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光の剣聖
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みんなをつれて下町の酒場でどんちゃん騒ぎをしている。
脱獄したばかりでこういうことをするのもどうかとも思ったのだが、アルジェがお父さん、つまり王様にキチンと話してくれたせいか、お咎めなし、ということになったのだ。
「で、なんでみんなくるのさ」
と不満そうなジョフィア
「なんでー、仲間はずれにしないでよー」
とマリーは言った。
「そうだ、そうだ!」
とファーファ。
「私がこうして人間に戻れているということは、本当に、ヤツはこの街を離れて遠くにいったようですね……」
とサファリアは言った。
「それは……、私がいるってことはないの?」
アルジェが訊ねると
「それもありますけど、ある程度遠くにヤツが離れてくれないと……さすがに無理です」
そうして楽しく過ごしていると、後ろから、がさつな男が声をぶっきらぼうにかけてきた。
「よぉー、楽しそうじゃん。俺も混ぜてくんねーかな?」
「誰?」
「あんた、強いんだってな?でも俺もかなり強いぜ!」
「どうして私が強いと思うの?」
「謙遜するなって、剣聖って噂だぜ、ま、俺も剣聖なんだけどな……」
私は、この男のなれなれしさが気に入らなかったので、蹴りを入れた。
が、男はなんなくその蹴りをよけた。
「ふーん、なかなかやるようね……」
「だから、俺も剣聖なんだって……。信じてくれた?」
たしかに、私の攻撃を避けれた人間は、私が脱獄してから誰一人としていなかった。
「そ、わかった。信じることにする。でも、だから、何のようなの?剣聖さん」
「ランドルってヤツに頼まれて、様子見に来た。おっと警戒すんなって、俺はヤツと仲が良いわけではないからな」
「ランドル?どういうこと?」
「ヤツは俺がただの光の剣聖だと勘違いしているようだが……。俺はおまえが現れるまではおそらく、闇の剣聖でもあった男さ」
「エル、大丈夫、その男からは確かに光と闇の両方の強い加護を感じるから……」
とマリーが言った。
「お、話が早くて助かるぜ。そっちの神官さんも、闇も光も信じているクチだな」
「マリー、どういうこと?」
私はマリーがダークプリーストだとは知らなかったので、驚いた。
「エル、闇はこの国では悪とされているけど……、必要なものなのよ。それは分かるかしら?」
とりあえず、頷かないと話がすすまなそうなので、私は
「そっか、考えてみれば、サファリアちゃんも闇の賢者だものね」
と同意してみせた。
「ヤツは光の力を盲信して、法の下なら、何をしてもいいと思っているようだが、俺はそうじゃない」
と男が言った。
「あいつ、俺が完全に光だけの剣聖だとおもってたみたいだ。だが、我々闇属性の人間は、簡単に、見定められるような単純な信仰は持ち合わせてないのさ」
男はニヤリと笑うと。
「嬢ちゃん、ヤツに命を狙われているぜ……。当たり前だけどな。あいにく俺は刺客なんて、そんなくだらない役回りはごめんでね」
「そう、でも光の剣聖なんでしょ?法律守らないでいいの?」
と訊ねると
「別に、法的にアイツが俺に頼んだわけじゃないからな、知らねーよ」
と笑った。
「俺はうまい酒が飲めればいいだけなんだ。どうせなら、君と一緒に乾杯しているほうが、ヤツと杯を交わすより百倍たのしそうだぜ」
「まあ、いいけど、まさかとは思うけど、ずっとついてくるつもり?」
「はっはっはー、そりゃー、まあ、君次第かな。一応これでも口説いているつもりなんだが……。やっぱり、俺のこと振っちゃうわけ?」
「彼氏いるんで」
と言って、ジョフィアの方をちらっとみる。
「まー、そう言わないでさ。と言いたいところだが、それじゃぁ、まあ、おいとまするわ。悪かったな、邪魔して……」
「何しに来たの?」
と真意を尋ねると男は
「面白そうだから来ただけだよ。人生、それが一番大事だ。じゃぁな」
と言って去って行った。
「エルさん、さっきの男からは闇も光も両方強く感じました……。不思議な人でしたね」
とサファリアが言った。
「そうだね……。悪いやつではなかったのかもね……」
「私も、光を完全否定しているわけではないです……」
とサファリア。
「エルは、無邪気だから、知らないのかもしれないけど、光の影にはいくらでも闇はあるものなのよ」
マリーが言うには、邪教と言われつつも、この国で星の神を陰で信仰しているものはそこそこいるらしい。
「わたしは、どっちを信じればいいのかな……」
「エルはたぶん、両方信じれるひとだよ……。そういう人もいるんだよね……」
「マリーが言うなら、そうなんだろうね」
「エルさん、そのぉ、このあと2次会2人でしませんか?」
ジョフィアは2人で飲みたかったらしい。
ま、当たり前か。
「お、来たね、エロガキ」
マリーがからかう。
「そこは……、大人と言ってください!」
「ごめん、ジョフィア……。今度埋め合わせするから」
「わかりました……」
と露骨にがっかりするジョフィア。
酒場からの帰り道は、ジョフィアに申し訳なくて、ずっと、ジョフィアの隣でいろいろフォローした。
けどさ、あの状況から2人で抜け出すのはさすがに恥ずかしかったよ……。ごめんね。
脱獄したばかりでこういうことをするのもどうかとも思ったのだが、アルジェがお父さん、つまり王様にキチンと話してくれたせいか、お咎めなし、ということになったのだ。
「で、なんでみんなくるのさ」
と不満そうなジョフィア
「なんでー、仲間はずれにしないでよー」
とマリーは言った。
「そうだ、そうだ!」
とファーファ。
「私がこうして人間に戻れているということは、本当に、ヤツはこの街を離れて遠くにいったようですね……」
とサファリアは言った。
「それは……、私がいるってことはないの?」
アルジェが訊ねると
「それもありますけど、ある程度遠くにヤツが離れてくれないと……さすがに無理です」
そうして楽しく過ごしていると、後ろから、がさつな男が声をぶっきらぼうにかけてきた。
「よぉー、楽しそうじゃん。俺も混ぜてくんねーかな?」
「誰?」
「あんた、強いんだってな?でも俺もかなり強いぜ!」
「どうして私が強いと思うの?」
「謙遜するなって、剣聖って噂だぜ、ま、俺も剣聖なんだけどな……」
私は、この男のなれなれしさが気に入らなかったので、蹴りを入れた。
が、男はなんなくその蹴りをよけた。
「ふーん、なかなかやるようね……」
「だから、俺も剣聖なんだって……。信じてくれた?」
たしかに、私の攻撃を避けれた人間は、私が脱獄してから誰一人としていなかった。
「そ、わかった。信じることにする。でも、だから、何のようなの?剣聖さん」
「ランドルってヤツに頼まれて、様子見に来た。おっと警戒すんなって、俺はヤツと仲が良いわけではないからな」
「ランドル?どういうこと?」
「ヤツは俺がただの光の剣聖だと勘違いしているようだが……。俺はおまえが現れるまではおそらく、闇の剣聖でもあった男さ」
「エル、大丈夫、その男からは確かに光と闇の両方の強い加護を感じるから……」
とマリーが言った。
「お、話が早くて助かるぜ。そっちの神官さんも、闇も光も信じているクチだな」
「マリー、どういうこと?」
私はマリーがダークプリーストだとは知らなかったので、驚いた。
「エル、闇はこの国では悪とされているけど……、必要なものなのよ。それは分かるかしら?」
とりあえず、頷かないと話がすすまなそうなので、私は
「そっか、考えてみれば、サファリアちゃんも闇の賢者だものね」
と同意してみせた。
「ヤツは光の力を盲信して、法の下なら、何をしてもいいと思っているようだが、俺はそうじゃない」
と男が言った。
「あいつ、俺が完全に光だけの剣聖だとおもってたみたいだ。だが、我々闇属性の人間は、簡単に、見定められるような単純な信仰は持ち合わせてないのさ」
男はニヤリと笑うと。
「嬢ちゃん、ヤツに命を狙われているぜ……。当たり前だけどな。あいにく俺は刺客なんて、そんなくだらない役回りはごめんでね」
「そう、でも光の剣聖なんでしょ?法律守らないでいいの?」
と訊ねると
「別に、法的にアイツが俺に頼んだわけじゃないからな、知らねーよ」
と笑った。
「俺はうまい酒が飲めればいいだけなんだ。どうせなら、君と一緒に乾杯しているほうが、ヤツと杯を交わすより百倍たのしそうだぜ」
「まあ、いいけど、まさかとは思うけど、ずっとついてくるつもり?」
「はっはっはー、そりゃー、まあ、君次第かな。一応これでも口説いているつもりなんだが……。やっぱり、俺のこと振っちゃうわけ?」
「彼氏いるんで」
と言って、ジョフィアの方をちらっとみる。
「まー、そう言わないでさ。と言いたいところだが、それじゃぁ、まあ、おいとまするわ。悪かったな、邪魔して……」
「何しに来たの?」
と真意を尋ねると男は
「面白そうだから来ただけだよ。人生、それが一番大事だ。じゃぁな」
と言って去って行った。
「エルさん、さっきの男からは闇も光も両方強く感じました……。不思議な人でしたね」
とサファリアが言った。
「そうだね……。悪いやつではなかったのかもね……」
「私も、光を完全否定しているわけではないです……」
とサファリア。
「エルは、無邪気だから、知らないのかもしれないけど、光の影にはいくらでも闇はあるものなのよ」
マリーが言うには、邪教と言われつつも、この国で星の神を陰で信仰しているものはそこそこいるらしい。
「わたしは、どっちを信じればいいのかな……」
「エルはたぶん、両方信じれるひとだよ……。そういう人もいるんだよね……」
「マリーが言うなら、そうなんだろうね」
「エルさん、そのぉ、このあと2次会2人でしませんか?」
ジョフィアは2人で飲みたかったらしい。
ま、当たり前か。
「お、来たね、エロガキ」
マリーがからかう。
「そこは……、大人と言ってください!」
「ごめん、ジョフィア……。今度埋め合わせするから」
「わかりました……」
と露骨にがっかりするジョフィア。
酒場からの帰り道は、ジョフィアに申し訳なくて、ずっと、ジョフィアの隣でいろいろフォローした。
けどさ、あの状況から2人で抜け出すのはさすがに恥ずかしかったよ……。ごめんね。
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