16 / 39
【幕間話】密かに燃える炎
しおりを挟む
マリアベル視点です
*****
自室に戻ったわたしは、そのままベッドへと倒れこんだ。
「マリアベル様、先にお召し替えを……」
「うるさいわ、黙りなさい!」
小鳥のように耳障りだった侍女も、𠮟りつけると口をつぐんだ。侍女たちは全員息をひそめるようにして部屋を出て行った。
ああ、静かになった。これでやっと落ち着ける。
「やっぱり皇女なんて嘘っぱちに決まってるわ。あんなチンチクリンが次期皇后だなんてありえない」
大体政変のときに皇族は全員死んだはずだったのに、二人も生き残りがいた。その時点でおかしいじゃない。
目の色を変えることは難しいから、フィンリー殿下は多分本物だ。でも、髪は染める方法だってある。
皇女を名乗っているあの女は隣国の平民だと聞いた。その上、図々しくも貴族の家に寄生していたらしい。とんでもない女だ。
「それにしても、どうしてニセモノの皇女なんて……」
どうして、と口にはしたものの、その答えはわかりきっている。他の誰も気づいていないようだけれど、わたしの目はごまかせない。
「皇女なんて盾には騙されなくってよ。フィンリー殿下の本命はグレースに違いないわ」
昔からあの女はずるがしこくて嫌いだった。同じ侯爵令嬢だというのに、ずっとわたしを見下している。家に権力があるから何よ。そんなものわたしが奪ってやる。
フィンリー殿下の寵愛さえもらえればこっちのものだ。
男を誘惑するくらい、わたしにとっては難しいことではない。そうするようにお父様にも命じられている。
「まずはあのニセ皇女に近づく……。ニセモノだろうと精々利用させてもらうわよ」
皇女で、フィンリー殿下の婚約者。それが名ばかりのものであろうとも、傷つければそれなりの問題にはなる。
「運がいいだけのニセモノなんて、わたしは認めない」
決意を込めたつぶやきは、静かな部屋にはよく響いた。
*****
自室に戻ったわたしは、そのままベッドへと倒れこんだ。
「マリアベル様、先にお召し替えを……」
「うるさいわ、黙りなさい!」
小鳥のように耳障りだった侍女も、𠮟りつけると口をつぐんだ。侍女たちは全員息をひそめるようにして部屋を出て行った。
ああ、静かになった。これでやっと落ち着ける。
「やっぱり皇女なんて嘘っぱちに決まってるわ。あんなチンチクリンが次期皇后だなんてありえない」
大体政変のときに皇族は全員死んだはずだったのに、二人も生き残りがいた。その時点でおかしいじゃない。
目の色を変えることは難しいから、フィンリー殿下は多分本物だ。でも、髪は染める方法だってある。
皇女を名乗っているあの女は隣国の平民だと聞いた。その上、図々しくも貴族の家に寄生していたらしい。とんでもない女だ。
「それにしても、どうしてニセモノの皇女なんて……」
どうして、と口にはしたものの、その答えはわかりきっている。他の誰も気づいていないようだけれど、わたしの目はごまかせない。
「皇女なんて盾には騙されなくってよ。フィンリー殿下の本命はグレースに違いないわ」
昔からあの女はずるがしこくて嫌いだった。同じ侯爵令嬢だというのに、ずっとわたしを見下している。家に権力があるから何よ。そんなものわたしが奪ってやる。
フィンリー殿下の寵愛さえもらえればこっちのものだ。
男を誘惑するくらい、わたしにとっては難しいことではない。そうするようにお父様にも命じられている。
「まずはあのニセ皇女に近づく……。ニセモノだろうと精々利用させてもらうわよ」
皇女で、フィンリー殿下の婚約者。それが名ばかりのものであろうとも、傷つければそれなりの問題にはなる。
「運がいいだけのニセモノなんて、わたしは認めない」
決意を込めたつぶやきは、静かな部屋にはよく響いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,531
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる