女の子にされちゃう!?「……男の子やめる?」彼女は優しく撫でた。

広田こお

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連行

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日本の少子化は止まらず。人口は半減した。子供を育める若い女性は少なく。経済が破綻するのも時間の問題のように思えた。

 だが、そこで国の賢い人たちは考えた。結婚しない男はお荷物だから女性になってもらおうと。性転換は遺伝子操作することですでに可能であったのだから……。それは合理的だろう。そして少なくなった男性と多くなった女性で一夫多妻制にして、一気に人口を増やそうという計画だった。



 僕は少々焦っていた。なぜってこのまま二十歳になるまでに結婚できなかったら、独身罪で女性に性転換させられてしまうからだ。

 なんとしてもそれだけは避けなければいけない。そうと決まったらマッチングアプリで次にマッチングした人にマッハでプロポーズを申し込もう。そう思いつつアプリをいじるがいざプロフィールをみるとやっぱりしっくり来なくてプロポーズなんてできない。



 結局僕に結婚なんて無理ゲーだったのか。一夫多妻の制度下でも彼女一人できない僕には。時は無常に流れ僕は性転換を強制的にさせられる日を迎えていた。



 コンコンとドアを叩く音。

 「秋山寛さん。いらっしゃいますか?独身罪で連行いたします。開けなさい。」



 僕は観念してドアを開ける。するとそこには愛らしい少女が制服を着て立っていた。年は十二歳ぐらいに思える、その長い髪をした背丈の低い女性は優しく僕に手を差し伸べる。



 「秋山寛さんですね?女の子にされるのはイヤかしら。あなたには最後のチャンスがあります。国の決めた女の子と絶対に結婚すると誓うならココにサインしなさい。」

と彼女は続ける。



 「あ、いけない。名乗るのを忘れました。」

 彼女はペコリとお辞儀しながら自己紹介をした。



 「私、こうみえても警察官の代理なんです。……私のような女の子が来て怪しいと思う気持ちはわかります。あのう、結婚するのイヤですか?私手荒なことは避けたいので、できればサインして頂けると助かります。」



 「国の決めた相手って、相手だって意思があるわけだから、行き遅れた僕なんかと結婚したくないんじゃないかな?」

 と僕は疑問をぶつけてみた。



 「そうでもないですよ。あなたはその結婚相手に離婚されたら女の子にされてしまうという弱い立場になるわけです。従順な夫を求める女性からは結構ニーズあるんです。女の子は乱暴な人は嫌いなことが多いです。それはそうとサインされますか?それとも結婚は諦めて独身罪で女性化される方が良いですか?」

彼女はさらっと恐ろしいことを言った気がする。とはいえ最悪女の子にされてしまうというだけなのだから、サインしたほうがまだマシな気がした。



 「わかった。サインするよ。」

 僕は諦めて言う。



 「ではこの書類に目を通してくださいね。キチンと納得の上サインしたら、あなたは国が決めた相手との結婚が成立し、既婚者扱いになり独身罪を免れることができます。」



 僕はその書類をざっと目を通す。



一、あなたは佐藤麻里の夫になり、佐藤寛になります。

二、あなたは第2夫人を娶る権利を喪失します。

三、あなたは佐藤麻里と離婚した時、独身罪で女性化させらます。



 というようなことが書いてある。



 僕はもうどうにでもなれという気でサラサラっとサインする。佐藤麻里と言う子がとんでもない女の子で離婚したくなっても、今確実に女性化させられるよりはマシだろう。



 「サインしたよ。ところでこの佐藤麻里とは何時から一緒になるの?いや、そもそも誰なのこの子。ま、どうせ僕と同じようなもんでしょ性別違うだけで。そうでもなければこんな貧乏クジを引くわけないもんね。」

と言いつつサインした書類を女の子に手渡した。彼女は素早くその書類をしまうと。



 「私、貧乏クジを引いたつもりはありませんよ?」

 と言った。



 「へ?」

 どういうこと?



 「あ、知らないんだ。間抜けだね。独身罪で連行しにくるのは、国の決めた結婚相手なことぐらい調べればわかるのに。」



 彼女はクスクスと笑って。

 「私が佐藤麻里だよ。佐藤寛さん。いい子にしてたら女の子にはしないであげるから、私の言うことを良く聞くのよ?」

 と宣言した。



 僕はあまりのことに唖然とする。それはそうだろう。僕の生殺与奪の権利を持つ国が指定した妻に早くも悪印象を与えてしまったのだから。あまりのことに取り乱して、これが事実でない証拠を探す。



 「からかっているの?君はまだ中学に入るぐらいの年齢にしか見えないのだけど?大人を馬鹿にしない。佐藤麻里さんと会うのは本当はいつなの。」



 彼女は黙って身分証を差し出す。



 そこには僕が認めたくない事実が記載されていた。彼女の顔写真と佐藤麻里という名前、そして彼女の年齢は十八で成人している。彼女はニッコリと僕に微笑む。そして、優しく僕に命令した。



 「女の子になりたいのかしら?イヤなら、私にこの場で愛の告白をしなさい。プロポーズの言葉、欲しいなぁ?どうなの?」



 僕は金縛りにあったように何も言えずにいた。すると彼女は。

 「大丈夫、すぐに離婚したりしないから、怖がらないで?」

 と優しくフォローする。



 「私背が低いから、十八には見えないでしょ?そのう、か弱い乙女な自覚はあるし、だから、こう言う形の結婚なら家庭内暴力とか受けないかな?って思って。寛くんが私を馬鹿にしない限り、私も寛くんを大事にするから?ね?わかったらプロポーズして欲しいなぁ。」



 僕は観念して

 「佐藤麻里さん、結婚してください……。」

 とシンプルなプロポーズの言葉を伝えた。



 彼女は満面の笑みで。

 「はい、喜んで!」

 と応えるのだった。



 そうして、僕は佐藤麻里と籍を入れ法律上の夫婦になった。ひっかかるのは、こうして結婚はしたものの関係は極めて希薄で、初対面に毛が生えたも同然の夫婦である、ということである。

 つまり、このままでは何時彼女から離婚を言い渡されても何の不思議もないということだ。もちろん佐藤麻里は、「すぐに離婚したりしない」と言ってはいたが、女心があっという間に変わることなんて、あまりにありふれている。

 もし離婚ということになったら、僕は今度こそ連行されて、女の子として人生を再スタートすることになってしまうだろう。別にそれでも構わないだろうって?いや、想像してほしい、今まで股の間にあったものがなくなったら、どれだけ戸惑うことか?女性として男性を好きになる自分を想像するだけで



 「まぁ、ありえんわな。僕が女性になって男に抱かれるなんて。勘弁してくれ!」



 とつい独り言を言う僕。

 その独り言を麻里は聞き逃さなかった。
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