84 / 302
第二章 帝国編
第83話 商業区域⑤
しおりを挟む
エストが去った数時間後のこと、商業区域にて。
「さあ、開けてちょうだい!」
「し、しかし……」
「さっさと開けな!」
黒いオーラをまとった初老女性の気迫に押され、宿の受付の男は仕方なく鍵穴に鍵を差し込んだ。
刹那、鍵穴から強烈な風が噴き出し、受付の男を吹き飛ばした。煉瓦を突き破り、二階の高さから投げ出された。
「鍵も飛んでいっちゃったよ」
大柄の男の背中に縛りつけられた少年が手足をだらんと垂れて溜息をついた。
誰も驚かない。予期していたのだ。
あの狡猾な少年が防御策を講じていないはずがないと。
「私に任せなさい」
大柄の男が扉の前に立った。
密度の薄い白髪の男は初老ながらも腕っ節には自信があるらしく、扉に体当たりをかました。腕っ節といっても、彼の腕はもはや動かないのだが。
――ドシン。
扉は留め具が外れて床に倒れた。
三人はそのまま部屋の中へと侵入する。
部屋には三人の少女が川の字になって寝ていた。男の影が三人の顔に覆いかぶさったとき、いちばん手前で眠っていた少女が目を覚ました。
「――ッ!」
思わず息を呑んだ。悲鳴をあげることすら忘れていた。声が出ない。
それはおそらく魔術の類ではなく、あまりの恐怖に身体が声の出し方を忘れてしまったのだ。
彼女の目の前にあったのは、見覚えのある顔だった。全身を巡る血が恐怖を運んでいる。
少女は奥に眠る二人を叩いて起こそうとするが、二人には起きる気配がない。
「無駄だよ、サンディア・グレインさん。二人は魔術で寝ているからね。君のこともさっき触ったから眠らせられるんだけど、さすがに起きたばっかりだと催眠への耐性が高いね」
「いい気味さね。眠っていたほうが苦しまずに済んだかもしれないねぇ」
唯一起きているサンディアは、横たわったままのハーティ・スタックとイル・マリルを背中にかばっているが、敵に相対する彼女の瞳は焦点が合っていなかった。
強烈な睡魔が五感を鈍らせ、思考をも鈍らせているのだ。
「ねえ、ママ、もういい? もうやってもいい?」
パーパ・パパ・アグリの背中に縛りつけられた状態でおんぶされている少年、フルー・フル・アグリが大きな声で呼びかけた。
マンマ・ママ・アグリはニタニタと笑いながら強く頷いた。
「いいよ、やっちまいな!」
少年の懐から透明なビンが滑り出てきて空中を浮遊する。
ビンの中には透明な液体が入っており、ビンの動きに合わせて液体の表面が波打っている。
「ふふふ。お姉ちゃん、これが何だか分かる?」
サンディアは首を振った。まだ声が出ない。
全身を血のように巡る恐怖には棘があって、血管を針で突くように全身に痛みを生んだ。
おやつを待てない子供のように、マンマが堪えきれなくなって答えを口にする。
「これは殺虫液だよ。イーター規格のね。まあ、ようは激烈な酸ってわけさね。人間の皮膚なんか一瞬で蒸発しちまうよ。神経が焼かれる痛み、噴き出す血、けたたましい悲鳴。楽しみだねぇ」
フルーがビンを凝視している。宙に浮遊するビンのガラス蓋が、これまた勝手に開く。
フルーが魔導師なのだ。魔術師は魔導師にはなれない。だからフルーが魔導師だと分かるのだ。
マンマとパーパは魔術師だが、その子供は魔術師にはならない。魔術師は精霊が人と成った者だが、人と成ったからには、彼らはもう精霊ではなく人なのであり、その子供は人なのだ。
だから人としてフルーは精霊と契約して魔導師になれるのだ。
ビンが傾けられる。
透明な液体が一粒、ポツっと垂れた。木床に落ちたが、そこで一粒の液体がグチュグチュと音を立てて暴れ出す。そしてものの数秒のうちに拳大の穴ができあがった。
サンディアは動けなかった。寝たまま起きられない二人を護らなければならず、逃げるわけにはいかなかった。
それに、パーパの魔術で強烈な睡魔に襲われているため、正常な判断もできないし、思うように身体が動かない。おまけに足が竦んでしまっている。
「実験っ、実験っ、蛙より面白い反応見せてよね、お姉ちゃん!」
ガラスの操作型魔導師・フルーによって、ビンが宙を滑るように移動し、サンディアの頭上へと運ばれる。
そして、ビンが傾けられる。
サンディアにはどうすることもできなかった。身体が動かなかった。もはやなぜ動かないのかも分からない。ただただ恐怖に侵されていた。
一粒の涙が頬を伝う。流れ星のように。
「助けて……」
やっと出た声は、擦れてほとんど誰にも聞こえないような小さなものだった。
無情にもビンは傾けられ、透明な液体がサンディアに影を落とし、そして距離を縮める。
液体と影の距離はゼロになった。場所はサンディアの頬。
「はーっはっは、どうさね、どうさね!」
「ギェアエアアアアアアあいいいいっ!!」
甲高い悲鳴。マンドラゴラを連想させる奇声。どれほどの苦痛がこれほどの悲鳴を生み出すのか。
それを耳元で食らったパーパはよろけて尻餅を着いた。
悲鳴の主はフルーだった。
ビンの中が空になっても、サンディアの頬に落ちていた薄い影は消えなかった。
影が濃度を増し、漆黒へと変貌し、サンディアの頬の上を移動する。
漆黒の影は首を伝い、肩を伝い、腕を伝い、指を伝い、ベッド、そして、木床へと降りた。
「フルー、大丈夫か! どうなっている、どうしてこんなことに……」
「痛いよ痛いよ痛いよぉおおお! 大丈夫じゃない! 痛い痛いぃ……」
フルーは頭部、額、目蓋と順に肉が溶けて溶岩のように流れ落ちていく。目も鼻も塞がり、そして口も塞がり声が出せず呻くだけとなった。
「ああ、なんてこと、なんてこと! あたしのかわいい坊や!」
肉の溶解が止まり、フルーの顔は凹凸の激しいのっぺらぼうとなった。
彼の苦しみは溶解の痛みだけではない。呼吸ができない苦しみも加わり、フルーは動かない腕で喉をかきむしろうともがいている。
「自業自得だね。おまえはそれを人にやろうとしたんだ。でもよかったじゃないか。幸いなことに、実験結果を身をもって知ることができたんだからね」
先ほど床に下りた影が盛り上がり、人の形になった。そして影が霧散し、その人影の正体があらわになった。
「貴様は、ダース・ホーク! 貴様が、貴様がぁああああ!」
マンマがダースへと飛びかかる。いまの彼女は腕が動かないため、肩から突っ込む。
だが、彼女の体はバタリと床に倒れた。彼女の足が床に埋もれたのだ。
「実を言うとね、僕は世界を監視しているんだ。影を通してね。僕はそこで何を見てもできるだけ干渉しないようにしている。僕の個人的な感情で干渉することは理不尽なことだからね。でも、僕の監視のせいで魔術師にも同じ光景が覗かれてハーティとイルがおまえたちの恨みをかってしまったらしいからね。責任があるから、今回ばかりは助けるよ」
顔を歪めて聞いていたパーパがダースを睨み上げる。
彼はフルーを背負っていて自由に動けない。それでも彼の瞳には隙あらばダースに触れて催眠の魔術発動条件を満たそうとしている気配があった。
「フルーが溶解液をかけたのはサンディア・グレインだ。それを助けるのは理不尽ではないのか?」
パーパのその言葉に、無表情だったダースの口元がわずかに歪んだ。わずかに気分を害したのではない。我慢していた感情が漏れたのだ。
ダースがグイッとパーパの顔に自分の顔を近づける。接触を恐れていない。
反対にパーパが恐怖した。蛇に睨まれた蛙のように動けなかった。迂闊に動けないし、冷静だとしても身体が硬直している。
「例外はあるよ。おまえたちだって孫のためなら何でもするだろう? 僕だってね、最愛の女性を守るためなら何でもするよ」
パーパは息を呑んだ。恐怖の色に染まった彼の瞳には自らの終焉が見えているかもしれない。
怒らせてはいけない人間を怒らせてしまった。額に大粒の汗を浮かべ、顎を震わせて歯をカチカチと鳴らした。
「パーパ・パパ・アグリ、マンマ・ママ・アグリ、それとバカ餓鬼。おまえたちは未開の大陸に行ったことがあるかい?」
「未開の大陸だぁ? そんなところ、行ったことあるわけないさね。あそこはネームド・オブ・ネームド級のイーターがゴロゴロといる所。一度行ったら生きて帰れるわけがないじゃないさね!」
「僕は行ったことあるよ。すぐに逃げ帰ったけどね。おまえたちも行っておいでよ。片道切符でね。それが相応の報いというものだ」
ダースが言いおわらないうちに、三人は自分の影に沈みはじめていた。
沈まないようにどこかに捕まろうとしても、影は必ずつきまとう。その影に飲み込まれるのだ。どんなにもがいても抗うことはできない。空を飛べるわけでもなければ、絶対に抗えない。
フルーは相変わらず喉をかきむしろうとして唸りつづけているが、パーパとマンマはそれを尻目にダースを睨み、思いつく限りの罵声を浴びせつづけた。
三人が完全に飲み込まれて影が消えたとき、ダースの後ろから弱々しい声がそよ風のように流れてくる。
「ダース……」
「怖い思いをさせてしまったね。すまない。帝国内では表立って動けないんだ。でも君たちを連れ帰ることくらいはできる。帰ろう」
「うん。ありがとう」
ダースが心苦しそうな面持ちで振り返ると、彼の最愛の人は涙を流していた。しかし、優しく微笑んでいた。
「さあ、開けてちょうだい!」
「し、しかし……」
「さっさと開けな!」
黒いオーラをまとった初老女性の気迫に押され、宿の受付の男は仕方なく鍵穴に鍵を差し込んだ。
刹那、鍵穴から強烈な風が噴き出し、受付の男を吹き飛ばした。煉瓦を突き破り、二階の高さから投げ出された。
「鍵も飛んでいっちゃったよ」
大柄の男の背中に縛りつけられた少年が手足をだらんと垂れて溜息をついた。
誰も驚かない。予期していたのだ。
あの狡猾な少年が防御策を講じていないはずがないと。
「私に任せなさい」
大柄の男が扉の前に立った。
密度の薄い白髪の男は初老ながらも腕っ節には自信があるらしく、扉に体当たりをかました。腕っ節といっても、彼の腕はもはや動かないのだが。
――ドシン。
扉は留め具が外れて床に倒れた。
三人はそのまま部屋の中へと侵入する。
部屋には三人の少女が川の字になって寝ていた。男の影が三人の顔に覆いかぶさったとき、いちばん手前で眠っていた少女が目を覚ました。
「――ッ!」
思わず息を呑んだ。悲鳴をあげることすら忘れていた。声が出ない。
それはおそらく魔術の類ではなく、あまりの恐怖に身体が声の出し方を忘れてしまったのだ。
彼女の目の前にあったのは、見覚えのある顔だった。全身を巡る血が恐怖を運んでいる。
少女は奥に眠る二人を叩いて起こそうとするが、二人には起きる気配がない。
「無駄だよ、サンディア・グレインさん。二人は魔術で寝ているからね。君のこともさっき触ったから眠らせられるんだけど、さすがに起きたばっかりだと催眠への耐性が高いね」
「いい気味さね。眠っていたほうが苦しまずに済んだかもしれないねぇ」
唯一起きているサンディアは、横たわったままのハーティ・スタックとイル・マリルを背中にかばっているが、敵に相対する彼女の瞳は焦点が合っていなかった。
強烈な睡魔が五感を鈍らせ、思考をも鈍らせているのだ。
「ねえ、ママ、もういい? もうやってもいい?」
パーパ・パパ・アグリの背中に縛りつけられた状態でおんぶされている少年、フルー・フル・アグリが大きな声で呼びかけた。
マンマ・ママ・アグリはニタニタと笑いながら強く頷いた。
「いいよ、やっちまいな!」
少年の懐から透明なビンが滑り出てきて空中を浮遊する。
ビンの中には透明な液体が入っており、ビンの動きに合わせて液体の表面が波打っている。
「ふふふ。お姉ちゃん、これが何だか分かる?」
サンディアは首を振った。まだ声が出ない。
全身を血のように巡る恐怖には棘があって、血管を針で突くように全身に痛みを生んだ。
おやつを待てない子供のように、マンマが堪えきれなくなって答えを口にする。
「これは殺虫液だよ。イーター規格のね。まあ、ようは激烈な酸ってわけさね。人間の皮膚なんか一瞬で蒸発しちまうよ。神経が焼かれる痛み、噴き出す血、けたたましい悲鳴。楽しみだねぇ」
フルーがビンを凝視している。宙に浮遊するビンのガラス蓋が、これまた勝手に開く。
フルーが魔導師なのだ。魔術師は魔導師にはなれない。だからフルーが魔導師だと分かるのだ。
マンマとパーパは魔術師だが、その子供は魔術師にはならない。魔術師は精霊が人と成った者だが、人と成ったからには、彼らはもう精霊ではなく人なのであり、その子供は人なのだ。
だから人としてフルーは精霊と契約して魔導師になれるのだ。
ビンが傾けられる。
透明な液体が一粒、ポツっと垂れた。木床に落ちたが、そこで一粒の液体がグチュグチュと音を立てて暴れ出す。そしてものの数秒のうちに拳大の穴ができあがった。
サンディアは動けなかった。寝たまま起きられない二人を護らなければならず、逃げるわけにはいかなかった。
それに、パーパの魔術で強烈な睡魔に襲われているため、正常な判断もできないし、思うように身体が動かない。おまけに足が竦んでしまっている。
「実験っ、実験っ、蛙より面白い反応見せてよね、お姉ちゃん!」
ガラスの操作型魔導師・フルーによって、ビンが宙を滑るように移動し、サンディアの頭上へと運ばれる。
そして、ビンが傾けられる。
サンディアにはどうすることもできなかった。身体が動かなかった。もはやなぜ動かないのかも分からない。ただただ恐怖に侵されていた。
一粒の涙が頬を伝う。流れ星のように。
「助けて……」
やっと出た声は、擦れてほとんど誰にも聞こえないような小さなものだった。
無情にもビンは傾けられ、透明な液体がサンディアに影を落とし、そして距離を縮める。
液体と影の距離はゼロになった。場所はサンディアの頬。
「はーっはっは、どうさね、どうさね!」
「ギェアエアアアアアアあいいいいっ!!」
甲高い悲鳴。マンドラゴラを連想させる奇声。どれほどの苦痛がこれほどの悲鳴を生み出すのか。
それを耳元で食らったパーパはよろけて尻餅を着いた。
悲鳴の主はフルーだった。
ビンの中が空になっても、サンディアの頬に落ちていた薄い影は消えなかった。
影が濃度を増し、漆黒へと変貌し、サンディアの頬の上を移動する。
漆黒の影は首を伝い、肩を伝い、腕を伝い、指を伝い、ベッド、そして、木床へと降りた。
「フルー、大丈夫か! どうなっている、どうしてこんなことに……」
「痛いよ痛いよ痛いよぉおおお! 大丈夫じゃない! 痛い痛いぃ……」
フルーは頭部、額、目蓋と順に肉が溶けて溶岩のように流れ落ちていく。目も鼻も塞がり、そして口も塞がり声が出せず呻くだけとなった。
「ああ、なんてこと、なんてこと! あたしのかわいい坊や!」
肉の溶解が止まり、フルーの顔は凹凸の激しいのっぺらぼうとなった。
彼の苦しみは溶解の痛みだけではない。呼吸ができない苦しみも加わり、フルーは動かない腕で喉をかきむしろうともがいている。
「自業自得だね。おまえはそれを人にやろうとしたんだ。でもよかったじゃないか。幸いなことに、実験結果を身をもって知ることができたんだからね」
先ほど床に下りた影が盛り上がり、人の形になった。そして影が霧散し、その人影の正体があらわになった。
「貴様は、ダース・ホーク! 貴様が、貴様がぁああああ!」
マンマがダースへと飛びかかる。いまの彼女は腕が動かないため、肩から突っ込む。
だが、彼女の体はバタリと床に倒れた。彼女の足が床に埋もれたのだ。
「実を言うとね、僕は世界を監視しているんだ。影を通してね。僕はそこで何を見てもできるだけ干渉しないようにしている。僕の個人的な感情で干渉することは理不尽なことだからね。でも、僕の監視のせいで魔術師にも同じ光景が覗かれてハーティとイルがおまえたちの恨みをかってしまったらしいからね。責任があるから、今回ばかりは助けるよ」
顔を歪めて聞いていたパーパがダースを睨み上げる。
彼はフルーを背負っていて自由に動けない。それでも彼の瞳には隙あらばダースに触れて催眠の魔術発動条件を満たそうとしている気配があった。
「フルーが溶解液をかけたのはサンディア・グレインだ。それを助けるのは理不尽ではないのか?」
パーパのその言葉に、無表情だったダースの口元がわずかに歪んだ。わずかに気分を害したのではない。我慢していた感情が漏れたのだ。
ダースがグイッとパーパの顔に自分の顔を近づける。接触を恐れていない。
反対にパーパが恐怖した。蛇に睨まれた蛙のように動けなかった。迂闊に動けないし、冷静だとしても身体が硬直している。
「例外はあるよ。おまえたちだって孫のためなら何でもするだろう? 僕だってね、最愛の女性を守るためなら何でもするよ」
パーパは息を呑んだ。恐怖の色に染まった彼の瞳には自らの終焉が見えているかもしれない。
怒らせてはいけない人間を怒らせてしまった。額に大粒の汗を浮かべ、顎を震わせて歯をカチカチと鳴らした。
「パーパ・パパ・アグリ、マンマ・ママ・アグリ、それとバカ餓鬼。おまえたちは未開の大陸に行ったことがあるかい?」
「未開の大陸だぁ? そんなところ、行ったことあるわけないさね。あそこはネームド・オブ・ネームド級のイーターがゴロゴロといる所。一度行ったら生きて帰れるわけがないじゃないさね!」
「僕は行ったことあるよ。すぐに逃げ帰ったけどね。おまえたちも行っておいでよ。片道切符でね。それが相応の報いというものだ」
ダースが言いおわらないうちに、三人は自分の影に沈みはじめていた。
沈まないようにどこかに捕まろうとしても、影は必ずつきまとう。その影に飲み込まれるのだ。どんなにもがいても抗うことはできない。空を飛べるわけでもなければ、絶対に抗えない。
フルーは相変わらず喉をかきむしろうとして唸りつづけているが、パーパとマンマはそれを尻目にダースを睨み、思いつく限りの罵声を浴びせつづけた。
三人が完全に飲み込まれて影が消えたとき、ダースの後ろから弱々しい声がそよ風のように流れてくる。
「ダース……」
「怖い思いをさせてしまったね。すまない。帝国内では表立って動けないんだ。でも君たちを連れ帰ることくらいはできる。帰ろう」
「うん。ありがとう」
ダースが心苦しそうな面持ちで振り返ると、彼の最愛の人は涙を流していた。しかし、優しく微笑んでいた。
0
お気に入りに追加
195
あなたにおすすめの小説
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~
平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。
しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。
カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。
一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル
14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった
とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり
奥さんも少女もいなくなっていた
若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました
いや~自炊をしていてよかったです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる