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第五章 深い絆で守られし秘密
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しおりを挟む「まあ……はい。目が赤くギラギラ光っていたし、かなり凶暴になっていたので」
「すっげーな飛華流―。お前、頭良いな」
顔を引きつらせる飛華流に、優は次にこんな質問をする。
「なあ、飛華流……お前、永戸に襲われた事を家族に話しちまったか? ……その、怒らないから正直に教えてくれ」
「いいえ……永戸さんの事は家族に話していません。レッドアイに襲われた所を、優さんに助けられたと説明してあります」
「ふう……それなら良かったぜー。飛華流が優しい奴で、助かったぞ」
安心した様にそう言って、優は言葉を続ける。
「今後も絶対、永戸の事は一切、誰にも言わないでくれ」
真剣な眼差しで顔を覗き込んでくる優に、飛華流は「はい」と弱々しい声で即答した。僕が、家族に永戸に襲われた話をしなかったのは、ただその後の事が面倒だったからだ。
もしも、僕が優だったら、永戸がレッドアイだという事を世間に隠してはおかないだろう。優の心の広さに、飛華流は感心したのだった。
「……飛華流、この前は怖い思いさせちまってマジでごめんな。永戸も、悪気は無かったんだ。なんせ、こいつはその時の暴れてた記憶が全く無いからな」
ずっと、大人しく黙り込んでいた永戸が、優がそう言い終えると口を開く。
「……俺の中には、別の何かが居る」
「何か……ですか?」
「……そいつが、誰でもいいから殺せって、俺に命令するんだ」
飛華流の問いに、永戸はそう答えた。聞けば聞く程、飛華流の中でも疑問は膨らんだ。永戸は二重人格で――レッドアイと呼ばれる姿に変化する時に、別の人格になってしまうという事なのだろうか。
「……まあ、永戸にもどうしようもない事情があるから、俺は永戸を守ってやるんだー」
発言からして、優は今回の件は永戸を許すみたいだ。しかし、沢山の命が犠牲になっているだろうに、彼をこのまま野放しにしても良いのだろうか。
警察に動いてもらえば、無事に解決するんじゃないかな。永戸への対応についての飛華流の考えは、優とかなり異なった。
最近、失踪事件と同じくらい、謎の殺人事件も増えている。それは、レッドアイである永戸の仕業に違いない。
そんな極悪非道な犯罪者を、庇う様な真似はやめるのが最善なはずだ。納得はせずとも、彼らから大まかな話をされ、飛華流は大人しく聞いていた。それからしばらくして、永戸が優に背を向けて歩いていく。
「……もう帰るから」
「あ、そうか……分かった。二人とも、見舞いサンキューッ!」
優は、二人に向かって手をブラブラとさせた。手の骨が折れているのか、動きが不自然で、しっかりと手を振れていない。無理に動かしている様で、それを見ている方が痛くなる。
魔女の屋敷を出るなり、永戸は飛華流をアジトへ誘う。
「……昼飯、うちで食ってけよ」
「……いや、でも、僕は家で……」
「黙って来い」
「ひゃ、ひゃいっ……」
なるべく、飛華流は永戸と関わりたくはなかったが、上手く彼の誘いを断れなかった。永戸のバイクに乗せられ、飛華流はいつもの様にアジトへ向かう。
あっという間に、アジトに到着した。すると、永戸は「スープを持ってくるから、少し待て」と言い、飛華流を置いて小屋を出た。
永戸に連れ去られたとは言え、学校を無断で出ちゃったけど、こんな事して大丈夫かな。ママとパパに怒られるのは、御免なんだけど。
心配事をしていたせいか、飛華流の腹は突然、痛み出してギュルルと悲鳴を上げる。お腹が破れそうだ。トイレに行きたい。
このままだと、漏らしちゃうよ。我慢できなくなった飛華流は、トイレを探しに小屋を後にする。
はしごを下り、木の真下に来ても、それらしき所はどこにも見当たらない。もしかすると、ここにはトイレが無いのかもしれない。
ならば、茂みに隠れてひっそりとするしかない。きっと、イナズマ組の人達もそうしているだろう。ズボンを脱ぎかけた飛華流がったが、その手を止めた。
いや、待てよ。こんなアジトの付近で下痢をしているのを、あの人達に見られたら、完全にアウトだ。
頭を悩ませた結果、イナズマ組のメンバーの誰でもいいので見つけ出し、助けてもらおうと飛華流は考えた。
そうすれば、トイレ代わりになる物でもあれば、そこでしろと教えてくれるはずだろうと。
「あ、あの……すみません。誰か……居ますかー?」
飛華流が声を上げても、誰の返事も聞こえない。どこで、永戸はスープを準備しているのだろうか。人の気配は全く無い。
あの洞窟へ行けば、菊谷に会えるだろう。そうだ。菊谷に聞こう。それしかない。洞窟のある方へ足を進めようとしていた飛華流は、ツリーハウスの下の裏側に、人が入れそうな扉を発見した。
木と同化して見えにくかったので、そのまま気づかずに通り過ぎてしまう所だった。恐らく、永戸はここに居るのでは――そう思い、飛華流はぼろい扉を軽くノックする。
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