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最終章 狂酔編
第236話 後手の緊急配備
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俺はすぐに空間把握モードを展開した。範囲は大陸全土と諸島連合。
空気の操作が絶対化されて操作リンクを世界範囲でつなぐのは容易になったが、俺の脳の情報処理能力が追いつかないので、いくら特徴的な服を着ていてもカケララの位置を特定するのは難しい。
と、予想していたのだが、そうはならなかった。
ただし、幸いではなかった。世界の特定の場所で明らかに異常な事態が起きていた。
気の触れた者たちが周りの者たちに危害を加えている。家族を殺している者もいるだろう。武器になりうるものを持つ者は大量に人を……。
「ダース! 急いでキューカを連れてこい!」
俺の表情を見てカケラが嗤い、ダースが察する。
ダースは俺の言うとおり、闇の魔法でワープゲートを作り、その中に手を突っ込んでキューカを問答無用でひっぱりだした。
キューカが着る黒いローブははだけている。どうやら着替えの途中だったようだ。
「突然なにするのよ! 着替え中の女性を室外に放り出すなんて非常識なのよ。ただでさえ部屋が赤くなっていて混乱していたのよ」
「いいからとにかく俺とダースを感覚共鳴でつなげ! ついでにおまえ自身もつなげば状況は理解できる。急げ!」
一刻を争う事態だ。
俺の意識をダースに共有することで、ダースはカケララがいるはずの場所へとワープゲートをつなぐことができる。俺の空間把握で足りなければダースの覗き闇の情報も足せばいい。
キューカを人成させたのがミューイだったおかげで、キューカは素直で頼りになる魔術師となった。
キューカが事の緊急性を察して感覚共鳴を発動すると、俺も闇の魔法を使えるような気分になり、使おうとする意識を強くすると暗い穴が口を開けた。ダースが俺の意思を汲んで魔法を使ったのだ。
カケララたちは各地で狂気に当てられた人たちの中央にいるはずだ。
五箇所に戦力を送り込みたいが、どのワープゲートに誰が入るのか、その配分をいちいち説明する時間もまどろっこしい。
俺のもどかしい気持ちが伝わり、キューカがこの場にいる仲間全員を感覚共鳴でつないだ。
すると皆がいっせいに動きだした。
皆が状況を理解し、俺の考えた割り当てを受け入れ、即座に行動に移した。
リオン帝国にはキーラが向かった。
ジーヌ共和国には俺の空気人形を送り込んだ。
それは単に俺が空気の遠隔操作でカケララと戦うということだ。もちろん、俺がカケラ本体と戦えばそんな余裕はないが、まだ準備のできていない戦力をアテにしてのことだ。
シミアン王国には誰も送らない。
情報だけを伝え、現地にいるミューイ、コータ、王立魔導騎士団長に頑張ってもらう。
護神中立国にはレイジー、サンディア、セクレ、アンジュ、エンジュに行ってもらった。
人数は多いが、レイジー以外の四人を合わせたらようやく四天魔一人分に足ると推し量ってのことだ。
諸島連合にはリーズ、イル、ハーティが向かった。
この三人をジーヌ共和国に向かわせるべきか迷ったが、最後に準備ができる戦力の配置を考えたらこうなった。
最後に忘れてはならない地域がある。
ここ、公地だ。
公地はカケララの行先には入っていなかったが、カケラ本体がいるため、狂気の影響は最も受けやすい。カケラと戦う主戦力以外に偶然にも公地にいる人間を狂気から護る役割が必要だ。
その役割を制圧に向いているルーレ・リッヒに託す。
逆にリオン帝国からはリーン・リッヒを、護神中立国からは盲目のゲンをこちらに呼び寄せた。
「二人ともそれぞれの自国を第一に守りたいだろうが、それならなおのこと大元を叩くべきだと理解してくれ」
「分かっていますよ、ゲス王」
リーンが剣を抜きながら空に浮かぶカケラに向かって剣を構えた。
俺は世界王と名乗っていたが、彼女のいうゲス王という呼び方のほうがしっくりくるかもしれない。
「ワシが守護しているのは護神中立国ではない。神様の拠り所じゃ。ワシがこやつと戦うのは必定というもの」
「理解が早くて助かる」
各地に派遣した者たちとの感覚共鳴を切って、リーンと盲目のゲンの二人と新たに共鳴をつないだ。
それから、学院の校舎の一部に擬態していたドクター・シータが人の姿に形を変えた。
「ウィッヒッヒ。私もその感覚共鳴とやらに混ぜてもらえるかね?」
これで配置換えは完了し、役者はそろった。
「カケララたちはあいつらに任せた。カケラ、おまえには俺たち最高戦力が相手をさせてもらう」
空気の操作が絶対化されて操作リンクを世界範囲でつなぐのは容易になったが、俺の脳の情報処理能力が追いつかないので、いくら特徴的な服を着ていてもカケララの位置を特定するのは難しい。
と、予想していたのだが、そうはならなかった。
ただし、幸いではなかった。世界の特定の場所で明らかに異常な事態が起きていた。
気の触れた者たちが周りの者たちに危害を加えている。家族を殺している者もいるだろう。武器になりうるものを持つ者は大量に人を……。
「ダース! 急いでキューカを連れてこい!」
俺の表情を見てカケラが嗤い、ダースが察する。
ダースは俺の言うとおり、闇の魔法でワープゲートを作り、その中に手を突っ込んでキューカを問答無用でひっぱりだした。
キューカが着る黒いローブははだけている。どうやら着替えの途中だったようだ。
「突然なにするのよ! 着替え中の女性を室外に放り出すなんて非常識なのよ。ただでさえ部屋が赤くなっていて混乱していたのよ」
「いいからとにかく俺とダースを感覚共鳴でつなげ! ついでにおまえ自身もつなげば状況は理解できる。急げ!」
一刻を争う事態だ。
俺の意識をダースに共有することで、ダースはカケララがいるはずの場所へとワープゲートをつなぐことができる。俺の空間把握で足りなければダースの覗き闇の情報も足せばいい。
キューカを人成させたのがミューイだったおかげで、キューカは素直で頼りになる魔術師となった。
キューカが事の緊急性を察して感覚共鳴を発動すると、俺も闇の魔法を使えるような気分になり、使おうとする意識を強くすると暗い穴が口を開けた。ダースが俺の意思を汲んで魔法を使ったのだ。
カケララたちは各地で狂気に当てられた人たちの中央にいるはずだ。
五箇所に戦力を送り込みたいが、どのワープゲートに誰が入るのか、その配分をいちいち説明する時間もまどろっこしい。
俺のもどかしい気持ちが伝わり、キューカがこの場にいる仲間全員を感覚共鳴でつないだ。
すると皆がいっせいに動きだした。
皆が状況を理解し、俺の考えた割り当てを受け入れ、即座に行動に移した。
リオン帝国にはキーラが向かった。
ジーヌ共和国には俺の空気人形を送り込んだ。
それは単に俺が空気の遠隔操作でカケララと戦うということだ。もちろん、俺がカケラ本体と戦えばそんな余裕はないが、まだ準備のできていない戦力をアテにしてのことだ。
シミアン王国には誰も送らない。
情報だけを伝え、現地にいるミューイ、コータ、王立魔導騎士団長に頑張ってもらう。
護神中立国にはレイジー、サンディア、セクレ、アンジュ、エンジュに行ってもらった。
人数は多いが、レイジー以外の四人を合わせたらようやく四天魔一人分に足ると推し量ってのことだ。
諸島連合にはリーズ、イル、ハーティが向かった。
この三人をジーヌ共和国に向かわせるべきか迷ったが、最後に準備ができる戦力の配置を考えたらこうなった。
最後に忘れてはならない地域がある。
ここ、公地だ。
公地はカケララの行先には入っていなかったが、カケラ本体がいるため、狂気の影響は最も受けやすい。カケラと戦う主戦力以外に偶然にも公地にいる人間を狂気から護る役割が必要だ。
その役割を制圧に向いているルーレ・リッヒに託す。
逆にリオン帝国からはリーン・リッヒを、護神中立国からは盲目のゲンをこちらに呼び寄せた。
「二人ともそれぞれの自国を第一に守りたいだろうが、それならなおのこと大元を叩くべきだと理解してくれ」
「分かっていますよ、ゲス王」
リーンが剣を抜きながら空に浮かぶカケラに向かって剣を構えた。
俺は世界王と名乗っていたが、彼女のいうゲス王という呼び方のほうがしっくりくるかもしれない。
「ワシが守護しているのは護神中立国ではない。神様の拠り所じゃ。ワシがこやつと戦うのは必定というもの」
「理解が早くて助かる」
各地に派遣した者たちとの感覚共鳴を切って、リーンと盲目のゲンの二人と新たに共鳴をつないだ。
それから、学院の校舎の一部に擬態していたドクター・シータが人の姿に形を変えた。
「ウィッヒッヒ。私もその感覚共鳴とやらに混ぜてもらえるかね?」
これで配置換えは完了し、役者はそろった。
「カケララたちはあいつらに任せた。カケラ、おまえには俺たち最高戦力が相手をさせてもらう」
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