跳ねる。
「え‥うん。何でもない。ちょっと考え事してただけ」
へへって笑って
ふわり、と塀から飛び降りる。
たん‥とも音を立てずに塀から降りた喜和を見て、鳴門が目をキラキラと輝かせる。
「やっぱ喜和ちゃんは凄いな~。私はやっぱり音がしちゃうもんなあ‥」
ぷうと頬を膨らませて‥悔しがる幼馴染がやっぱり可愛くって仕方が無い喜和だった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
リインカーネーション
たかひらひでひこ
SF
いく度もの転生、再びの出会いを繰り返す、えにしの者たち。
それぞれが綾なす人生は、どう移り変わっていくのか。
オレは、新しき出会いに、めまぐるしく運命を変遷させる。
Wanderer’s Steel Heart
蒼波
SF
もう何千年、何万年前の話だ。
数多くの大国、世界中の力ある強者達が「世界の意思」と呼ばれるものを巡って血を血で洗う、大地を空の薬莢で埋め尽くす程の大戦争が繰り広げられた。命は一発の銃弾より軽く、当時、最新鋭の技術であった人型兵器「強き心臓(ストレングス・ハート)」が主軸を握ったこの惨禍の果てに人類は大きくその数を減らしていった…
お騒がせ銀河婦警セラとミーチャ♡百合の華咲く捜査線
YHQ337IC
SF
―絶対正義を振りかざす者は己の窮地など夢想だにしないか、敢えて無視することでゆるぎなく力を行使するのであろう。
それは、信仰と呼び換えてもいい。だから、イオナ・フローレンスは人を殺すことにした。
超長距離移民船団に悪役宣教師令嬢が爆誕した。彼女は己の正義を実行すべく移民政策の破壊を企てる。巻き添えも厭わない大胆不敵な女刑事セラは狂信的テロ教団を追う。
十万トン級の航空戦艦を使役する女捜査官たちの事件簿
SEVEN TRIGGER
匿名BB
SF
20xx年、科学のほかに魔術も発展した現代世界、伝説の特殊部隊「SEVEN TRIGGER」通称「S.T」は、かつて何度も世界を救ったとされる世界最強の特殊部隊だ。
隊員はそれぞれ1つの銃器「ハンドガン」「マシンガン」「ショットガン」「アサルトライフル」「スナイパーライフル」「ランチャー」「リボルバー」を極めたスペシャリストによって構成された部隊である。
その中で「ハンドガン」を極め、この部隊の隊長を務めていた「フォルテ・S・エルフィー」は、ある事件をきっかけに日本のとある港町に住んでいた。
長年の戦場での生活から離れ、珈琲カフェを営みながら静かに暮らしていたフォルテだったが、「セイナ・A・アシュライズ」との出会いをきっかけに、再び戦いの世界に身を投じていくことになる。
マイペースなフォルテ、生真面目すぎるセイナ、性格の合わない2人はケンカしながらも、互いに背中を預けて悪に立ち向かう。現代SFアクション&ラブコメディー
BLUE TONIC 【1巻】
平木明日香
SF
西暦2111年。
謎のウィルスが蔓延した世界。
人は体内に埋め込まれたナノマシンによって管理、統制されていた。
通称クラウドシステムと呼ばれるこの「制御プログラム」は、人類の増加による地球環境の悪化によって計画された極秘プロジェクトだった。
全人類へナノマシンを埋め込むために用いられた人工ウィルス「CB」は、脳幹細胞へと侵入し、“自己人格“を破壊する。
人類は「自己」という生物学的にプログラムされた知覚を失ったことで、争いのない平和な世界を手に入れていた。
変化のない生活。
永遠に繰り返される「日常」を。
しかし、ナノマシンの制御プログラムにもバグが存在し、自己人格を取り戻すイレギュラーな人間も存在する。
そういった人間たちによって立ち上げられた組織、『ブルーアーカイブス』は、統制された世界から「自由」を取り戻すため、影から世界をコントロールしている国際組織『ICBM』の破壊を目論んでいた。
自己人格を取り戻しつつあった少年、水崎潤平は、ブルーアーカイブスの隊員、猪本サツキと出会う。
彼らは世界の“日常“を取り戻すため、共に戦うことを決意した。
——その先に待ち受けていたものとは?
ロボゲー最強の俺がゲーム中に転移した事故
ヤート
SF
SF型MMORPG「ギャラクシー・ジャイアント」
2265年にリリースされ、宇宙を舞台とした広大な世界観、自由な操作性、リアルタイムなアクションや機体のカスタムや開発など当時爆発的な人気を誇っていたそのカーマインも時代とともに忘れ去られサービス終了日に1人ログインしていたプレイヤーがいた。
最期のひと時を過ごすハズがー
ワークロボット社
シュレディンガーのうさぎ
SF
舞台は2180年で、人間そっくりなアンドロイドが世界に普及しているという設定です。
そんな世界でアンドロイド業界を支配する会社『ワークロボット社』に秘書(セクレ)として勤めることになった人間、サラがその会社のCEOや従業員たちと絆を深めながら、アンドロイドと人間がどのような関係であるべきかを模索していきます。
*気が向いたら続きを書くという感じになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる