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第六章 試練編
第219話 海底都市
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意外にも新しい仲間は早くに獲得できた。
俺がシミアン王国に干渉していることを不安に思ったのか、ネアが神の用意した助っ人に関する情報を送ってきたので、俺は誰がその助っ人なのかを事前に知れた。
だから俺はシミアン王国に飛んで、直接勧誘してそいつを仲間に引き入れてきた。
ほかにも王国の地から全世界に向けて俺が世界王になったことを宣言したし、仲間を獲得した後には諸島連合の内戦も治めた。
これで心置きなく試練に集中できるようになった。
いまは早く第二の試練に挑まなければならない。あんまりのんびりしていると、また紅い狂気にちょっかいを出されかねない。
第二の試練は海底神殿だ。
海底神殿は未開の大陸の北端と諸島連合の最西端の島を結んだ中間くらいの位置にある。神殿の細かい位置は、エアに水の操作型魔法で海中の空間把握をしてもらうことで探してもらった。
俺とエアは自分を覆う空気とは別に、武器として一立米、つまり千リットルの空気を引き連れて海へと潜った。
二人を包む空気内では、エアが闇のワープゲートで海上とつなげてくれているおかげで、常に新鮮な空気を吸うことができた。
途中で巨大な海洋イーターに襲われたが、俺が空気を操作するまでもなく、エアの水の操作型魔法で簡単に蹴散らすことができた。
やはり神の用意した試練レベルでなければ相手にはならない。
「ずいぶんと深いな」
俺たちは水面からは十キロ程度の深度まで潜っていた。
もちろん海面はまったく見えず、光も届かない。エアの光の魔法がなければ真っ暗闇だ。
そんな場所に、海底神殿の入り口はあった。海溝の底に穴が開いており、そこから海底洞窟を進む。
洞窟を抜けた先に、別世界のような広大な空間が広がっていた。天井が日中の空のように明るく空間を照らしている。
「うわあ、きれい……」
俺たちの目の前に姿を現したのは海底都市だった。中央に巨大な神殿があり、その周囲には放射状に伸びた道と、円形に並んだ建物が年輪みたいに並んでいる。
その光景を見て、俺はアトランティスという言葉を連想した。アトランティスというのは約九千年前に海中に没したとされる伝説上の島で、代表的な超古代文明の一つとしても話題にされる。
試しに神殿の周辺の建物の一つに入ってみると、立方体や直方体の石でできたテーブルや椅子があるのみで、生活感はまるでなく、模型のような状態だった。
この空間が試練のためだけに造られたものなら、それも当然のことだろう。本来であれば見向きもしないものの細部にこだわるのは無駄だ。神殿以外までよく造ったものだと感心した。
「神様って暇なのかしら」
「そう思うよな」
エアと笑い合い、俺たちは神殿の方へと向かった。
神殿はほとんど白い石で造られており、入り口を閉ざす観音開きの扉は水色の重厚な石でできていた。
俺が右の扉、エアが左の扉に触れて同時に押すが、扉はビクともしない。
「エスト!」
水の空間把握モードを展開していたエアがいち早く気づき、俺に後ろを振り向くように促した。
神殿から見た海底都市の景色、そこには無数の魚がいた。建物の陰に隠れていたようで、円形に俺たちを包囲している。
魚たちの体が石でできていることは遠目にも分かった。真っ白な体に緑の目が仄暗く光っている。
そして、魚たちはいっせいに襲ってきた。
「これ、敵か? さすがに多すぎないか?」
「たぶん八千くらいいると思う」
ここが水中であることがもどかしい。いかんせん、俺が操作するための空気の量が少ない。
もっとも、俺以外の魔導師は普段からこういう感覚なのだろう。空気の魔法というのがいかに恵まれたものかを思い知る。
「水の魔法が効かない!」
そう言ってエアは光線を放って攻撃している。
石魚は光線によって砕け散るが、とても八千という量をさばききることはできない。
「早く神殿に入ったほうがよさそうだな」
俺はひとまず藍玉を使って機工巨人を召喚した。機工巨人に石魚どもを蹴散らせさせながら、俺は神殿の扉を押す。しかしビクともしない。
「パズルか? くそっ、こんなときに」
パズルは好きだが、じっくり考えたいタイプだ。俺に限ったことではないと思うが、焦らされると集中できず時間がかかってしまう。
パズルはフラスコの断面のように円から二本の直線が延びた模様が掘り込まれた円形パネルがいくつもはめ込まれており、それをグルグルと回すことができるようになっていた。中には円形はなく二本の直線だけのものもある。
こういうのはたいてい、端の円からもう一端の円までを二本の線でできた道でつなぎ、円から円へ水がこぼれず流れるイメージでつなぐのが正解だ。
今回の場合、その発想に至るのは容易で、それを実現するのが難しいパターンだ。
石魚たちはかなり迫ってきていた。なにしろ小さい魚が無数にいるのだから、機工巨人がいくら蹴散らしても両脇からすり抜けてくる。
エアの攻撃は得意な空気操作にシフトしていた。しかし量が少ないのと海水の圧力で難航し、魚たちの前線はどんどん迫ってくる。
「もう少し持ちこたえろ。すぐ開ける」
俺はパズルの全景を脳内に焼きつけ、高速でそれを動かした。普段の空間把握モードで空気の操作リンクをつなげるイメージにも似ている。そのおかげで二分弱で解答に辿り着き、実際に扉の円形パネルを回転させていった。
「開いたぞ!」
「もう来てるよ!」
石魚たちは手を伸ばせば届く距離まで迫ってきていた。石魚は攻撃すれば崩れ落ちるが、ただバリアを張るだけだと貫通してくる。
俺とエアは空気で攻撃を続けながら後退し、神殿の中へと入り、扉を閉めた。扉の裏側からも表側で動かしたパズルを操作できたので、あえて正解を崩すことで扉をロックした。
機工巨人を消すイメージをすると、手のひらで藍色が発光して藍玉が戻った。
第二の試練はおそらくここからが本番だ。
だが、すでにだいぶ疲れている。
「エスト、神殿内は外よりも水圧が強い。空気でバリアを張っているだけでも消耗するから急いだほうがよさそう」
元々、ここは俺の世界でいうところのマリアナ海溝と同じくらいの深度の海底だ。神殿の外にいる時点で水圧は相当なものだった。
それなのに神殿内は圧が二倍くらい強い。空気のバリアが破れたら一巻の終わりだ。
「ああ、そうだな。だが油断はするなよ。ここからが試練だからな」
俺がシミアン王国に干渉していることを不安に思ったのか、ネアが神の用意した助っ人に関する情報を送ってきたので、俺は誰がその助っ人なのかを事前に知れた。
だから俺はシミアン王国に飛んで、直接勧誘してそいつを仲間に引き入れてきた。
ほかにも王国の地から全世界に向けて俺が世界王になったことを宣言したし、仲間を獲得した後には諸島連合の内戦も治めた。
これで心置きなく試練に集中できるようになった。
いまは早く第二の試練に挑まなければならない。あんまりのんびりしていると、また紅い狂気にちょっかいを出されかねない。
第二の試練は海底神殿だ。
海底神殿は未開の大陸の北端と諸島連合の最西端の島を結んだ中間くらいの位置にある。神殿の細かい位置は、エアに水の操作型魔法で海中の空間把握をしてもらうことで探してもらった。
俺とエアは自分を覆う空気とは別に、武器として一立米、つまり千リットルの空気を引き連れて海へと潜った。
二人を包む空気内では、エアが闇のワープゲートで海上とつなげてくれているおかげで、常に新鮮な空気を吸うことができた。
途中で巨大な海洋イーターに襲われたが、俺が空気を操作するまでもなく、エアの水の操作型魔法で簡単に蹴散らすことができた。
やはり神の用意した試練レベルでなければ相手にはならない。
「ずいぶんと深いな」
俺たちは水面からは十キロ程度の深度まで潜っていた。
もちろん海面はまったく見えず、光も届かない。エアの光の魔法がなければ真っ暗闇だ。
そんな場所に、海底神殿の入り口はあった。海溝の底に穴が開いており、そこから海底洞窟を進む。
洞窟を抜けた先に、別世界のような広大な空間が広がっていた。天井が日中の空のように明るく空間を照らしている。
「うわあ、きれい……」
俺たちの目の前に姿を現したのは海底都市だった。中央に巨大な神殿があり、その周囲には放射状に伸びた道と、円形に並んだ建物が年輪みたいに並んでいる。
その光景を見て、俺はアトランティスという言葉を連想した。アトランティスというのは約九千年前に海中に没したとされる伝説上の島で、代表的な超古代文明の一つとしても話題にされる。
試しに神殿の周辺の建物の一つに入ってみると、立方体や直方体の石でできたテーブルや椅子があるのみで、生活感はまるでなく、模型のような状態だった。
この空間が試練のためだけに造られたものなら、それも当然のことだろう。本来であれば見向きもしないものの細部にこだわるのは無駄だ。神殿以外までよく造ったものだと感心した。
「神様って暇なのかしら」
「そう思うよな」
エアと笑い合い、俺たちは神殿の方へと向かった。
神殿はほとんど白い石で造られており、入り口を閉ざす観音開きの扉は水色の重厚な石でできていた。
俺が右の扉、エアが左の扉に触れて同時に押すが、扉はビクともしない。
「エスト!」
水の空間把握モードを展開していたエアがいち早く気づき、俺に後ろを振り向くように促した。
神殿から見た海底都市の景色、そこには無数の魚がいた。建物の陰に隠れていたようで、円形に俺たちを包囲している。
魚たちの体が石でできていることは遠目にも分かった。真っ白な体に緑の目が仄暗く光っている。
そして、魚たちはいっせいに襲ってきた。
「これ、敵か? さすがに多すぎないか?」
「たぶん八千くらいいると思う」
ここが水中であることがもどかしい。いかんせん、俺が操作するための空気の量が少ない。
もっとも、俺以外の魔導師は普段からこういう感覚なのだろう。空気の魔法というのがいかに恵まれたものかを思い知る。
「水の魔法が効かない!」
そう言ってエアは光線を放って攻撃している。
石魚は光線によって砕け散るが、とても八千という量をさばききることはできない。
「早く神殿に入ったほうがよさそうだな」
俺はひとまず藍玉を使って機工巨人を召喚した。機工巨人に石魚どもを蹴散らせさせながら、俺は神殿の扉を押す。しかしビクともしない。
「パズルか? くそっ、こんなときに」
パズルは好きだが、じっくり考えたいタイプだ。俺に限ったことではないと思うが、焦らされると集中できず時間がかかってしまう。
パズルはフラスコの断面のように円から二本の直線が延びた模様が掘り込まれた円形パネルがいくつもはめ込まれており、それをグルグルと回すことができるようになっていた。中には円形はなく二本の直線だけのものもある。
こういうのはたいてい、端の円からもう一端の円までを二本の線でできた道でつなぎ、円から円へ水がこぼれず流れるイメージでつなぐのが正解だ。
今回の場合、その発想に至るのは容易で、それを実現するのが難しいパターンだ。
石魚たちはかなり迫ってきていた。なにしろ小さい魚が無数にいるのだから、機工巨人がいくら蹴散らしても両脇からすり抜けてくる。
エアの攻撃は得意な空気操作にシフトしていた。しかし量が少ないのと海水の圧力で難航し、魚たちの前線はどんどん迫ってくる。
「もう少し持ちこたえろ。すぐ開ける」
俺はパズルの全景を脳内に焼きつけ、高速でそれを動かした。普段の空間把握モードで空気の操作リンクをつなげるイメージにも似ている。そのおかげで二分弱で解答に辿り着き、実際に扉の円形パネルを回転させていった。
「開いたぞ!」
「もう来てるよ!」
石魚たちは手を伸ばせば届く距離まで迫ってきていた。石魚は攻撃すれば崩れ落ちるが、ただバリアを張るだけだと貫通してくる。
俺とエアは空気で攻撃を続けながら後退し、神殿の中へと入り、扉を閉めた。扉の裏側からも表側で動かしたパズルを操作できたので、あえて正解を崩すことで扉をロックした。
機工巨人を消すイメージをすると、手のひらで藍色が発光して藍玉が戻った。
第二の試練はおそらくここからが本番だ。
だが、すでにだいぶ疲れている。
「エスト、神殿内は外よりも水圧が強い。空気でバリアを張っているだけでも消耗するから急いだほうがよさそう」
元々、ここは俺の世界でいうところのマリアナ海溝と同じくらいの深度の海底だ。神殿の外にいる時点で水圧は相当なものだった。
それなのに神殿内は圧が二倍くらい強い。空気のバリアが破れたら一巻の終わりだ。
「ああ、そうだな。だが油断はするなよ。ここからが試練だからな」
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