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第09話 我輩 VS. 万能モンスター
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我城に来訪者が現れた。
勇者ではない。モンスターだ。
モンスターといっても中身は人間であり、転生者だ。
そういえば我輩も転生時はモンスターだったな。最弱モンスターのモフ。
なぜ我輩はモフに転生させられたのだろうか。きっと女神の嫌がらせだろう。
その経緯は自分で忘却したので覚えていない。
思い出すことは容易だが、我輩がわざわざ記憶を消したのだから思い出したりはしない。
「魔王というのはおまえか? 俺を見下すようなその目、俺が最弱モンスターのモフだからって舐めているのだろう?」
モンスターの来訪者とはモフである。
あー、気分が悪い。こいつ、俺と同じ転生の仕方をしてやがる。人間の前世から転生してモフへ。
「我輩はおまえがモフだから見下しているわけではない。我輩は我輩以外のすべての存在を見くびり、侮り、蔑み、見下している」
普通のモフが絶対にしないような強気の表情で我輩を見上げ、来訪者のモフは何度も飛び跳ねる。
「モフだからって俺を舐めて痛い目を見た奴は数が知れない。後悔しても遅いからな!」
目の前のモフはモーフィングの要領で体の形をグニグニ変えていき、やがて青年の姿になった。
ゴテゴテとした装飾のある黒いローブを着た顔の整った青年。魔法を使いそうな見た目をしている。
「おまえ、人の話を聞いてたか? おまえがモフだからじゃなくて、我輩は我輩以外のすべてを見下しているって言ったんだが」
こいつはさっきの決め台詞を言いたいがために会話を誘導しようとしたのだ。
こいつは生粋の馬鹿だ。純粋に頭が悪い。
「そうだな。まだ見た目が変化しただけだから、俺の恐ろしさはおまえには分からないだろうな」
こいつの態度が心底ムカつく。
我輩と同じモフへの転生者なんだから、少しはまともであってほしかった。
「おまえさぁ、どんだけ自信があっても、まずは相手の力量くらい知ろうとしろよ。仕方ないから、馬鹿で無知な愚か者のおまえに我輩のことを特別に教えてやるよ。我輩は《全知全能最強無敵絶対優位なる者》だ。つまり、おまえが絶対に勝てない相手ということだ」
そう教えてやっても、目の前の馬鹿は強気な態度を変えなかった。
「それがおまえのスキルか! ならばそれを奪うまでのこと。このスキルイーターの力でな!」
そう言って青年姿のモフ野郎が我輩に向けて手をかかげる。当然、何も起こらないのだが。
「バーカ。スキルじゃねーよ。我輩はそういう存在なの! だから、おまえのスキルイーターじゃ奪えないし、仮に我輩のこれがスキルだったとしても、全能や無敵が付いている時点で奪えるわけがないでしょ」
さすがにモフ野郎は驚きの表情を浮かべたが、まだその顔から自信の色は消えていない。
「だったらこれでどうだ! ステータスドレイン!」
再びモフ野郎が我輩に向けて手をかかげる。もちろん、何も起こらない。
こいつは女神のギフト《何でも一つだけ願いを叶えられる力》で《スキルイーター》を得た。
その効果は、人から無制限にスキルを奪うことができるというもの。
なお、奪われた者はスキルを失う。
転生後、通りすがった人たちから次々にスキルを奪っていくことで、人間にも変身できるようになったし、人のステータスを吸い上げて自分のものとする《ステータスドレイン》も獲得したし、その他さまざまなスキルを保有している。
おっと、こいつの世界感では自分に称号を設定できるらしいが、なんとこいつ、自分のことを《英雄》と設定している。
「くそっ、たしかに相手を知るところから始めるべきだった。強くなりすぎて久しく忘れていた感覚だ。久しぶりに使わせてもらおう。スキル《鑑定眼》」
こいつもか。どいつもこいつも他人の情報を盗み見るのが好きすぎだよな。
ちなみに我輩は勇者どものステータスを盗み見ているんじゃなくて、最初からすべてを知っているだけだからな。
「な、何だこれは!」
鑑定結果画面に我輩からのメッセージを表示させておいた。
――ただのコソ泥のくせに偉そうに英雄なんか名乗ってんじゃねーよ!
ああ、このアホ面はこれ以上見るに堪えない。
もう終わらせてやろう。
「そんなに欲しいなら、我輩の特製スキルをプレゼントしてやるよ」
そう言って強制的に付与したスキルは《自壊》というものである。
これはパッシブスキル、つまり自動で常時発動するスキルだ。
「何なんだ、このスキルは! 自動で自分の体が崩壊していくだと? しかもスキル発動状態をオフにできない!?」
モフ野郎は回復系スキルを一所懸命に自分に使っているが、体の崩壊は止まらない。
このスキルは我輩の特別性なので当然だ。自壊したらその状態がそいつのデフォルト状態となるスキルなのである。いくら回復しても自壊した状態が全回復状態なのだ。
我輩は面白半分で、回復不能ダメージという性質ではなく自壊状態デフォルト化という性質を与えたのだった。
回復スキルの発動自体はしているので、馬鹿の一つ覚えで何度も何度も回復系スキルを使用している。
やがて、モフ野郎は脳も崩壊してモフの姿に戻り、朽ちて消え去った。
ちなみに、モフ野郎の変身スキルは変身することで変身した者の能力を得ることができるものだった。
もしモフ野郎が我輩に変身していたら、最強の絶対優位が二人存在するという矛盾の発生にともないモフ野郎が消滅していたわけだが、そうなるパターンは我輩が不快なので、変身前に我輩の手でこいつを即消し飛ばしていたことだろう。
「さて、こいつの出身国も消しますかね」
我輩はH国にモノリスを落とす。H国の国境の形をした二十キロの高さを有する黒色物体たるモノリスを。
パズルのピースを埋めるように、H国にすっぽりとモノリスがはまり、H国は消滅した。
勇者ではない。モンスターだ。
モンスターといっても中身は人間であり、転生者だ。
そういえば我輩も転生時はモンスターだったな。最弱モンスターのモフ。
なぜ我輩はモフに転生させられたのだろうか。きっと女神の嫌がらせだろう。
その経緯は自分で忘却したので覚えていない。
思い出すことは容易だが、我輩がわざわざ記憶を消したのだから思い出したりはしない。
「魔王というのはおまえか? 俺を見下すようなその目、俺が最弱モンスターのモフだからって舐めているのだろう?」
モンスターの来訪者とはモフである。
あー、気分が悪い。こいつ、俺と同じ転生の仕方をしてやがる。人間の前世から転生してモフへ。
「我輩はおまえがモフだから見下しているわけではない。我輩は我輩以外のすべての存在を見くびり、侮り、蔑み、見下している」
普通のモフが絶対にしないような強気の表情で我輩を見上げ、来訪者のモフは何度も飛び跳ねる。
「モフだからって俺を舐めて痛い目を見た奴は数が知れない。後悔しても遅いからな!」
目の前のモフはモーフィングの要領で体の形をグニグニ変えていき、やがて青年の姿になった。
ゴテゴテとした装飾のある黒いローブを着た顔の整った青年。魔法を使いそうな見た目をしている。
「おまえ、人の話を聞いてたか? おまえがモフだからじゃなくて、我輩は我輩以外のすべてを見下しているって言ったんだが」
こいつはさっきの決め台詞を言いたいがために会話を誘導しようとしたのだ。
こいつは生粋の馬鹿だ。純粋に頭が悪い。
「そうだな。まだ見た目が変化しただけだから、俺の恐ろしさはおまえには分からないだろうな」
こいつの態度が心底ムカつく。
我輩と同じモフへの転生者なんだから、少しはまともであってほしかった。
「おまえさぁ、どんだけ自信があっても、まずは相手の力量くらい知ろうとしろよ。仕方ないから、馬鹿で無知な愚か者のおまえに我輩のことを特別に教えてやるよ。我輩は《全知全能最強無敵絶対優位なる者》だ。つまり、おまえが絶対に勝てない相手ということだ」
そう教えてやっても、目の前の馬鹿は強気な態度を変えなかった。
「それがおまえのスキルか! ならばそれを奪うまでのこと。このスキルイーターの力でな!」
そう言って青年姿のモフ野郎が我輩に向けて手をかかげる。当然、何も起こらないのだが。
「バーカ。スキルじゃねーよ。我輩はそういう存在なの! だから、おまえのスキルイーターじゃ奪えないし、仮に我輩のこれがスキルだったとしても、全能や無敵が付いている時点で奪えるわけがないでしょ」
さすがにモフ野郎は驚きの表情を浮かべたが、まだその顔から自信の色は消えていない。
「だったらこれでどうだ! ステータスドレイン!」
再びモフ野郎が我輩に向けて手をかかげる。もちろん、何も起こらない。
こいつは女神のギフト《何でも一つだけ願いを叶えられる力》で《スキルイーター》を得た。
その効果は、人から無制限にスキルを奪うことができるというもの。
なお、奪われた者はスキルを失う。
転生後、通りすがった人たちから次々にスキルを奪っていくことで、人間にも変身できるようになったし、人のステータスを吸い上げて自分のものとする《ステータスドレイン》も獲得したし、その他さまざまなスキルを保有している。
おっと、こいつの世界感では自分に称号を設定できるらしいが、なんとこいつ、自分のことを《英雄》と設定している。
「くそっ、たしかに相手を知るところから始めるべきだった。強くなりすぎて久しく忘れていた感覚だ。久しぶりに使わせてもらおう。スキル《鑑定眼》」
こいつもか。どいつもこいつも他人の情報を盗み見るのが好きすぎだよな。
ちなみに我輩は勇者どものステータスを盗み見ているんじゃなくて、最初からすべてを知っているだけだからな。
「な、何だこれは!」
鑑定結果画面に我輩からのメッセージを表示させておいた。
――ただのコソ泥のくせに偉そうに英雄なんか名乗ってんじゃねーよ!
ああ、このアホ面はこれ以上見るに堪えない。
もう終わらせてやろう。
「そんなに欲しいなら、我輩の特製スキルをプレゼントしてやるよ」
そう言って強制的に付与したスキルは《自壊》というものである。
これはパッシブスキル、つまり自動で常時発動するスキルだ。
「何なんだ、このスキルは! 自動で自分の体が崩壊していくだと? しかもスキル発動状態をオフにできない!?」
モフ野郎は回復系スキルを一所懸命に自分に使っているが、体の崩壊は止まらない。
このスキルは我輩の特別性なので当然だ。自壊したらその状態がそいつのデフォルト状態となるスキルなのである。いくら回復しても自壊した状態が全回復状態なのだ。
我輩は面白半分で、回復不能ダメージという性質ではなく自壊状態デフォルト化という性質を与えたのだった。
回復スキルの発動自体はしているので、馬鹿の一つ覚えで何度も何度も回復系スキルを使用している。
やがて、モフ野郎は脳も崩壊してモフの姿に戻り、朽ちて消え去った。
ちなみに、モフ野郎の変身スキルは変身することで変身した者の能力を得ることができるものだった。
もしモフ野郎が我輩に変身していたら、最強の絶対優位が二人存在するという矛盾の発生にともないモフ野郎が消滅していたわけだが、そうなるパターンは我輩が不快なので、変身前に我輩の手でこいつを即消し飛ばしていたことだろう。
「さて、こいつの出身国も消しますかね」
我輩はH国にモノリスを落とす。H国の国境の形をした二十キロの高さを有する黒色物体たるモノリスを。
パズルのピースを埋めるように、H国にすっぽりとモノリスがはまり、H国は消滅した。
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