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危機

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気がつくと私たちは寝ていた。
目を開けるとそこは牢獄の中。

「王女殿下の誘拐犯が起きたようだな、ランドル様に知らせにいってこい」
「はっ」

ランドル?ランドルがなぜこんな辺境の国境のある街に?

「起きたようだな……」
ランドルは人払いをした。

「エル、君に賢者の石を託したのは大正解だったよ……」
「どういうこと?」

「種明かしをしようか……。賢者の石が闇の賢者サファリアが封印された姿であることを君はもう知っているとおもうが、賢者の石は一度人間に戻さなければ、完全に石の力を復活させることができないのだ……」

「私たちは泳がされていたってことかしら」
「利用させてもらったよ、まず、適当な冒険者を心配しているふりをして、追跡魔法の追跡者の権限を得る。……権限がなければ、居場所がわからないからね。そして、君たちは常に私に場所が筒抜けの状態だ。その上で賢者の石を渡し泳がす。どうなると思う?」

「それが今の結果ということね……。でもなぜ3年もの間恋人ごっこをしたのかしら?」

「ああ、君との秘密の婚約のことか……。ある程度の関係性がないと、賢者の石を渡すのはさすがに不自然だろう。
ここまでやっても不自然なぐらいだ」

たしかになぜそんなに貴重なものを渡したのか疑いを持っていた。

「私の光の束縛の魔力の性で自力では賢者の石を手元で人間に戻すことができなくてね……。安全に手元から遠くの街に運んで貰うひつようがあった。なかなか頼める相手がいなくてね、賢者の石は我が家の秘密の秘宝だからね」

なるほど、私たちはサファリアをもう一度完全な魔力を持つ賢者の石に戻すために利用されたということか。

「きみは用済みだから、王女誘拐の罪で縛り首が妥当だろう……。悔しいか?ここまで真相を話しても、それが漏れる心配はない、君の悔しがるところがみたくてね。我ながら悪趣味だが……」

「なぜ、石から私たちを戻したの?」

「ああ、石のままでも良かったんだがね。あいにく私は光の賢者、闇の賢者の魔法を打ち消したり反射したりしてしまうのだ……。不自由なことだよ」

ランドルは時計をみると。

「悪いが、おしゃべりはここまでだ。君たちは重罪人だから、王都で裁かれるだろう、私は一足さきに王都に帰らせてもらうよ……。君たちが魔力を完全に戻してくれた賢者の石を使ってね。ありがとう。では」


そうして、ランドルは去って行った。

「エル……。くやしいね……」
ジョフィアが言う。

「エルはランドルと付き合っていたんだ……」

「ジョフィア、そのことは忘れて……。でも誓って、今はあなたの恋人だから」

「12才のね!」
とジョフィアは無理に笑った。

「15才ということにしてあげる」

「大人……の付き合いってこと?」

とジョフィアはおずおず言う。

「うん、今日からちゃんとした恋人になろうね」

「ありがとう、エル。でもデートするまえに僕たち縛り首だね……」

「アルジェはいないね。王女さまが私たちの命乞い、してくれるかな……」

「それは難しいだろうな」

とマリーはいつから聞いていたのか、急に割って入った。

「ランドルが縛り首を後押しするだろうから、第一その前提でヤツはすべて悪事を暴露したわけだからな」

「脱獄……できないかな」
と私は言ってみる。

「私の魔法でなんとかできれば良かったのだけど……」

とファーファ

「ありがとう、気持ちだけでも嬉しいよ、アルジェとせめて連絡が取れればな」

「道具屋の道具にはそういうものもあるけど……。当然道具は全部とりあげられているし……」
とジョフィアは言った。

「それならできるよ?」
とファーファ
「わたし、アルジェとずーっとお話したくて、通話魔法の儀式をかけているから念じるだけで、向こうが気づけば、遠距離会話を心のなかでできるもの。王都でも、ずっとずっとそうやって長話してたんだよ」

「ランデルの悪事をまずはアルジェに伝えてくれる?それと証拠集めをお願いして……。裁判ぐらいはするだろうから、うまくいけば無罪を勝ちとれるかも」

「そのぐらいしか希望はないか」
とマリー

「幸いアルジェが捕まってないのだけが心の支えだな」

私たちは国境付近の街から王都に移送されるまでの3ヶ月間、アルジェに事細かに指示をだし、ランドルの悪事の証拠集めを頼んだ。結局のところ、それは無駄に終わったようだった。ランドルは合法的に私たちを嵌めたのだから。

あとは、情状酌量の余地で王女アルジェの嘆願で助けてもらえるか……。

私たちに残された希望はそれだけだった。

王都の牢獄の中で私たちは裁判の日を待つばかりだった。

ただ、私がただ1つ忘れていたことがあった、それは完全復活をしたサファリアがランドルに石に戻される前、その力を使って、私のために「何か」を願ってくれていた可能性。

サファリアはあれほど、私のために役立てないことを悔しがっていたのだから……。









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