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【幕間話】密かに燃える炎

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マリアベル視点です

*****

 自室に戻ったわたしは、そのままベッドへと倒れこんだ。

「マリアベル様、先にお召し替えを……」
「うるさいわ、黙りなさい!」

 小鳥のように耳障りだった侍女も、𠮟りつけると口をつぐんだ。侍女たちは全員息をひそめるようにして部屋を出て行った。

 ああ、静かになった。これでやっと落ち着ける。

「やっぱり皇女なんて嘘っぱちに決まってるわ。あんなチンチクリンが次期皇后だなんてありえない」

 大体政変のときに皇族は全員死んだはずだったのに、二人も生き残りがいた。その時点でおかしいじゃない。

 目の色を変えることは難しいから、フィンリー殿下は多分本物だ。でも、髪は染める方法だってある。

 皇女を名乗っているあの女は隣国の平民だと聞いた。その上、図々しくも貴族の家に寄生していたらしい。とんでもない女だ。

「それにしても、どうしてニセモノの皇女なんて……」

 どうして、と口にはしたものの、その答えはわかりきっている。他の誰も気づいていないようだけれど、わたしの目はごまかせない。

「皇女なんて盾には騙されなくってよ。フィンリー殿下の本命はグレースに違いないわ」

 昔からあの女はずるがしこくて嫌いだった。同じ侯爵令嬢だというのに、ずっとわたしを見下している。家に権力があるから何よ。そんなものわたしが奪ってやる。

 フィンリー殿下の寵愛さえもらえればこっちのものだ。

 男を誘惑するくらい、わたしにとっては難しいことではない。そうするようにお父様にも命じられている。

「まずはあのニセ皇女に近づく……。ニセモノだろうと精々利用させてもらうわよ」

 皇女で、フィンリー殿下の婚約者。それが名ばかりのものであろうとも、傷つければそれなりの問題にはなる。

「運がいいだけのニセモノなんて、わたしは認めない」

 決意を込めたつぶやきは、静かな部屋にはよく響いた。

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