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第03話 我輩 VS. 最強武器勇者
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我城にまた来訪者が現れた。
今回は一人だ。
金髪を尖らせ、黒いロングコートを羽織り、背中に巨大な剣をひっさげている。
彼が背負っているのは聖剣デュランダル。
どんなに硬い物質でも切れるし、形のない魔法すら切り捨てられる最強剣、いわゆるチート武器というものだ。
彼は転生者であり、女神のギフト《何でも一つだけ願いを叶えられる力》で《最強の剣》を所望し、聖剣デュランダルを手に入れて勇者になったのである。
「あんたが魔族に人類を襲わせている元凶だな」
そう言いながらいきなり鑑定眼とやらを我輩に使ってきたので、鑑定結果画面に『バーカ、バーカ、アホ、マヌケ。覗き魔かよ、このムッツリ助平が。キモすぎぃ~!』という煽り文句を表示させてやった。
あからさまに顔をしかめる勇者。
我輩のことを鑑定しようとしたことはバレているのだが、最低限の体裁をつくろって、何事もなかったかのように再び話しかけてきた。
「毎日、かけがえのない命が亡くなっている。人も魔族もだ。あんた、命の重さを何だと思っているんだ!」
正義ヅラして我輩を睨みつけてくる勇者。不敬な無礼者らしい浅慮なセリフ。
この愚か者は、《全知全能最強無敵絶対優位》たるこの我輩に説教を垂れているつもりのようだ。
どうせ殺すけど、我輩の自己満足のため、この馬鹿に説教を返してやろう。
「いや、訊きたいのはこっちだよ。おまえは命の重さがどういうものか分かってる? 人類にとっての命の重みってのは、その命がどれだけ丁重に扱われるかだよね。おまえらにとって最も命が重いのが人間で、次に人間以外の哺乳類動物。人間に近い生物ほど重く、虫や植物みたいな人間から遠い生物ほど軽い。あと、稀少生物は例外的に重く見なしたりもするよね。おまえさぁ、そういうことをしっかりと考察した上で我輩に問いかけてきたの?」
「え? お、おう、もちろんだ!」
勇者は若干目を泳がせたが、動揺を悟られまいと焦点の定まらない視線を我輩に向けてきた。
我輩は冷ややかな視線を送りつつ、続きを口にする。
「嘘だね。おまえは固定観念で凝り固まった価値観しか持ってない。そんなおまえに、我輩が残念なことを教えてやるよ。いまとなっては、おまえたち人間の命は極めて軽くなってしまった。なぜなら、我輩が簡単に人間を屠るから。おまえら人類の価値観に従えば、簡単に殺される命は重くないんだから、人間の命は軽いってことになるでしょ?」
ま、そもそも命に重みなんて存在しないんだけどね、本来は。
命の重みなんて、人間が勝手に作り出した価値観にすぎないんだから。
「どうやら分かり合えないようだ。仕方ない。力ずくで排除させてもらう」
この勇者は頭が悪いせいで我輩の説明が理解できなかったようだ。
一方的に説き伏せられ、あまつさえ理解が追いつかなかったくせに、まるで相いれない価値観が衝突したかのように誤魔化すようなことを言ってきた。
そして最後に頼るのが武力という救いようのない愚か者。
いまいちスッキリしないし、さっさと終わらせようかと思ったところで、我輩の膝の上でおとなしく撫でられていたモフがピョンと跳ねて勇者の前に躍り出た。
「ぷぅぷぅ!」
一度こちらに振り返って強い意思を示す。
モフは我輩の手を煩わせまいと勇者の相手を買って出たのだ。
なんと健気なことか。
「そうかそうか、やってみな」
我輩はモフの気持ちを尊重してモフに任せてやることにした。
モフは前回の勇者パーティー戦でテキトーに強化したままになっているので、それなりの戦闘力は有している。
「斬る!」
勇者は聖剣のアシストにより人離れした速さで動いた。
対するモフも超高速突進を繰り出す。
勇者が素早く剣を振ると、モフは空気を蹴って剣の軌道から外れた。
しかし、聖剣デュランダルの剣筋がモフを追尾するようにスライドし、その刃がモフの体を真っ二つに切り裂いた。
「まあ、知ってたけどな」
二つの体に分かれた毛玉は消滅した。
それから、我輩の膝の上にモフが復活した。
「蘇生できるのか。やはり親玉を倒さなければどうにもならないな」
「無理だぞ」
少し被せるように否定すると、勇者はムッとした。
勇者は剣を見せびらかすように正面に構えた。
「これは聖剣デュランダル。物質だろうが魔法だろうが必ず斬ることができるし、これを振れば必中となる。この剣を持つ俺に勝てる奴はいない」
我輩は肩をすくめ、深いため息を吐いた。
「じゃあ我輩のことも教えてやる。我輩は《全知全能最強無敵絶対優位なる者》だ。何がどうあっても我輩に勝てる者は存在しない」
「なるほど、こっちは絶対に斬れる聖剣、そっちは絶対に斬れない無敵の体。じゃあ試すしかないな。どっちの絶対が本物か」
勇者は自信があるようだ。これまでに斬れなかったものはなかったのだろう。
しかし何も分かっていない。我輩は全知だから結末を知っているし、そうでなくとも最初から絶対同士の衝突を想定して《絶対優位》を願いに含めていたのだ。
一見して不要そうな最後の四文字。《全知全能》や《最強無敵》だけで十分そうに思えるが、その二つに加えて必要だと判断した《絶対優位》なる条件。
これは、今回のように絶対同士の矛と盾の問題が生じた場合に備えて入れたものだ。
「あーあ、馬鹿なんだー。せっかく我輩のことを教えてあげたのに、着眼点が的外れ」
我輩が立ち上がって勇者の前まで移動した。モフはいまは我輩の右肩の上にいる。
勇者が我輩の左肩口に向かって剣を打ち込んだ。
しかし、剣は百パーセントの弾性で跳ね返された。
我輩のラフな白シャツには傷一つ付いていない。
「そんな!」
勇者は目を丸くしたが、その顔のまま再び剣を振るう。
今度は高速でいろんな場所に打ち込んでくる。聖剣のアシストがあって、一秒のうちに十連撃も打ち込んできた。
我輩は防御すら不要だが、あえて人差し指一本でその十連撃をすべて弾いてやった。
そして、その指を勇者の右肩をなぞるように動かした。
我輩の指は勇者に触れていないが、勇者の右腕がスッパリ切断されて床に落ちた。
「うわあああああああ!」
その悲鳴が不快なので勇者から声を奪う。
ついでに心臓か伸びている各動脈を直接心臓の静脈につなぎなおしてやる。
その瞬間、勇者はバタリと倒れた。最後の力で我輩を睨み上げる。
(あんた、どう見ても人間なのに、同族の人間を殺しても心は痛まないのか)
勇者が言おうとしたことは声として出てこないが、我輩はその思考を知ることができる。だから冥土の土産として答えてやる。
「根本的なことを分かってないな。我輩は純粋悪なの。罪悪感がどうとか、悪に対して問うのはお門違い、的外れ、ナンセンス。やっぱりおまえ、頭悪いね」
それを聞いたところで勇者は事切れた。
勇者の死体と聖剣デュランダルは我輩が消し飛ばした。
「さてと、こいつの出身国のB国を潰しますかね」
我輩はA国のときと同様に、B国をかたどった二十キロの高さを有するモノリスをB国へと落とし、B国を消滅させたのだった。
今後の来訪者は転生者ばかりになる。
我輩はその転生者が送り込まれた国を出身国とみなし、転生者を葬った後で出身国もモノリスで潰していくことにする。
今回は一人だ。
金髪を尖らせ、黒いロングコートを羽織り、背中に巨大な剣をひっさげている。
彼が背負っているのは聖剣デュランダル。
どんなに硬い物質でも切れるし、形のない魔法すら切り捨てられる最強剣、いわゆるチート武器というものだ。
彼は転生者であり、女神のギフト《何でも一つだけ願いを叶えられる力》で《最強の剣》を所望し、聖剣デュランダルを手に入れて勇者になったのである。
「あんたが魔族に人類を襲わせている元凶だな」
そう言いながらいきなり鑑定眼とやらを我輩に使ってきたので、鑑定結果画面に『バーカ、バーカ、アホ、マヌケ。覗き魔かよ、このムッツリ助平が。キモすぎぃ~!』という煽り文句を表示させてやった。
あからさまに顔をしかめる勇者。
我輩のことを鑑定しようとしたことはバレているのだが、最低限の体裁をつくろって、何事もなかったかのように再び話しかけてきた。
「毎日、かけがえのない命が亡くなっている。人も魔族もだ。あんた、命の重さを何だと思っているんだ!」
正義ヅラして我輩を睨みつけてくる勇者。不敬な無礼者らしい浅慮なセリフ。
この愚か者は、《全知全能最強無敵絶対優位》たるこの我輩に説教を垂れているつもりのようだ。
どうせ殺すけど、我輩の自己満足のため、この馬鹿に説教を返してやろう。
「いや、訊きたいのはこっちだよ。おまえは命の重さがどういうものか分かってる? 人類にとっての命の重みってのは、その命がどれだけ丁重に扱われるかだよね。おまえらにとって最も命が重いのが人間で、次に人間以外の哺乳類動物。人間に近い生物ほど重く、虫や植物みたいな人間から遠い生物ほど軽い。あと、稀少生物は例外的に重く見なしたりもするよね。おまえさぁ、そういうことをしっかりと考察した上で我輩に問いかけてきたの?」
「え? お、おう、もちろんだ!」
勇者は若干目を泳がせたが、動揺を悟られまいと焦点の定まらない視線を我輩に向けてきた。
我輩は冷ややかな視線を送りつつ、続きを口にする。
「嘘だね。おまえは固定観念で凝り固まった価値観しか持ってない。そんなおまえに、我輩が残念なことを教えてやるよ。いまとなっては、おまえたち人間の命は極めて軽くなってしまった。なぜなら、我輩が簡単に人間を屠るから。おまえら人類の価値観に従えば、簡単に殺される命は重くないんだから、人間の命は軽いってことになるでしょ?」
ま、そもそも命に重みなんて存在しないんだけどね、本来は。
命の重みなんて、人間が勝手に作り出した価値観にすぎないんだから。
「どうやら分かり合えないようだ。仕方ない。力ずくで排除させてもらう」
この勇者は頭が悪いせいで我輩の説明が理解できなかったようだ。
一方的に説き伏せられ、あまつさえ理解が追いつかなかったくせに、まるで相いれない価値観が衝突したかのように誤魔化すようなことを言ってきた。
そして最後に頼るのが武力という救いようのない愚か者。
いまいちスッキリしないし、さっさと終わらせようかと思ったところで、我輩の膝の上でおとなしく撫でられていたモフがピョンと跳ねて勇者の前に躍り出た。
「ぷぅぷぅ!」
一度こちらに振り返って強い意思を示す。
モフは我輩の手を煩わせまいと勇者の相手を買って出たのだ。
なんと健気なことか。
「そうかそうか、やってみな」
我輩はモフの気持ちを尊重してモフに任せてやることにした。
モフは前回の勇者パーティー戦でテキトーに強化したままになっているので、それなりの戦闘力は有している。
「斬る!」
勇者は聖剣のアシストにより人離れした速さで動いた。
対するモフも超高速突進を繰り出す。
勇者が素早く剣を振ると、モフは空気を蹴って剣の軌道から外れた。
しかし、聖剣デュランダルの剣筋がモフを追尾するようにスライドし、その刃がモフの体を真っ二つに切り裂いた。
「まあ、知ってたけどな」
二つの体に分かれた毛玉は消滅した。
それから、我輩の膝の上にモフが復活した。
「蘇生できるのか。やはり親玉を倒さなければどうにもならないな」
「無理だぞ」
少し被せるように否定すると、勇者はムッとした。
勇者は剣を見せびらかすように正面に構えた。
「これは聖剣デュランダル。物質だろうが魔法だろうが必ず斬ることができるし、これを振れば必中となる。この剣を持つ俺に勝てる奴はいない」
我輩は肩をすくめ、深いため息を吐いた。
「じゃあ我輩のことも教えてやる。我輩は《全知全能最強無敵絶対優位なる者》だ。何がどうあっても我輩に勝てる者は存在しない」
「なるほど、こっちは絶対に斬れる聖剣、そっちは絶対に斬れない無敵の体。じゃあ試すしかないな。どっちの絶対が本物か」
勇者は自信があるようだ。これまでに斬れなかったものはなかったのだろう。
しかし何も分かっていない。我輩は全知だから結末を知っているし、そうでなくとも最初から絶対同士の衝突を想定して《絶対優位》を願いに含めていたのだ。
一見して不要そうな最後の四文字。《全知全能》や《最強無敵》だけで十分そうに思えるが、その二つに加えて必要だと判断した《絶対優位》なる条件。
これは、今回のように絶対同士の矛と盾の問題が生じた場合に備えて入れたものだ。
「あーあ、馬鹿なんだー。せっかく我輩のことを教えてあげたのに、着眼点が的外れ」
我輩が立ち上がって勇者の前まで移動した。モフはいまは我輩の右肩の上にいる。
勇者が我輩の左肩口に向かって剣を打ち込んだ。
しかし、剣は百パーセントの弾性で跳ね返された。
我輩のラフな白シャツには傷一つ付いていない。
「そんな!」
勇者は目を丸くしたが、その顔のまま再び剣を振るう。
今度は高速でいろんな場所に打ち込んでくる。聖剣のアシストがあって、一秒のうちに十連撃も打ち込んできた。
我輩は防御すら不要だが、あえて人差し指一本でその十連撃をすべて弾いてやった。
そして、その指を勇者の右肩をなぞるように動かした。
我輩の指は勇者に触れていないが、勇者の右腕がスッパリ切断されて床に落ちた。
「うわあああああああ!」
その悲鳴が不快なので勇者から声を奪う。
ついでに心臓か伸びている各動脈を直接心臓の静脈につなぎなおしてやる。
その瞬間、勇者はバタリと倒れた。最後の力で我輩を睨み上げる。
(あんた、どう見ても人間なのに、同族の人間を殺しても心は痛まないのか)
勇者が言おうとしたことは声として出てこないが、我輩はその思考を知ることができる。だから冥土の土産として答えてやる。
「根本的なことを分かってないな。我輩は純粋悪なの。罪悪感がどうとか、悪に対して問うのはお門違い、的外れ、ナンセンス。やっぱりおまえ、頭悪いね」
それを聞いたところで勇者は事切れた。
勇者の死体と聖剣デュランダルは我輩が消し飛ばした。
「さてと、こいつの出身国のB国を潰しますかね」
我輩はA国のときと同様に、B国をかたどった二十キロの高さを有するモノリスをB国へと落とし、B国を消滅させたのだった。
今後の来訪者は転生者ばかりになる。
我輩はその転生者が送り込まれた国を出身国とみなし、転生者を葬った後で出身国もモノリスで潰していくことにする。
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