上 下
12 / 13

港街アルバにて

しおりを挟む
私たちは今度は通行証を持っていたのでなんなく関所を超え、目的地の港街アルバに3ヵ月かけて到着した。

「海だ……」

私は海を見るのがはじめてだ。ジョフィアも多分そうだったのだろう。かなり歓迎した様子で

「すごい……どこまでも水が続いているなんて」

と感嘆していた。

さて、わたしたちは自由都市国家連邦の盟主であるこの街の議長の家に向かうことにした。

議長の家はライエット王国の王宮とは違い、豪邸であったが、まだ普通の家の範疇に収まるものだった。
緊張しつつ、ドアをノックし反応を待つ。

「どなたさまでしょうか?」

「ライエット王国の王女アルジェと護衛の者です」

アルジェが王家の証である、紋章入りのペンダントを見せると信用してくれたのか中に通してくれた。

「この中に議長のライネリオ様がいらっしゃいます」

そして従者が扉をあけ、一緒にはいるように促す。

「ああ、あなたが……アルジェ王女さまですか?」

とおそらくライネリオであろう男が訊ねてくる。
親書を手渡すとライネリオはびっくりしているようだ……。

「王女さまは亡命されたのですか……」

「亡命……ですか?」
アルジェはキョトンとして訊ね返した。

「はい、あなたをかくまうように言われております」
ライネリオは少し考え、

「ええと、親書の内容ご存じないようですね……。ライエット王国は現在内紛を抱えているそうです……。極秘裏に処理されていますが、領土の東半分が反乱軍の支配地になっているとか……。そして、それを陰で支援しているのが、ランドルという男だそうです」

「え、ええ?」
「アルジェ王女、あなたはランドルから結婚を迫られたと、手紙にあります。理由もなく断りつづけるのも、そろそろ苦しくなったので、あなたは私と結婚するように、とお父上のライエット国王がおっしゃっていますね」


「あなたと……私が……」
アルジェはあまりの事実に放心状態になっているようだ。

「東半分は表向きは王家に従っていますが、税収を王都に送ることはありませんし……。王命を堂々と聞き流しているそうです……」

「わたし……あなたと結婚したほうがいいのでしょうか?」
とアルジェはライエットに訊ねる。

「仮面夫婦でも結婚した方がいいでしょうね……。正直、私も驚いています。でも、たとえ嘘でも光栄ですよアルジェ王女様」

とライエットは応えた。

大変なことになったと私は思った。おそらくランドルはその東半分の領土のどこかにいて、反乱を指揮しているに違いなかった。

「護衛の方もしばらく、我が屋敷にとどまって、滞在されてはいかがでしょう。とりあえず、今夜は歓待いたしますよ」

「ありがとうございます……」
こころあらずという感じではあるが、なんとか礼を言葉にすると館を従者に案内してもらった。

そして、泊まる部屋それぞれ一部屋ずつ用意してもらう。

すぐにジョフィアが私の部屋を訪ねてきた。

「エルさん、はいって良い?」
ジョフェイアを部屋に入れると
「アルジェとライネリオさん、結婚するのかな?」
とジョフィアが訊ねてくる。

「んー、仮面夫婦でもしたほうがいいだろうね……。でも、やだね政略って」
「僕たちも……、結婚しない……?」

「何言っているのよ?」
「いや、僕も一応一人前の道具屋になったし……」

「んー、どうしよっかなぁ」
と気を持たせる返事をした私。

「やっぱり……、僕頼りないかな……」
と肩をおとすジョフィア。

「ごめん、ごめん、そんなことないって」

「いいよ、エルさん。慰めるぐらいなら……。結婚して!」
お、直球できたね。悪くない。

「じゃ、ダブル結婚する?」
「い、いいの!」

「いいよ、良い機会でしょ?もう半年もずっと一緒に旅してるし……うわ、急に抱きついてくるな!」
「エルさん、大好き!」

カワイイ奴め。
私は、私より若干背がひくいジョフィアを抱きしめ返してあげた。

こうしていると体温が心地良い。

「エルさん……」
ここまではカワイかったのだが。

「キスしていい?」
「だめ」

「じゃ、ほっぺで……」
「そういうの聞くのがだめ」

とからかうと

ジョフィアは何もいわず私をぎゅっともう一度抱きしめてきた。
そのあと、ジョファイのやさしい猛攻を私がしのぎきれたかは、良く覚えていない。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

旦那様、離縁の申し出承りますわ

ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」 大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。 領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。 旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。 その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。 離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに! *女性軽視の言葉が一部あります(すみません)

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

処理中です...