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第六章 試練編
第223話 第二試練の報酬
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俺とエアはネアに会うために護神中立国へと来ていた。
第二試練をクリアしたのが昨日のことで、いまは二人とも天使のミトンを使って全快している。二十四時間のクールタイムのせいでもう陽が暮れかけている。
俺たちはいくつもの鳥居を潜り、拝殿へと辿り着いた。
前回来たときは賽銭箱のような箱の中央の窪みに鍵玉をはめ込んで本殿へとワープしたが、いまは鍵玉がない。
「まさか、これを使うのか?」
鍵玉がない代わりに、鍵玉と同じ形状のものをいまの俺は持っている。
藍玉。
それは第一試練をクリアした報酬であり、機工巨人を呼び出すための神器である。
「それが使えたとして、まさか使い捨てにならないわよね?」
そうだと信じたい。いや、もしそうなったらネアに徹底的に抗議してやる。二人とも死にかけながら、やっとの思いでクリアした試練の報酬なのだ。
「ほかにないからな。やるしかない。ええい!」
思いきって藍玉を窪みにはめ込むと、俺たちは本殿へとワープした。
俺の胸元には、藍玉が宙に浮いた状態で静止している。それを手に取ると、ずしりと重量を取り戻して俺の手に収まった。
「よかった。戻ってきたね」
「ああ。今後はこれが鍵として使えそうだな」
俺とエアが本殿を見上げると、扉が勝手に開いた。
白い光とともにネアが姿を現す。白いシャツに白いスラックスだ。
最初に会ったときは白い袴を履いていた気がするが、色が白ければ形にはこだわらないのかもしれない。
「ようこそ。さあ入って」
俺たちはネアに導かれ、白い世界へと足を踏み入れた。
真っ白な世界にポンッと白い円形テーブルが現われ、続いてポポンと椅子が現われた。
「どうぞ」
俺とエアが椅子に腰掛けると、ポンッポポンッと茶と茶菓子が現われ、ネアも席に着いた。
「第一の試練と第二の試練のクリア、おめでとう」
「おめでとう、じゃないだろ。第二の試練の報酬はどうなってんだよ」
俺はとにかくこのことを詰問するためにネアに会いに来たのだ。第三の試練会場がここだという話は聞いているが、そんなのは二の次だ。
第二の試練ではエアが本当に絶命寸前にまでなった。それでいて報酬をもらっていないことに俺は憤りを感じていた。
「君はもう報酬を受け取っているよ」
ネアは俺をなだめるでもなく、淡白にそう述べた。
「受け取っている? どういうことだ? 俺は何も受け取っていないぞ」
「第二試練の報酬は魔法の概念化だ。第二試練は海底都市があるあの空間から脱出したところでクリアになり報酬が与えられる。だけど、この試練をクリアするまでの過程において自力で魔法の概念化に達するのが理想的だ。第二試練はそういう試練だったんだ。実際、君は海底神殿を脱出して海底都市で魚たちに囲まれたときに魔法が概念化している」
そういえば俺が海底神殿を出たとき、俺は大量の石魚たちに取り囲まれたが、なぜか石魚たちは攻撃せずに方々へと散っていった。
それがなぜなのかそのときはまったく分からなかったが、石魚たちが散ったのは俺の魔法が概念化してその効果を発揮したからなのかもしれない。
「で、魔法が概念化したらどうなるんだ? 俺は何ができる?」
「空気に関することは何でもできるよ。空気の発生型みたいに空気を生み出すこともできる。特に概念種的な使い方をするのなら、空気という言葉を含む慣用句を実現させることがそれに近いだろう」
なるほど。たしかにあのとき、俺は石魚たちに「空気読めよ」と言った。石魚たちは空気を読んで俺への攻撃を中断したのだ。
もしあのときに魔法が概念化しなかったら、俺たちは試練をクリアできていなかったし、エアも死んでいただろう。
魔法が概念化する条件は、自分の操るエレメントを完璧に理解し、その魔法を完全にマスターしなければならない。
俺みたいにこの世界の外の科学知識がなければ、魔法の概念化なんてまず不可能だ。
そう考えると、第二試練は恐ろしい難易度だった。
「さて、次は第三試練だ。ゲス・エスト、君は真実を知って挫折を味わったが、第一試練と第二試練をクリアすることでそれを克服し、自分を見つめなおした。あとは紅い狂気へと挑む覚悟を試させてもらう」
「ちょっと待て」
いちおう第二試練の報酬については納得した。だが俺はその件を主目的としてここを訪れたので、第三試練の準備はできていない。もちろん、心構えも含めて。
「天使のミトンの使用回数がまだ回復していない。もう一日待ってくれ」
「その要望は無意味だよ。この空間では神器は使えない。使ってもいいけれど、藍玉はただの石だし、ムニキスはただの刀だし、ミトンはただのミトンでしかないからね」
第一、第二の試練はいずれも神器を駆使してどうにかクリアできたというのに、それ以上の難易度であるはずの第三の試練で神器が使えないというのか。
そんなものクリアできるはずが……。
いや、それ前提の難易度になっているのか?
いやいや、第一、第二の試練だって神器がない前提での難易度だったのではないか?
いうなれば、いままでズルをしていたけれど今回はズルを禁止された、みたいな。
「それにしたって……」
俺はいつになく動揺していた。そしてそのこと自体にも動揺した。
こんなの、俺らしくないではないか。
そんな俺の心境を見透かしたように、ネアは強制的に試練を進行する。
「心の準備ができていない、とでも言いたげだね。でも何度出直しても同じだよ。第三の試練はそういう奴が相手なんだ。心の準備なんかさせてくれない。その名を聞けば、君なら理解するだろう。いでよ、テリブルドラゴン!」
第二試練をクリアしたのが昨日のことで、いまは二人とも天使のミトンを使って全快している。二十四時間のクールタイムのせいでもう陽が暮れかけている。
俺たちはいくつもの鳥居を潜り、拝殿へと辿り着いた。
前回来たときは賽銭箱のような箱の中央の窪みに鍵玉をはめ込んで本殿へとワープしたが、いまは鍵玉がない。
「まさか、これを使うのか?」
鍵玉がない代わりに、鍵玉と同じ形状のものをいまの俺は持っている。
藍玉。
それは第一試練をクリアした報酬であり、機工巨人を呼び出すための神器である。
「それが使えたとして、まさか使い捨てにならないわよね?」
そうだと信じたい。いや、もしそうなったらネアに徹底的に抗議してやる。二人とも死にかけながら、やっとの思いでクリアした試練の報酬なのだ。
「ほかにないからな。やるしかない。ええい!」
思いきって藍玉を窪みにはめ込むと、俺たちは本殿へとワープした。
俺の胸元には、藍玉が宙に浮いた状態で静止している。それを手に取ると、ずしりと重量を取り戻して俺の手に収まった。
「よかった。戻ってきたね」
「ああ。今後はこれが鍵として使えそうだな」
俺とエアが本殿を見上げると、扉が勝手に開いた。
白い光とともにネアが姿を現す。白いシャツに白いスラックスだ。
最初に会ったときは白い袴を履いていた気がするが、色が白ければ形にはこだわらないのかもしれない。
「ようこそ。さあ入って」
俺たちはネアに導かれ、白い世界へと足を踏み入れた。
真っ白な世界にポンッと白い円形テーブルが現われ、続いてポポンと椅子が現われた。
「どうぞ」
俺とエアが椅子に腰掛けると、ポンッポポンッと茶と茶菓子が現われ、ネアも席に着いた。
「第一の試練と第二の試練のクリア、おめでとう」
「おめでとう、じゃないだろ。第二の試練の報酬はどうなってんだよ」
俺はとにかくこのことを詰問するためにネアに会いに来たのだ。第三の試練会場がここだという話は聞いているが、そんなのは二の次だ。
第二の試練ではエアが本当に絶命寸前にまでなった。それでいて報酬をもらっていないことに俺は憤りを感じていた。
「君はもう報酬を受け取っているよ」
ネアは俺をなだめるでもなく、淡白にそう述べた。
「受け取っている? どういうことだ? 俺は何も受け取っていないぞ」
「第二試練の報酬は魔法の概念化だ。第二試練は海底都市があるあの空間から脱出したところでクリアになり報酬が与えられる。だけど、この試練をクリアするまでの過程において自力で魔法の概念化に達するのが理想的だ。第二試練はそういう試練だったんだ。実際、君は海底神殿を脱出して海底都市で魚たちに囲まれたときに魔法が概念化している」
そういえば俺が海底神殿を出たとき、俺は大量の石魚たちに取り囲まれたが、なぜか石魚たちは攻撃せずに方々へと散っていった。
それがなぜなのかそのときはまったく分からなかったが、石魚たちが散ったのは俺の魔法が概念化してその効果を発揮したからなのかもしれない。
「で、魔法が概念化したらどうなるんだ? 俺は何ができる?」
「空気に関することは何でもできるよ。空気の発生型みたいに空気を生み出すこともできる。特に概念種的な使い方をするのなら、空気という言葉を含む慣用句を実現させることがそれに近いだろう」
なるほど。たしかにあのとき、俺は石魚たちに「空気読めよ」と言った。石魚たちは空気を読んで俺への攻撃を中断したのだ。
もしあのときに魔法が概念化しなかったら、俺たちは試練をクリアできていなかったし、エアも死んでいただろう。
魔法が概念化する条件は、自分の操るエレメントを完璧に理解し、その魔法を完全にマスターしなければならない。
俺みたいにこの世界の外の科学知識がなければ、魔法の概念化なんてまず不可能だ。
そう考えると、第二試練は恐ろしい難易度だった。
「さて、次は第三試練だ。ゲス・エスト、君は真実を知って挫折を味わったが、第一試練と第二試練をクリアすることでそれを克服し、自分を見つめなおした。あとは紅い狂気へと挑む覚悟を試させてもらう」
「ちょっと待て」
いちおう第二試練の報酬については納得した。だが俺はその件を主目的としてここを訪れたので、第三試練の準備はできていない。もちろん、心構えも含めて。
「天使のミトンの使用回数がまだ回復していない。もう一日待ってくれ」
「その要望は無意味だよ。この空間では神器は使えない。使ってもいいけれど、藍玉はただの石だし、ムニキスはただの刀だし、ミトンはただのミトンでしかないからね」
第一、第二の試練はいずれも神器を駆使してどうにかクリアできたというのに、それ以上の難易度であるはずの第三の試練で神器が使えないというのか。
そんなものクリアできるはずが……。
いや、それ前提の難易度になっているのか?
いやいや、第一、第二の試練だって神器がない前提での難易度だったのではないか?
いうなれば、いままでズルをしていたけれど今回はズルを禁止された、みたいな。
「それにしたって……」
俺はいつになく動揺していた。そしてそのこと自体にも動揺した。
こんなの、俺らしくないではないか。
そんな俺の心境を見透かしたように、ネアは強制的に試練を進行する。
「心の準備ができていない、とでも言いたげだね。でも何度出直しても同じだよ。第三の試練はそういう奴が相手なんだ。心の準備なんかさせてくれない。その名を聞けば、君なら理解するだろう。いでよ、テリブルドラゴン!」
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