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世界の管理人の警告

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アンがボクの問いかけに悩んでいる。
「……そうね。旅にでるのも悪くないかもしれないけど」
「ダメですか?」
「この国はまだ、安定してないわ……」
とその時だ、この部屋に「三人目」の女がいた。

その三人目が口をひらく。
「はじめまして、と言うべきか……」
美人だ……。誰が見ても美人。
金髪、青い瞳。そして、均整のとれた体。
「あなた……、どうやってこの部屋に入ったのかしら?」
アンは警戒している。
「どう入るも、この世界の理は我らが決める。すなわち、我がこの部屋に入りたいと思えば、それを拒む通りはこの世界にはない……」
……どういうことだ。
「そう……。あなた、『世界の管理人』というわけね」
アンはよくわからないことを言った。
「左様。まさか我ら管理人のことを知っているとはな……、人形ごっこは早々にやめろ……。警告する。お前の行動は世界の理を乱している。到底、みのがし続けるわけにはいかない」
……人形ごっこ、管理人。ボクを傀儡にすることがそんなに悪いことなのだろうか……。

「あの……。ボクは別に、人形のように操られる傀儡の王でも構いませんが……」
「……部外者は黙っていろ……」
その美人はものすごい冷たい瞳でこちらをにらみつけ、あまりの恐怖からボクは発言するのを止めた。
「人形ごっこ……ね。止めないと言ったらどうするつもりかしら……」
「忠告だ……。この世に楽園はあってはならぬのだ……。説明は要らないだろ」
「つまり、あなたはこの世界を地獄に変えると……」
「違う!この世界は地獄なのだ。我らが地獄に変えるわけではない……」
「申し訳ないけど、あなたの忠告の意味するところがわからない以上、なにも約束できないわ……」
「……ふ。真理に気付いたわけではないのか……。愚かな囚人どもめ……。早く、悔い改めればいいものを……」
「侵入者よ!近衛兵!!来なさい!」
アンは高らかに侵入者の存在を兵に知らせた。
「……おろかな……。だが、警告はしたぞ……」
女はそう言って、窓から飛び降りた。

「……おい、地上五階の王宮のこの部屋から飛び降りるなんて……、死んだか?」
「バカね……、自殺ではないわよ。くわせものなんだから……」
「でも、この高さから……」
「世の中の理を決めるのは彼らよ……。地上五階から飛び降りても死なない、と彼らが決めれば、彼らは死なないわ……」
「意味がわからないよ……」
「……奇遇ね、私もわからないわ。ただ、推測で言っただけよ……」
……ボクは窓の外に顔を覗かせ、地上を見た。
「……ホントだ、だれも死んでいない……」
それは気味の悪いことだった。この高さから飛び降りて死なないなんてことがあっていいのか……。

……アンは考え込んでいる。
「……レイン、旅にでましょう。ココは危険だわ。というか、安全な場所に逃げる必要があるわ……」
「え、いいの?」
……ボクは、ちょっとだけ嬉しかった。ただ、あまりにも奇妙なことが続いたため、心躍るとはいかなかったが……。
「もう、この国が安定してないとか……。言っている場合ではなくなった気がする」
「……ここにいたら、いつかアイツに殺されるのかな?」
「さあね。わからない……。わからないことだらけ。でも、だからこそ、このことを帝国の賢者に報告する必要があるわ」
「……賢者?」
「そうよ、この世の理を調べる組織が帝国には存在するわ……。その研究所の長たちのことを賢者と呼んでいるの……」
「この世の理……。アイツも言っていたね……。なんなの、それ?」
「世界には法則があるわ……。それはわかるでしょ……。歴史は繰り返すとか、物理法則とか、親が2人居ないと子はなせないとか、そういう類いのものよ」
「それを調べてる機関……って事?なんのために?」
「いろいろと役に立つでしょ、自分が住んでいる世界のことなんだから」
……言われてみればそうか。
「なるほどね。それが帝国の力になるってことか……」
ボクはなんとなく、納得した。本当のところは、よくわからなかったわけだが。
「……そうね、単純に歴史の法則がわかれば、未来予知につかえるし、物理法則がわかれば、様々な兵器を作るのに役立つわ……。そして、いずれは生命の神秘すら、完全に解き明かす時がくるのかもしれないわね」
「……帝国ってすごいんだな……」
「まあね」
「……エリー様はもっとこのことについて、良く知っているのだろうね」
「ふふ、それはそうでしょうね……。レインくんは、エリー様のことが本当に好きなのね……。ちょっと嫉妬してしまうわね。影武者としては……」
「あ……。ごめんなさい。でも、アンさんのことも好きです」
「いまさら、取り繕っても、何も出ないわよ」
「ともあれ、旅に出れるんですね……。それは、嬉しいです」
「愛の逃避行みたいで、ドキドキしちゃう?悪くないよね!レイン君」
ちょっと空気がやわらかくなった。
「……そうですね。アンさんと一緒に旅に出るってことですよね……。楽しみです」
「あ……、旅の最中も、毎日キスして、イチャつこうね!……キミの義務だからね!」
「……え、は、はい」
「実のところ、キミには早くブラックシードという麻薬漬けになってもらわないとね、この薬は能力を高めるし、キミは私にそれで私に逆らえなくなるわけだから……ね?」
「……はい。でも、アンさんとそういうことするのはキライじゃないです!」
「ふふ、カワイイね。レイン君は」
ボクとアンさんは、一緒に旅支度をした。
……あまり、ゆっくりはできないらしい……。
アンさんに行き先についてきいたが……。
「そのうち教えてあげる……ね」
とはぐらかされてしまった。
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